第52話 退散
「同室のニルにちゃんと患者基礎を聞いとけ。次同じことしたら1日塔の窓から吊り上げるからな」
「あ、悪魔......」
説教に疲弊し、床でぐったりしたまま動かないユリヴァを尻目にノーマンが耳のピアスを押さえて喋りだす。
「オーリア、ニルをこっちによこせ。ユリヴァを迎えにこさせろ」
するとおっとりとしたオーリアの声が聞こえた。
「いやーユリヴァをこっちに来させればいいんじゃないですか?」
「あぁ、そうさせたいが伸びてしまってな」
チラリとユリヴァを見やりながら、ノーマンはそう答えた。
「いや、なにしたんですか」
「いつもの説教だよ、決闘申し込んできたからその分もな」
「いやいやーまたですか?ユリヴァも懲りないですねぇ、了解です。ニルを迎えに行かせます」
「あぁ頼んだぞ」
「いやいや、いいですよー」
ノーマンがピアスから手を放そうとした時、オーリアがあ、と声をあげる。
「リリベルがもういいって言ってるのに泣きながら治療やめないんです。ノーマンさんに命令されたからーって。言うこと聞いてくれないんですけどどうすれば」
「あーそれはさせとけ」
「いや患者さん困ってるんですけどぉ」
オーリアの泣き言が聞こえてくる。
「おそらく治療と称して何か練習してんだろ、放っておけ」
「そんなぁ」
「お前も副隊長だろ、文句があるなら部下ぐらい従わせろ」
「いや手厳しいぃ」
オーリアが情けない声を出してぷつんと通信が切れた。
「それ電話みたいなものなんすか?」
エイガが自分の耳を指さしながらそう聞いた。
「ん?電話ってなんだ」
「え、えっと声が聞こえて、いや違うよな。えーっと」
モイが見かねて黒板に書き込む。
――遠くの人と誰でも話ができる私たちの世界の機械です
「そうそれ、俺が言いたかったやつ」
「うーんそれとは少し違うかもな」
ノーマンは耳のピアスを触る。
大小の円の真ん中に一本の棒が垂れ下がった少し派手でありながらも、服に馴染むデザイン。
ノーマンはその耳につけたピアスをいじりながら、答えた。
「これは魔導石を溶かし込んだ金属でできた魔道具だ」
「魔導石?魔道具?」
「魔法薬と同じように精霊が集まることでできる石のことだ。精霊が多くいる場所でしか取れなくて機能もそれぞれ、それで作った道具を魔道具っていうんだよ」
「へー不思議な石。じゃあそれがあれば誰とでも喋れるんすか?」
エイガが興味津々でノーマンの耳のそれを見つめる。
「違うな、この魔道具は数が限られていて、俺みたいな四天王、一番弟子や情報部しか持つことは許可されていない」
――なんだか四天王の証みたいです
モイも同じくエイガの横に並んでピアスを見ている。
「同じ石から削り出されても共鳴する魔導石を利用して作られているからな、同じ石がなければ量産できん」
「へー」
離れても共鳴する石、なんとも不思議である。
そんなことをエイガが思っていると扉がガチャっと控えめに音を立てて空いた。




