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第40話 すごい治癒師

ノーマンはフッと笑うと椅子によりかけていた体を起こす。


「お前が出来損ないなのは認めるさ、俺だって自分のことを出来損ないと思っていたがお前以上ではなかった」


エイガは恥ずかしそうにまた俯いた。

――あぁやっぱり俺は……。


「でもな、今までのあのできなさを見ても、泣き言を聞いても、それでも何故かお前は目指せば凄い治癒師になるって思うんだよ。不思議だよな」


ランタンの火を眺めながらぽつりとそう言うノーマンにエイガはそれを聞いて目を見開いた。


「な、なんでっすか」


 ノーマンはぐぅっと伸びをする。


「さぁな、俺にも分からん。ただ俺は昔から直感だけは当たるんだよ、長年大量の治癒師候補を育ててきたのもあるしな」


 意味が分からない。こんな無能のどこに可能性があるというのだろうか。

 いい治癒師になるわけがないのに。

 

「治癒師に一番必要なものは分かるか?」


「え、えっと頭の良さとか?」


「それはあればいいものだ。ヒントは治癒魔法が女神の魔法ってことだな」


「えぇ、魔力量?」


「違う」


 さっぱり答えが分からない。

 エイガが悶々と考える姿にノーマンは笑った。


「わからないのか?魔法薬の時にも教えたぞ」


「……あ!怪我の記憶!」


「そうだ、傷を治したい、辛いっていう気持ちに反応して治癒魔法の精霊たちはやってくる。子供たちが泣いてもあいつらは寄ってくるしな」


「そうなんすか?」


「色々試してみたが、けがをした時の子供に一番寄ってくる。俺たち大人と比べて感情が未発達でむき出しの感情を見せるからなんだろうな」


そう言って一呼吸置くノーマン。


「本来本人たちが治したいと思うことに反応して精霊たちは集まってくると俺は思っている」

 

 そう言ってノーマンは指を鳴らす。するとノーマンの周りに緑色の小さな精霊があつまってきた。


「それを俺たち治癒師が擬似的に行うと出る魔力の違いから桁違いの精霊を集め、魔法薬ができる。治癒魔法でも確かに魔力量やら技術は大事だ。実際俺はそれに全振りしてる例だからな」


 エイガの涙はいつのまにか止まっていた。じっと息を殺しながらノーマンの話に聞き入っている。


「でも、それだけじゃない。治癒魔法の精霊は他の精霊たち同様に感情に反応するんだよ。怒りや憎しみみたいに人を治したい、救いたいという気持ちは倍増しにくい。だからそっちに力を注ぐより理論に注いだ方がわかりやすいし確実だ。だからそうする方法が確立したんだがな」


 ノーマンはエイガの額に指を突き立てた。


「でもお前は泣くほどまで治癒師に憧れたんだ。そこまでの感情、俺たちの中にも持ってるやつは少ない」


ノーマンは腕を戻して頬杖をつきながらエイガを見つめる。


「しかもお前は馬鹿なんだろ?容量が悪くて、人が多くのことを学びえる時間を一つのことを学びえるための時間にしないといけないんだろ?」


「そうっすけど……」

 

「お前はそれでいいんだ。治癒師は馬鹿の一つ覚えで、救いたいと。それだけ考えていればいい。本来治癒師とはそうあるべきだと俺は思っている。」


 そこまで言い終わりノーマンはふぅと軽く息を吐いた。


「――俺はお前にそういう治癒師の可能性を見ているのかもしれないな」


 その言葉にエイガはとくんと心臓がなった。

 ノーマンが自分の治癒師の未来を夢見てくれている。

 あこがれの人が。

 普段の訓練からは想像もつかないその言葉にエイガの胸はどんどん高鳴る。


「俺は……治癒師を目指していいんすか?」


 食い下がるようにエイガはそう言った。


「元々本当にお前が治癒師の見込みがないなら、あの魔族に襲われた時即刻否定している。俺の弟子が治癒師になれないなんてそんなこと言うわけにも、言うつもりもないからな」


 ノーマンはそう言いながら立ち上がって机の上の本を片付けだす。

 

「それに――分かりづらいかもしれんが俺はこれでも嬉しかったんだぞ」


 腕に抱えた大量の本の背表紙を確認して、本棚にいれていきながらノーマンは穏やかに笑った。



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