第46話 仲介者
二人が一触即発、今にも乱闘が始まりそうな時だった。
「いやー! だめですよー! 治癒師が乱闘しちゃ!」
あまりにもおっとりとして場違いな、でもどこかで聞いたような口癖と共に女性の声が場に響き渡った。
その瞬間、引っ張られて痛かった髪が急にゆるみ、ほんのりとリンゲの匂いがした。
体の浮遊間があった後、着地したような揺れがくる。
――助かった?
エイガがうっすらと目を開けると、そこには白色のぼんやりとした塊が見える。
その白色が動けば、白から黄色が現れ、カランと涼しげな音が鳴った。
「いや、みんな仲良く。これが鉄則ですよー!」
「オーリアかよ、面倒くせぇ……」
治癒師の発したその名前にエイガはハッと目を開けた。
そこにはあの魔族に襲われた日と同じ格好をしたオーリアがエイガを姫抱きしながら、大男と治癒師の真ん中に立っていた。
「え、あ、オーリアさん?え? えぇ……」
オーリアがどうしてここにいるのかという驚きもままならないまま、姫抱きにされていることを理解するのに数秒かかる。
理解した瞬間エイガは今の状況を喜べばいいのか、恥ずかしがればいいのかわからなかった。
でも鷲づかみから解放されたんだし、喜ぶべきなのか?
ふと遠くの方で同じく魔法薬を配り歩いていたモイがこちらを凝視しているのを見つけてしまった。
……やっぱり恥ずかしいかも。
「いや、エイガ君大丈夫です?」
オーリアが心配するようにエイガの顔を覗き込む。
「た、多分?」
「いや、さすがにあの衝撃を受けて大丈夫ではないと思いますが……私の腕でそのまま治癒魔法は怖いので、一旦置いときますけど大丈夫です?」
「だ、ダイジョブです……」
本当はオーリアの顔が近くて落ち着かないとか、わき腹らへんが尋常じゃないくらい痛いとか色々あるが、絶対に言える状況ではない。
「ユリヴァ! 患者様に手をあげようとするなんて何事ですか! 始末書なんてもんじゃないですよ!」
オーリアは自分の身長よりも1.3倍ほど大きなエイガを抱えたままおっとりとした声でありながらも大男に面していた治癒師をしかりつけた。
しかられた治癒師はチッと舌打ちをしてそっぽを向いてしまう。
「へいへい、すんませんでしたー、馬鹿につける薬は殴るしかないなと思っただけでーす」
「お前、本当に俺を馬鹿にしているのか!」
「あーもうユリヴァ!」
ユリヴァと呼ばれた治癒師は悪態をつきながらそっぽを向き、大男はまた怒鳴り始める。
また場の雰囲気が険悪になり、大男が今度はその治癒師に手をふりかざした時だった。
「おいなんの騒ぎだ」
エイガがその声の聞こえたほうに視線を向けると、頬につけた血を拭いながらノーマンが歩いてきている。
それを見た大男は今度舐めてかかるような嫌な笑みを浮かべた。




