第22話 ちょっとした昼下がり
「いやー本当に助かりましたー。これよかったら食べてください私オーリアっていいます」
一息つくために腰かけた中心街の噴水で彼女はエイガに余った方できれいなりんごもどきを手渡してきた。
「あ、ありがとうございます、俺はエイガっていいます」
どうやって食べればいいのかと悩んでいれば彼女が横でそのままかじりつきだしたのでエイガもそれに倣った。
りんごよりかなり固い。
りんご飴を食べているようだが、オーリアはカリカリとまるでハムスターのようになんなく食べている。
これをあんな簡単に……。
こんなところでこの国の人間との違いを認識してしまった。
マジマジと歯型だけついた手の中のりんごもどきを見つめていると横でクスクス笑う声が聞こえた。
「いや、そういえば最近この街に来られた方ですか?」
彼女がそう聞いてきたのでドキッとする。
「え、なんでですか?」
「いや、これを食べるのに少し戸惑っていらっしゃるようだったので」
オーリアはもう芯だけになったりんごもどきを振りながら、またクスクスと笑った。
「いやーリンゲは普通、上から叩けば簡単に割れるのでそれを食べるんですよ」
そう言ってエイガの食べかけのりんごもどきを受け取ると上からとんと手で軽く叩く。
すると確かに包丁で切ったみたいに綺麗に割れた。
「へぇ、便利な果物」
「いやー四天王様が開発した果物ですから、人に食べやすく作られたんだそうですよ」
「え、これも魔法!?」
「はい、だからわざわざ私みたいに食べる人はほとんどいないんです」
そう言って彼女は懐から杖を取り出すと、詠唱をしながら自分の食べたその芯を風の魔法で空中に浮かべる。
そよそよと彼女の方向へそよ風が吹き出す。
朝にモイが使っていた魔法だ。
ふと彼女が杖をサッとマッチをするみたいに横に振れば
芯はサッと燃えてしまった。
「え、オーリアさん魔法使えたんですね」
「いや使えますよ〜このローブを羽織ってるんですから」
そう言ってクイッと自分が着ている黒いローブを引っ張って見せる。
ノーマンがいつも着ているものより質素で生地も安っぽくはあるが、よく手入れされている。
毛玉とほつれだらけのノーマンのマントと大違いである。
「そのローブって魔法使いの証みたいなもんなんっすか?」
「いや~魔法使い……懐かしい響きですねぇ〜、そうですね魔法使いの証というよりかは身分証のようなものでしょうか?」
「へぇ〜」
エイガはマジマジと改めてローブを見てみる。よく見ると確かに紋章のようなものが透かしで入っている。凄い技術だ。
「困ったらこの人に声をかけてくださいっていうやつです」
「衛兵さんみたいなもんすか?」
「まぁ少し立場は違いますが、それで大丈夫です」
ふと前を2人の衛兵が通り過ぎようとしていたが、オーリアに気がつくとビシッと敬礼した。
「魔術師様!お疲れ様です」
「いやー衛兵さんたちもお疲れ様です〜あ、リンゲ食べます?」
そう言ってオーリアはリンゲを二人に手渡す。
「ありがとうございます!」
「はい、ではお仕事頑張って〜」
そう言って、オーリアはひらひらと手を振りながら二人を見送った。
「魔術師って衛兵よりも立場が上なんっすね」
「上……というよりかは数が少ないですからねぇ、貴重品みたいな扱いになってるだけです」
「魔術師って珍しいんすか?」
「少ないというよりかは素質がある人が少ないと言った状態でしょうか、魔法は使えても魔術を使えるほど魔力がない人はたくさんいますから」
ふとエイガは自分のことを思い出した。
手のひらをグーパーしてふと小さなため息が漏れる。
「いやー、私もしかして失礼なこと言ってしまいましたか?」
エイガがずっと黙っているから不審に思ったらしい。
心配そうにオーリアがその立派なマロ眉を下げる。
「あ、そうじゃなくて」
エイガはリンゲを口に放り込み、ひと咀嚼してから飲み込んだ。ジュワリと濃縮された果汁が乾いた喉を潤していく。
「俺も魔法使ってはいるんですけど苦手で」
苦笑いをしながらエイガは頭をかく。
「いや、あなたも魔法を?野良とは珍しいですね〜」
「珍しい?野良?」
「いやいや、普通魔法使いというのは学園に入ってから学ぶものでして。その学園は全寮制、生徒は外を出歩かないので普段見かけることもないんですよ〜」
「へぇ」
「いやはや、やっぱりどなたかに習っている感じですか?」
「あ、ま、まぁそうっすね……」
ふとエイガの頭には鬼の形相をした今朝のノーマンが頭をよぎる。
ブルリと肩が震えて、エイガは頭を振った。
「いや?どうかされました?」
オーリアが首を傾げる。
「い、いえなんでも」
さすがに教えて貰ってる人が怖くて震えたなんて男としてカッコ悪すぎて言えない。
「いやーそうですかぁ〜ちなみに得意属性はなんですか?」
「あのーじ、実は――」
エイガはここ最近のことを軽く話した。
モイが魔法を使える中で、自分は基礎のきもできていないこと。
ノーマンに毎日怒られていることはさりげなく隠して話したのだった。




