第63話 叫
「なっ⁉」
リアムが驚いてその場にひっくり返った。
「うっ、なんかすっごい疲労感」
エイガがげっそりとした顔をしているとリアムは信じられないものをみるような目でエイガを見つめた。
「な、なんで僕の魔法が……烏山の言っていたことは本当だったってこと?」
そう言ってリアムはずれたモノクルをかけなおす。
「なんの魔法か知らないけど、僕の魔法をあんな無能のノーマンの入れ知恵で無効化されるなんて……僕君のこと少し嫌いになったよ、エイガ君」
起き上がって、服についた葉を払いながらリアムはエイガを睨む。
「え、理不尽……」
エイガはなぜかこのリアムという男に嫌われたらしい。
――てかこの人もノーマンさんのこと悪く言ってる……。
エイガは最近己の憧れの人が行く先々で悪く言われることに納得がいっていなかった。
――なんでノーマンさんあんなに実力あるのにこんなに言われてるんだ?
エイガは少しショックを受けながら、リアムと一定の間合いを取ろうとした。
しかしリアムはそれを許さない。
リアムはまた杖を構えた。
「どうせ1回きりだろう、次は成功させる」
リアムが魔法を出そうと杖の照準をエイガに合わせ、杖の先が光りだす。
まずい、もう1回あれを食らったらきっと今度は起きられない。
根性を使えるのはきっと1回きりだ。
エイガは咄嗟に、その自分に向けられた杖を掴んだ。
「何を!」
「ノーマンさんは――無能じゃないっす‼」
エイガは昼間のノーマンのようにその杖を押し込み、杖の先をリアムの方へと向けさせた。
「あ、ちょっと!?あ……」
そのまま魔法が発射されてしまったリアムの魔法はリアム自身に当たってしまい、リアムはどさりとその場に倒れ込んだ。
「た、倒せた?」
エイガが目の前で花提灯を出しているリアムを呆然と見ていると、周りから声が聞こえてくる。
「リアム様!」
「おのれ魔法材料のくせに!」
周りから黒いローブを被った衛兵が集まってくる。
――どうしよう逃げ場がない。
目の前のリアムを倒したと言っても四方八方に敵がいるので、逃げたくても逃げられない。
エイガは魔法が使えないのだ。おまけに足が速いわけでもない。
この衛兵たちを相手にできると思うほどエイガは思い上がってはいなかった。
どう見ても詰みである。
――考えろ、考えろ!
エイガは今までノーマンに教えてもらったことを頭の中でなぞっていく。
するとなぜか思い当たったのがあの魔法薬の授業だった。
ノーマンの声が頭の中で再生される。
――いいか、精霊は強い思いに惹かれる。だから強く思えば思うほど精霊も集まる。
そこまで再生してエイガはあることを思いつく。
――もしかしたら。
エイガは天空に首を向けた。
空は快晴、キラキラとした星が瞬きこんな良い日なのに、自分は絶体絶命のピンチ。
エイガはハッと笑った。
――きっと俺じゃこの状況をどうにかすることはきっとできない。
なら――。
今自分にできることを――。
エイガは目いっぱい空気を肺に吸い込み、思いっきり叫んだ。
「ブルムゥ!俺死にそう!ノーマンさん呼んでくれぇ‼」
そう情けなく叫んだが最後、エイガは数人の衛兵によって捕らえられたのだった。




