第55話 再会
「お前ら、そろそろ帰るぞ」
ノーマンがそう声をかければ、モイはエイガをポコポコと叩くのをやめてそそくさとノーマンの元へ走っていき、エイガもそれを追いかける。
「お前らなんだか兄弟みたいだな」
そう言われてモイは不服そうに眉をしかめる。
――こいつと兄弟なんて御免です
「ひどぉい。でも俺実は昔からお兄ちゃんになってみたいって思ってはいたんでアリかもっす」
「何言ってるお前はどう見ても弟側だろ」
「えーじゃあいいっす」
エイガがブゥブゥ言ってると、ふと次のガス燈の横に誰かが立っているのが見えた。
エイガたちと同じくらいの背丈で、四角い眼鏡がガス燈を反射してオレンジ色に光っている。
そのシルエットをみた瞬間、エイガがぱぁっと顔を明るくした。
「委員長!」
エイガがそう声をあげれば、その人影はもそりと動いてこちらを向く。
「エイガくん!」
そう言って笑顔で手を振る委員長にエイガは走り寄った。
「どうしたんだよ!こんなところに」
エイガが駆け寄れば、委員長はここに来た頃と変わらぬ笑顔でエイガを出迎えた。
「ちょうどここらへんにお使いを頼まれてね、街の人にこの近くにノーマンさんの家があるって聞いてさ。待ってたんだ」
「へぇ、えこのあとちょっと時間ある?少し話そう!」
「うーん、そうしたいんだけど早く師匠のところに戻らないといけなくてさ」
「師匠?」
エイガは耳慣れない言葉に首を傾げた。
「うん、ブリキさんのこと。今日はお使い頼まれたからここまで来たんだよ」
「へぇ、ブリキさんってどこらへんに住んでるんだ?」
「ここから大体15分くらいだな」
ノーマンが追いついて、後ろからそう補足する。
エイガはノーマンを振り返り、今度はノーマンに駆け寄る。
「それくらいなら、俺送ってくっす。いいっすか?」
「別に構わないが、お前迷子になったりしないよな?」
「もうここらへんは覚えたっす!買い物来てるんで!」
「買い物?」
今度は委員長が首を傾げた。
「ノーマンさんって使用人さんとかいないんですか?」
そう委員長が聞くとノーマンは首を振った。
「俺の家だからな、知らんやつを入れたくない」
「でも四天王なら、お仕事お忙しいですよね?家事とかしてる暇あるんですか?」
「家も掃除できない貴族様と違って、俺は庶民出身なんでな、手慣れたもんだ」
「へぇ、そういうものですか」
一瞬委員長の顔が曇った。
ふと委員長はボソリと誰にも聞こえない声で呟く。
――働いてくれる人がいないだけでは?
「ん?なんか言ったか?委員長」
エイガが振り返りそう聞くと委員長は何事もなかったように笑った。
「うんん、何も?」
「なぁなぁ!早く行こう」
「うん」
そう言って二人はノーマンたちの家とは逆方向に歩いていく。
「じゃあモイ、俺たちは先に家に帰るか」
ノーマンの言葉にモイはこくりと頷いて2人で家に向かう。
ふと生ぬるい風が後ろへと吹き抜けていった。
ハッとしてモイが振り向けば歩いていった2人の背中が遠くに見える。
「どうした?帰るぞ」
ノーマンがそう呼ぶのでモイは少し小走りでノーマン元に戻る。
「お前も仲良かったならついていっていいんだぞ」
するとモイは首を振った。
――いいえ、そんな仲良くないので
「そうか」
ノーマンはまた歩き始める。
その後ろをモイはついていったが、なにかが引っかかった。
――もうここにきて1か月くらいたつのに気づかないなんてことある?
考えすぎか、それとも――
モイは胸に残る小さな違和感に見ないふりをしてそのままノーマンの後ろについていったのだった。




