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第5話 選定式

 コツンという音と共にレッドカーペットの上へ一番最初に降り立ったのはあの栗原だった。顎を引いてまっすぐ玉座を見ながら前に手を組み、姿勢よく歩いていく。

 クラスメイト全員がその行動に目を丸くしながらも、それにつられてぞろぞろとそれについていく。エイガも委員長が歩き出したのを見て歩き出した。


――あぁよかった


そう思ってしまった、委員長を守ると言ったのに情けない。だがそんな気持ちは見ないふりをして歩いていく。ドクン、ドクンと波打っていた心臓は、歩いているうちに通常のテンポを取り戻した。


 全員が女王の前に来ると、脇にいた人々がコソコソと話し始めた。


「どんなギフトを持っているか、非常に楽しみですな」


「えぇ、育てるのが待ち遠しいです」


 そんな言葉が聞こえたものだからエイガは首を傾げる。


――ギフト?ってなんだ?


 そんなことを思っていると台座に座っていた女王が立ち上がった。少し動いただけなのにその威厳がひしひしと伝わってくる。エイガに膝をつくべきなのではないかと迷わせるほどだった。


「召喚者諸君、わらわの名はアナ=リノア=コンスタント。この国の女王じゃ。お主らを歓迎しよう!」


 そう女王が宣言するように両手を高らかに上げれば、会場が拍手に包まれる。その歓迎ムード全開の会場にエイガたちはきょろきょろと辺りを見渡した。この歓迎に喜んでいいのか、だめなのかイマイチわからない。


「お主たちを我が国の秘術で呼び出したのはほかでもないお主たちの力を借りたいのじゃ。この国は今魔王に滅ばされんとされておる。それをお前たちのギフトで薙ぎ払ってほしいのじゃ」


 あまりにも急展開すぎて全員の頭にはてなが湧く。


「説明するより見せたほうが早かろう、これ!あれを前に」


「はい!」


 そう女王が言えば、メイドが元気よく返事をしてガラガラと荷台に乗った大きな水晶を持ってくる。その大きさは大人1人分ほど。その大きさにクラス全員が圧倒されていると、アレーシアが前に出てくる。


「誰か、この水晶に触ってみてくれないかい?あ、そこの君でいいや」


 彼女が指をさしたのは委員長。委員長はまた顔を青くしながらは、はいと震える声で返事をして、恐る恐るその水晶に近づいていく。


「こうやって両手をこの水晶にあてるんだ、簡単だろ?痛くないし、ちゃちゃっと当ててみて」


「こ、こうですか?」


 委員長がそう言って水晶に両手を押し当てると、水晶が光りだし、中に何か模様のようなものが浮かび上がる。その模様が出た瞬間、ドッとその場が騒がしくなった。


「なんと、勇者の紋章だとな!」


「最初から大当たりが来ましたね」


 わけがわからないと委員長が辺りを見渡していると、アレーシアが委員長に肩をくんでくる。


「すごいね君、勇者だって!魔王に対して一番有効なギフトが最初から当たるなんて、私の日ごろの行いがいいからかな?」


 顎に手をあてながらドやりだすアレーシアだったが、パンと乾いた音がその場に響く。女王が手に持っていた扇子を閉じたのだ。先ほどまで騒いでいたどよめきが、波を引くように収まった。


「こういうことじゃ」


 バサリと閉じた扇子をまた口元に広げ、女王はゆったりと椅子に腰かける。


「お主たち召喚者はわらわたちでは手に入れられぬような能力を持ってこの世界に召喚される。その力を使って憎き魔王を打ち倒してほしいというわけじゃ」


 補足するようにアレーシアが女王の言葉に続ける。


「ちなみに勇者は魔族に消えない傷をつくることができるギフトだよ。中々歴史にも例を見ない珍しいギフトなんだ」


「さて、せっかくの勇者じゃ。誰に育てさせようかの」


 すると女王の前に控えていた一人が手をあげた。


「私が育てましょう」


 そう言って名乗りをあげたのは前に立っていた2人のうち、白髭の人物だった。


「お主でもいいが、それでは魔法を教えられんじゃろ。魔法を教えられて実力者となると」


「私ですね、お任せください女王陛下」


 間髪入れずにアレーシアが手をあげた。


「アレーシアか、お主でもいいが――まぁいいか」


 女王はもう一人前に控えている烏面の男に顔を向けていたが、首を振って先ほど手をあげた二人に向き直る。


「勇者のギフトは貴重じゃ、ブリキ、アレーシア。お主たちのすべてを持って育てよ」


「仰せのままに」


「さ、次の者じゃ。お主たちには申し訳ないことをしたと思って居るが、その代わりこの国での生活と名誉を約束しよう。欲しいものがあればなんでも言うといい」


 そうしてクラスメイトは言われるがままにその水晶に触れていった。

 最初こそ、殺されるかもしれないと怯えていた生徒たちだったが、水晶に触れた瞬間に能力が発現して、翼を生やし飛べるようになる者、変身能力を得た者、はたまた動物と話せるなどの能力を開花させ、段々と楽しくなってきている様子がうかがえた。

 紋章の意味がわからない者も混じっていたが、貴重なものであるのは変わりないので問題ないのだとアレーシアが補足する。

 そして能力がわかったあと、誰が育てるか立候補制で決めていく。優秀だったり強力なものは前に控えている者たちが手をあげるようだ。


 エイガは立候補してくる人々をみていてあることに気がついた。

 全員が躍起になって手をあげているのにあの前に控えているノーマンと名乗った人物だけなぜか手をあげないのである。

 先程のアレーシアを掴み上げた覇気はどこへやら、影を薄くしてまるで空気のようだった。

 アレーシア自身が自分で四天王と言っていたことや、女王の前に立っていることから、おそらく同等の地位の持ち主なのだろうが――


――まぁいいか。

エイガが少しわくわくした顔で、順番を待っていると、ふと前でまたどよめきが起こった。誰かの能力が分かるたびにどよめいていたのだが、今回のどよめきはどこか違う。どちらかといえば悲鳴に近いようなどよめきだった。

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