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EP2異世界パンイチ強盗事件

★☆  検索ワードは 【野草飯】  ☆★

タイトル忘れてもこれで見つかります!


田村直樹、28歳、サラリーマン

帰宅途中のトンネルから、異世界へと迷い込む。

そこは中世風の街並み。

人々はモンスターから逃れ、

ダンジョン内で暮らしていた。

戸惑う田村は持っていたコンビニ弁当を開く。

興味津々の異世界の子供たちに囲まれる。

異世界での第一歩は、鮭弁。

上げ底の悲しい鮭弁を食い終わる。

その頃には、少年少女たちは興味を失い、

どこかに散っていた。

しかし、一人だけ少年が残っていた。

田村の服をガン見してくる。

この少年、さっき俺に社会的敗北を突きつけた、

あの肩ポン少年だ。

「なんだ、坊主。」

少年は坊主ではない。

むしろ、毛量は豊かだ。

しかし、言いたくなる。

田村直樹(28歳)サラリーマン・・・である。

「この服は・・・おじさん、ちょっと来てくれよ。」

坊主と呼ばれたことを気にかけることがない少年。


・・・人生の二敗目の敗北だ。


特に行き場所のない田村はついていくことにした。

少年は何本かの狭い通りを抜けていく。

・・・今どこだよ、ここ。

・・・てか速いな、おい、坊主。

田村は全力で追いかける。

すでに方向感覚を失っていた。


「肩つかんだ時さぁ、その布いい感じだった。」

少年は言うが、なんだそのいい感じとは?

「だからさ、うちの爺に見せたいんだよ。」

すばしっこく走りながら、少年は話しかけてくる。

日頃の運動不足で田村はそれどころではない。

少年はそんな田村の様子は一切見ない。

どんどんと路地を進んでいく。

田村が運動不足の為、急激に狭まる視野。

その狭い視野に飛び込んでくる風景。

たまに猫耳女や、いわゆる獣人な人々が闊歩する。

・・・あー、やっぱガチ異世界だわ、これ。

異世界ファンタジーを味わいながら、

そろそろ田村が体力の限界を迎えようとしていた。

限界直前、少年は一軒の店に飛び込んでいった。

遅れて店に飛び込んだ田村。

ぜぇーぜぇーと肩で息をする。

店の門前で中腰で立ち止まった。

カウンターの奥に店主らしきじい様がいる。

「ボンズ、今まで何していた!」

いきなり坊主に雷を落とす。

「店の奥の整理がまだだろうが、早くせんか!」

何か言い返そうとするボンズ坊主。

手でじい様がそれを制して、店の奥に行かせた。

・・・名前、ボンズだったのか。

・・・似てるじゃんよ、坊主とボンズ。

じい様がちらりとこちらを見る。

だがその視線を遮るように、立ちはだかる男客。

筋骨隆々、長い髭をたくわえた背の低い男だ。

「これが全財産だ!」

石のカウンターに小袋が一つ、ドン!と置かれる。

「言ってるだろう、この値段じゃ無理じゃ。」

「なぜだ!」

「これだから、ドワーフは頑固すぎていかんのだ!」

店主じい様が声を荒げる。


田村直樹、28歳、サラリーマン。

今、心を奪われています。

・・・ドワーフ。

・・・異世界王道。ガチのドワーフ!

・・・これこそ、マジで中世ファンタジー!


ドワーフは興奮してカウンターをバンバンと叩く。

叩くと、カウンターの小袋が小さく跳ね上がる。

田村はドワーフを観察しつつ、店内も見回した。

革製品ばかりが置かれている。

壁には分厚い革ジャン風の上着がずらりと並ぶ。

どれも重量感と存在感が半端ない。

棚には革の小袋やら小物類が整然と並んでいる。

・・・革細工店か、ここ。

・・・で、なんで俺はここに?

その時、奥からボンズが椅子を持ってきてくれた。

どうやら待ち時間を気にしてくれたらしい。

田村は礼を言って、座る。

さっき走ったので喉がカラカラだ。

コンビニ袋をガサゴソと漁る。

おもむろに缶ビールを取り出す。

・・・そうそうこれ、銀色のヤツ。

プシュッ!

開けたその瞬間。

音と同時に、目が血走ったドワーフが目の前に。

瞬きする間もなく、瞬間移動してきた。

「それは……酒かッ!!?」

迫るドワーフ、固まる田村。

「それを売ってくれ!!なぁ、頼む!酒!酒!」

・・・うわ、マジか。

ドワーフは酒好きとファンタジーのど定番。

だが、ここまでとは。

長髭の裏から、革の小袋を1つ差し出してくる。

「これで頼む!」ドワーフは土下座する勢いだ。

一瞬、田村は躊躇する。

・・・いやいや待て待て、俺のビール。

「だったらこれもだッ!!」

まさかの小袋2つ目が現れた。

「おい貴様ァッ!!」

店主のじい様が怒鳴る。

「 これが全財産って言ってただろうがァッ!!」

じい様がカウンターに置かれた小袋を指さす。

「これは別腹じゃい!!」

怒鳴り返すドワーフ。

ドワーフはカウンターに置いた小袋も奪い取る。

そのまま、田村に突き出した。

「これが本当の全財産だッ!!」

嘘をついていたとは思えない、堂々たる宣言。

「なあ、だから頼む!酒を譲ってくれ!!」

三つの小袋が、乱暴に田村の前へ積まれる。

その迫力に負けた。

買った350mlの銀色のビールはドワーフの手に。

ゴキュ、ゴキュと、ビールを飲み干すドワーフ。

CMに使えそうなくらい旨そうに飲み干した。

「ぶふぁー。旨い!!」

ご機嫌で帰ろうとするドワーフ。

怒り心頭の店主のじい様。

「もう、二度と来るな!!」

自分の履いていた靴を投げつけるのであった。


そこで、奥から坊主ではないボンズが出てくる。

店主に「じい!服!」そう言って田村を指さす。

怒り心頭なじい様は田村の服に初めて気づいた。

「なんて上等な布だ!!」

すでに目が服にくぎ付けだ。

漫画なら$マークが目に張り付いているだろう。

・・・なに~!次は服かよ!ボンズてめぇ!!

逃げようとする田村。

店内を追いかける店主。

ちゃっかりアシストする男児ボンズ。

ボンズが出した足に引っかかり、派手に転んだ。

店主は田村をあっという間に身ぐるみはがした。


パンイチだ。

異世界で、俺はパンイチだ。

ちっくしょぉぉぉ!

異世界に、人としての尊厳はないのか!


「ボンズ、店内の商品と交換しとけ。」

店主は、剝ぎ取った田村の服を持ち店奥に消えた。

ボンズが田村に、「どれがいい?」と急かしだす。

強制追剥ぎにあった田村は一番高い服をねだった。

店で一番高価な、世紀末な雰囲気な革装備を着た。

異世界世紀末風田村が爆誕した。

明らかに、似合わない。

その証拠に、ボンズは田村を見て爆笑している。

・・・人を指さして笑うんじゃない、ボンズよ。

・・・その指へし折るぞ。


スマホでも見やすいように、

2025年5/8に直しました。

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