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第44話 魔法薬の作成者

そう治癒師の一人に声をかけられたのでエイガは立ち止まった。

 腕にはノーマンに言われた紋章がついている。

 あぶない、見落とすところだった。

 

 エイガは箱の中から一瓶とりだそうとすると、ふとその瓶に見覚えがあった。


「お、ノーマンさんが作った奴じゃん。ラッキーですよ、あんた」


 そう言って患者の腕の少し大きめの傷にそれを塗っていく治癒師。

 その瓶の横についた傷をエイガは見逃さなかった。


――あれ、多分昨日俺が作りそこねたやつだ。

 

 あのあとおそらくノーマンが作り直したのだろう。

 傷の形が印象的だったからたまたま覚えていたが、こうやって使われるんだ。


「いつか俺も……」


 もらったらラッキーって言われる魔法薬を作れる治癒師に――。


 しかしふとその魔法薬をぬり終えた、治癒師が針を構えだす。

 

 「え」


「なんだよ、もう一本くれんのか?」


 「いや、あの、治癒魔法でくっつけたりしないんすか?」


 思わず言ってしまい、エイガは口を塞いだが言った言葉は帰ってこない。


 「あぁん?」

 

 なんともチンピラのお手本のようなすごみが返ってきてエイガはびくりと肩を揺らす。

 治癒師の人たちは勝手に優しい顔をしたほんわりとした人たちを想像していたが、大体ここにいる人たちは顔も言葉遣いも不良みたいで、すごまれると中々怖い。

 しかしさっきから不思議だったのだ。

 ここにいる治癒師たちで治癒魔法を使っているのはごく一部、それ以外は魔法薬をぬったり、包帯を巻いたりと日本とさほど変わらない治療法をとっている。

 この世界には魔法があるはずなのにどうして使わないんだろうか。


「はぁ?そんなしょっぱなから治癒魔法を使うわけにはいかねぇにきまってんだろ」


 その言葉にエイガの目は点になる。


「え、ダメなんすか?」


 すると治癒師の男は呆れたようにため息をついた。


「見てろ? こうやって縫って、座標を合わせてから、そこを――」


 そう言って治癒師の男は手際よく患者の足を縫っていくと、前オーリアが唱えていた治癒魔法の詠唱をする。


「癒しの女神イランテスよ、この者に祝福を」


 するとさっき縫っていた場所から血が止まり、皮膚がゆっくりとくっついていく。

 とてつもなく集中している。

 目を大きく開いたまま、汗をかいてゆっくりゆっくり皮膚をくっつけていく。

 そうして皮膚がすべてくっつくとその縫っていた糸をそっと抜き取れば安心したように、その治癒師の男は息をついた。


「これでもう一回皮膚の表面だけに治癒魔法をかけて……」


 そう呟きながら、また固唾をのみながら治癒魔法をかけていく。

 すると抜糸した穴がみるみるふさがっていった。


「はぁなんとかつながった。動いてみてくれ、どこも異常がないか」


 患者は治された腕を曲げたり、手を動かして問題がないか確認している。

 

「あ、あぁもう痛くない、ありがとう」


 それを聞くなり緊張の糸が切れたのか、治癒師は安心したようなひと息を吐き出す。

 

「よ、よかったぁ。また失敗したらノーマンさんにどやされる」


「そ、そこまで……」

 

 エイガは大げさな治癒師に苦笑いをし、それは患者さんも同じだったようで困った顔をした患者さんと目が合った。

 これで何年目の治癒師なんだろうか、聞いてみたいが絶対に失礼だ。

 エイガが迷っていると周りにいた治癒師が口をはさんできた。


「お前、召喚者だったよな。ノーマンさんの治癒魔法しか見たことないとかそんな感じか?」


「は、はいっす」


「そりゃ感覚もバグるわな、ちなみにそいつは今年で5年目だ。しかも腕はいい方だぞ。俺たちの中では中堅だよ」


「え」

 

「お前……ノーマンさんの弟子なのになんも知らないのかよ」


 中堅と言われた治癒師は疲れた目をしながらもエイガを恨めしそうに見つめた。

 

「い、いやそもそも魔法がまだ使えなくて……」


するとその場にいた治癒師全員が雷を打たれたように固まってしまった。

 

「……お前よくそれでノーマンさんの元で今日まで生きてきたな」

 

 今度は面々の顔が憐れむような表情に変わった。

 それを周りで聞いていた治癒師たちも同じような顔をエイガに向けている。


「ここまで生きてきて偉いぞ、お前。名前はなんていうんだ」


「え、エイガっす……」


「そうかエイガ、これ終わったら飴でもやるよ。自死だけは選ぶな」


「大丈夫か、寝袋使ってないのあるから貸してやるぞ?」


 周りの治癒師たちが生暖かい目を向けながらエイガにねぎらいの言葉をかけていく。

 治癒師たちにとってそんなにノーマンは恐怖の対象なんだろうか。

 エイガは気にかけられるのがなんだか恥ずかしくなってきてさっさと薬を配ると足早にそこから離れた。

 


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