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第34話 精霊の気まぐれ

しかしエイガが振り返ると鍋の側にいたはずの精霊がどこにもいない。


「あれ、精霊が」


エイガは辺りを見渡すがやはりいない。


「あぁ逃げたんだな」


「逃げる?」


「精霊は魔力を食いに集まってくるんだ。漏れてる魔力がないならここにとどまる必要はない」


「そっかぁ、じゃあまた呼びます!」


エイガはまた祈るように目を閉じると、周りにポツポツと現れ始めるが1、2匹しか現れなかった。

モイは怪訝そうな顔をしながら、エイガに気づかれないようにノーマンに黒板を見せる。


――こういうものなんですか?


 その言葉にノーマンは渋い顔をする。


「あーエイガ、もう少し強く念じることはできるか?」


「は、はい」


 しかしエイガがどれだけ強く祈っても、精霊の数は一向に増えなかった。


「エイガ、もしかしたらお前は俺が思っているよりも魔力が――」


 ノーマンがいい終わる前にエイガはその言葉を手で制した。


「その先はもうなんとなく察したからいいっす」


エイガは目を開けるとはぁとため息をついた。


「また失敗かよぉ、いい加減何か人並みにできてもよくないっすか?」


 エイガは頭をかきながら、いつも失敗するよりも目に見えて落ち込んでいた。


「今度こそなにかできるって思ったのに」

 

 エイガが拗ねたようにぼそりとそう呟くと、ノーマンはポンとエイガの頭に手を乗せた。

 エイガが振り向くとノーマンはまるで子供を慰めるような顔をしていた。


「まだ望みがないわけじゃない。魔法薬っていうのはここに精霊を集めればいいわけだからな。今のところ精霊を呼ぶ手段は祈りしか試してないだろう?」


「祈る以外にも方法があるんすか?」


「あぁもちろん。精霊は魔力に反応するという特性はあるが、それだけじゃない。ひとつひとつ試してみよう。失敗してもまたやればいい、だろ?」


「それは――そうっすよね!落ち込んでても何も始まらないっす」


 エイガの声に少しだけ元気が戻る。


「俺の部下には歌とかそういうもので気分を高めて魔法薬をつくるってやつもいたぞ」


 しかしエイガの反応は微妙だ。


「歌はあんまりっすね。歌いながら何か考えられないんで」


「そうか……」


 ノーマンは次の一手を考えてくれているのか考え込むように顎に手をあてている。

 

「ちなみにこれどうなったら正解なんすか?」


 エイガの言葉にノーマンはあー言いながら少し上を向く。


「明確な数字があるわけではないが大体50羽ぐらい集まれば十分だな」


「あの、もしよかったら見せてくれませんか?」


――なんで?多分落ち込むだけ


 モイがそう聞くとエイガは何かを思い出すように上を向く。


 「前、街で会った人に憧れって大きなげんどうりょく?になるって言われてさ、つまりノーマンさんのを見て使いたいってなったら使えるようになるんじゃないかなって思ってさ」


「オーリアか?」


 ノーマンがそう言えばエイガはコクリと頷く。


 ――オーリア?


 モイが首を傾げる。


「ほら前話しただろ?街の中で会った魔族のこと」


 するとモイは思いだしたのか、小さく頷く。


「やれそうなことは全部やってみたいっす!ノーマンさんお願いします!」


 エイガがノーマンを真っ直ぐ見つめる。

 しばらくエイガがノーマンを見つめていればノーマンは根負けしたのかはぁと眉を下げて息をついた。


「あとからやっぱり見なければよかったとかなしだぞ」


「もちろんっす!」


そう言ってノーマンは少し気の進まそうな顔をしながら目を閉じた。

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