第50話 反逆
「何?」
ノーマンの額にもう一つ青筋が増えるのを見てしまいエイガはヒッと心の中で悲鳴をあげる。
「どうせ何言っても俺の言い分なんて、聞いてくれないっていったんだよ、ノーマンさんは!」
ユリヴァはそう言うなり立ち上がって杖を構えた。
「何のつもりだ」
ノーマンは眉間に皺を寄せながらユリヴァを見据える。
「患者は怒鳴るな?口を挟むな?俺たちは奴隷じゃない、なんで治した患者に文句言われなきゃいけないんだよ!!……です!」
「ユリヴァ、お前――」
「なんで腹立つやつを殴っちゃいけない、なんで正しいことしたほうが怒られる、これじゃ昔と同じだ!――です」
「ですをつければなんでも敬語になると思ってるなら大間違いだぞ」
ユリヴァは杖を握り直し、しっかりとノーマンの方へ向けた。
「ノーマンさんに勝てば俺がこの緑の塔の主になる、だから今ここでノーマンさんに決闘を申し込む!」
ノーマンは額を押さえながら、ユリヴァを細目で見る。
「お前……俺に勝てると思ってることは置いておいて、俺に勝っても四天王にはなれんぞ」
「俺は本気だ、俺が勝った暁にはああいう患者は殴って黙らせる」
「はぁ、お前は本当に――」
ちらりとノーマンがエイガたちを見た気がした。
「まぁいいだろうお前にはきっといい薬だ」
「え、えぇ」
先程乱闘を収めたはずのノーマンも杖を構える。
「こ、これ止めたほうがいいのかな?」
エイガが助けを求めるようにモイを見るが、モイは特に慌てる様子もなくエイガに日本語で描かれた黒板を見せた。
「『ノーマンさんがやっていいならいいんじゃない?』って、このままだと俺たち巻き込まれない?」
モイはぎょっとしてまた何かを黒板に書きつける。
――馬鹿読み上げるな
「えぇ」
――日本語で書いてる時は基本誰かに聞かれたくない時
「あぁ、確かに俺たち以外読めないもんな」
日本語を暗号代わりにするモイに、エイガは舌を巻いていた。
本当に物事の使い方がうまい。
それはそれとしてなんだかスパイみたいでワクワクするなとエイガが考えているうちに、目の前ではユリヴァが魔力が練りはじめる。
「う、うわぁ、ど、どうしよモイ」
モイの後ろに隠れだすエイガをジトッと見ながら一歩横にずれるモイ。
また寄ってこようとするエイガをモイは黒板でガードする。
――ほっとけ
「えぇ……」
エイガはモイとノーマンを交互に見ながら今度はモイの服の裾を掴んだ。
少し苛立ったように服の裾を奪い返して、モイはまた黒板に書きつける。
――子供じゃないんだから、じっとしてろ
「うぅ、モイの人でなし〜怖いんじゃんか」
「俺は、もう奴隷じゃねぇ!」




