第49話 説
「さてお前ら、覚悟はいいんだろうな」
騒動が収まり、グリズ含め粗方患者も治療し終わり、患者たちがオーリアの用意した炊き出しを食べている頃、ノーマンは先ほどの騒動に関与していた二人の治癒師を呼び出していた。
ユリヴァとリリベルだっけ。
さっきグリズを相手にしていた時とは打って変わり、ノーマンの顔は発言を許さない威圧感を放ち、普段の仏頂面に一層皺が増えている。
そしてなぜかその場にモイとエイガも呼び出されている。
床で正座させられる成人男性2人を上から見るというのはどうにも気持ち的に落ち着かなかった。
――俺どちらかと言えば被害者なのに、なんでこんな雰囲気の場所に連れてこられてんだろ。
ちなみにさっきの怪我はノーマンがササッと治してくれた。(治癒師たちから言わせるとどう考えてもささっと治る傷ではないらしい)
「患者に殴りかかろうとするとは、ユリヴァ。お前俺に殺されたいらしいな」
ノーマンがユリヴァと呼ばれた紫髪の男を見下す。
「だってノーマンさん、あいつ――」
「患者に手はあげるなと毎日教えているだろう‼」
耳をつんざくようなノーマンの怒号でユリヴァは黙った。
次にノーマンはリリベルへと視線を移す。
「リリベル、お前もだ。患者に何を言われても怒鳴るなとあれほど言ったのに何だこの結果は」
「だってノーマンさんが悪く言われてて……つい」
「ついじゃない。一級治癒師のお前がそれでは示しがつかん」
「御意……」
「返事が小さい!」
「御意ぃ!」
ノーマンはトントンと自分の頭を指で叩きながら言った。
「頭に血がのぼるその癖をさっさと治せ。お前には反省文100枚を命ずる」
「そんなぁ」
リリベルが情けない声を出すと、ノーマンが般若そっくりの睨みをきかせる。
「返事は?」
「は、はい!かしこまりましたぁ!」
ビシッと敬礼しているが、その体と手は震えている。
まるで生まれたての小鹿のようだ。
「お前はもういい、患者を診てこい」
「は、はい!失礼しましたぁ!」
そう言って風のように部屋を出ていくリリベルをエイガは見送る。
エイガがチラリとモイを見れば、呆れたようにリリベルの背中を見ていた。
情けない男とか思ってるんだろうな。
それにしてもノーマンっていつもこんな感じなのだろうか。
般若の顔に、雷のような怒号。
これならあの治癒師たちがあんなに怯えていたのも頷ける。
「さてユリヴァ、一応言い訳を聞いてやろう。なんで手をあげた」
ユリヴァは黙ったまま、ノーマンを睨んでいる。
「言いたいことがあるなら言ってみろ、それに筋が通っていればお前に今回の責任は問わん」
するとユリヴァはそっぽを向きながらボソリと呟く。
「どうせ何言っても許さないくせに」




