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第62話 回生

 リアムはエイガが息を吐いた瞬間、一気にリアムがエイガのいる茂みに飛び込んできた。

 エイガが逃げようと体を翻すが、肩を掴まれエイガの頭の上で杖を振った。


「エイガ君みーつけた」

 

「あ……」


 リアムのモノクルがエイガの息を呑む姿をうつした。

 リアムの振った杖からプールのような匂いがして、またエイガの意識が遠くなる。

 なんで。

 音もまともに立ててないのに。

 なんでここが分かって――。


「おやすみ、エイガ君。永遠に」


 穏やかな笑顔のリアムの顔を最後にエイガは目を閉じる。


 俺、このまま死ぬのかな。


 沈みゆく意識の中エイガは、ゆらゆらと海を漂うような感覚を味わいながらそう考えていた。


 意識の中で自分の形が露になった。

 その体でエイガは膝を抱えながら、脳裏で先ほどの委員長との会話のフラッシュバックを眺めている。


「俺、最低だよな。委員長苦しめて、あんなこと言わせるまで追いつめて」


 そうぽつりと意識の中でエイガは呟いた。

 自己嫌悪が胸を這い上がってきて苦しい。

 息が浅くなり、エイガはまた目頭が熱くなってきた。


「俺なんて……出来損ないの俺なんてやっぱり――あれ?」


 また泣き出しそうになったその言葉にエイガはふと既視感を覚えた。

 これ、前にもおんなじこと言った気がする。

 いつだっけ……


 記憶を遡ってみると丁度昨日の夜のことが思い当たった。

 あぁそうだ昨日ノーマンさんと話した時だ。


 ――お前に死んでもいいという奴がいたら、俺はそいつを死ぬより酷い目に合わせてやるよ。俺の弟子に手を出したんだからな


 そう言って笑っていたノーマンの顔がエイガの脳裏に浮かぶ。


「あ、そっか俺……」


 何馬鹿なこと考えてたんだろう。

 昨日治癒師になるために頑張るって決めたのにまた同じこといって逃げようとしてる。

 せっかくあこがれの人が初めて持った夢を応援してくれてるのに。

 委員長にあんなこと言われて自分なんてこんな世界じゃ生きてる価値がないと思った。

 でもそれでも生きたい、図々しく生きていたい。

 まだ自分の価値を見つけられてない、ノーマンさんの期待に一個も応えられてない!

 

 パンとエイガは意識の中の自分の両頬を叩いた。


「俺……俺らしくねぇ!俺馬鹿なのにまた考え込んでた!」


 委員長への贖罪はきっと死ぬ以外でもできる。


 ――生きなきゃ、生きてノーマンさんの元に帰ろう。

 

 そう心でつぶやくエイガの目には確かな決意が宿っていた。

 

「俺はこんなところで死ぬわけには!いかないんだ!」


 そう意識の中でエイガは叫んだ。

 するとパチンとまるでシャボン玉がはじけるような音がして、沈んでいた意識が急上昇してくる。

 

「男は――根性っす!」

 

 そう叫びながら、カッと目を見開くエイガ。

 現実世界の意識を取り戻したエイガは、咄嗟に後ろへ足を踏ん張り、倒れかけていた体をなんとか起こした。

 


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