第15話 初めての非日常
突然現れたアレーシアは人の形をした水を体に侍らせ、その水の人形の一人がモイとエイガ、二人とドラゴンの間に割り込んできていた。
「……なんだあれ」
エイガはそう声を絞り出した。
水の人形は水鉄砲をするみたいに手を組むと、その手から弾丸のような水が飛び出す。
ドラゴンは体勢を立て直すためか空へと戻っていった。
「ねぇ魔族のペットさん、私は君が嫌い」
そう杖を逃げてくるドラゴンに向けながら言い放つアレーシアの目は瞳孔が見開かれ、獲物を狩る捕食者の顔だった。
「グガァァァァァ!」
そう雄たけびをあげアレーシアに爪を振り上げるドラゴン。
「遅い遅い!アハハ!」
颯爽と避けていくが、ドラゴンが大きく息を吸い込み首あたりが赤く光り出す。
「あ、あぶない!」
エイガがそう叫べばアレーシアは後ろを振り向き二人に気が付いたようだった。
「おぉ君たち!生きてたんだね!」
「ま、前‼前見てくださいっす!」
「いやー君たちよくノーマンの元で1日生き残って、お姉さんほろりとしちゃう」
エイガの声もむなしく、なぜかこんな状況でのんきに涙を拭うようなしぐさをするアレーシア。相変らず人の話を聞かない人である。
隙ありと言わんばかりにドラゴンがその鋭い歯をたたえた口で炎と共にアレーシアにかみつかんと向かってくる。
「あ!」
アレーシアが後ろを振り向けばもう時はすでに遅し、その強靭な顎はしっかりとアレーシアの体につきささり、その上で口から出てきた炎で燃やされる
モイは思わず目を手で覆った。
あぁ死んだ、誰が見てもそう思えるものだった。
「ぎゃーやられたぁぁぁぁ!」
致命傷のはずなのになんともわざとらしい悲鳴が聞こえてきた。
エイガとモイはきょとんと目を点にする。
炎が避けると、そこには全くの無傷で焦げてもいないアレーシアが噛みつかれたままの姿でいた。
「なーんてね」
ちろりといたずらっ子のように舌を見せて、アレーシアの首がぐるんと人間の可動域を越えて回る。
「ひっ」
モイがまた腰を抜かしたようにそう悲鳴を漏らす。
アレーシアの視界の先にドラゴンが収まった。
その目は楽し気に細められており、エイガは思わず息を呑んだ。
――怖い、あの人。
そう直感的に思った。
「体の中から貫かれるってさ、痛いのかな?こうグサって!」
そうアレーシアが手を大きく広げておどけたように言うとドラゴンが急に唸り始め、口からアレーシアを吐き出す。
アレーシアのその体はまるで水をこぼしたかのようにどろりと形を崩していき、そのまま街へと落下していった。
アレーシアを離したあともドラゴンはもがき苦しみ、そしてピタリとその動きを止める。
羽ばたきも止まったので地面に落下していくが、その体が地面につくことはなかった。
落ちるドラゴンの体の中から大きな氷柱が何本も生えてくる。
その氷柱はどんどん太さを増していき、ついには落ちてきたそのドラゴンの体を支え、まるで元々そういう置物だったかのようなドラゴンの串刺しができあがった。




