第39話 出来
「それはノーマンさんが元々優秀だったからじゃないっすか?だってノーマンさんが落ちこぼれた理由ってスタートが遅かったからでしょ?多分ノーマンさんには才能があったんす」
すると今度はノーマンがキョトンとした顔をした。そして次の瞬間、プハッと吹き出して笑った。
「え、なんで笑うんすか?」
「いいや、お前が俺に才能があるって言ったって知ったら俺の同期は笑うと思ってな。断言するが才能じゃない。俺が持ってたのは運だよ」
そう言ってノーマンは手に持ったエンブレムのバッチをまた手で転がす。
「俺はたまたま魔法を学んでいて、たまたま治療魔法を学べる奴がいて、たまたまそれを伸ばさざるを得ない状況にいただけだ」
「伸ばさざるを得ない状況?」
「魔族の侵攻だよ。もう人の回復速度を待っていては死んでしまう状況だったからな」
「そ、そんなに?」
まだ魔族がどれだけの脅威なのか正直よくわからない。
あの引きつった笑顔を見せるのが魔族というそれぐらいしか知識としてわからなかった。
「人間なんて本当は何ができて、何が起こるかが本当にわからない。魔族の侵攻があるまで俺はあのままぼーっと卒業してあのクソみたいな下級貴族から逃げて農家でもやるんだと思っていたんだがな」
「えぇ」
さっきから知らないノーマンばかり出てくる。
「そもそも俺のいない戦場じゃ重負傷者の7割は治療されずに死ぬ、俺に言わせればお前が言う下手な治癒師でもまだ助かる可能性があるなら賭けるがな」
……そんなに助からないんだ。
エイガは日本との医療の差を改めて痛感する。
もちろんエイガは戦争なんて見たこともないし歴史で戦いの名前を覚えるのが地獄だったくらいの記憶しかない。
「なんか、現実味湧かないっす。俺がいた世界は一人一人が医者見てもらえるのが当たり前で、死なないのが当たり前だったっす」
「そうか、いい世界だな」
ふとノーマンが目を細めた。
あまりに切なげに笑うのでエイガはなんだかいたたまれなくなり目を背けてしまった。
「まぁなんだ、勘違いしてはいけないのが俺は別にお前が腕の悪い治癒師になるとは思っていないってことだな」
ノーマンは体の体重を椅子に預けて、上を向きながらそう呟いた。
「……え?」
エイガが驚いたようにノーマンを見ると彼は優しく笑った。




