第64話 連行
「いやーまさか起きちゃうとはねー参った参った」
衛兵に腕を拘束され、歩かされているエイガの横でそう呑気そうに言っているのは、先ほど帰ってきたアレーシアだった。
「寝たままの方が幸せだったろうに。ごめんねぇ、リアムには特別に私の特訓つけておくから」
謎の謝罪をされたが、エイガの表情は一向に晴れない。
「ほらほら、いつものアホっぽい笑顔はどうした?ヒデキからよく聞いてるけど、全然笑わないじゃーん」
ひらひらと手を振りながらアレーシアがエイガの顔を覗き込む。
ヒデキというのは委員長の本名だ。
エイガはアレーシアの言葉には答えず、できるだけゆっくりと歩こうとする。
しかしそれは衛兵によって阻まれてしまった。
「お前、アレーシア様が聞いているだろう。さっさと答えろ!」
そう言ってゴスっと足を蹴られた。
「いたっ」
「こら、こら。乱暴に扱うんじゃないよ、これじゃ足りないって値切られたらどうするの」
アレーシアがそう言いだすが、何もありがたくない弁護だ。
値切り?足りない?
意味がわからない単語ばかりだ
この人たちは人間を媒介にした儀式でもやるのだろうか。
エイガは自分の身にこれから何が起こるのか想像もできなかった。
「ほら、ここ入って」
そう言われたのは地下に続いている石造りの階段だった。
ヒューッと風の流れる音がして、冷たい風が頬を撫でる。
怖い、ここは入ってはいけない。
エイガの第六感がそう叫んだ。
「ほら早く入れ」
後ろを衛兵に押され、エイガは渋々その階段を踏む。
外はちょうどいい温度だったというのにこの洞窟はまるで山の中みたいに涼しかった。
というか少し肌寒い。
エイガは腕に出てくる鳥肌を感じながら、衛兵とアレーシアに挟まれて歩いていく。
一本道で一人しか通れないような広さの階段だから逃げ場はない。
壁には所々穴が空いており、そこから月光のような青い光が漏れ出していた。
そこからチョロチョロと水が滴っている。
流れ出た水はそのまま階段を伝い、下へと流れていく。
流れ出る水と共にエイガたちが進むと、一際大きい青い光が見えてきた。
その光の前で階段は終わっており、水はその先へ向かって流れていく。
近づくほどシャーッと大量の水が流れている音がした。
階段を降り切ったエイガはその光の前で思わず立ち止まる。
「ほらここ、ここ。ズイズイっと入って」
前にいたアレーシアに光の中へ押し出され、エイガは思わず目を瞑った。




