EP18異世界と御利益と
★☆ 検索ワードは 【野草飯】 ☆★
タイトル忘れてもこれで見つかります!
肉餅を楽しんだ後、田村はヨモギ茶を準備する。
だが女性たちに次々と囲まれる。
女冒険者や若い娘たち、年配婦人まで参戦。
カップを投げ合い、小石も飛び交い、混乱が続く中、
田村は静かに片付けて現場を離れる。
結局、ティータイムは諦め、平和に帰路につく。
給料日まで・・・あと1日。
財布の中身は・・・あと7円。
長くつらかった、1日1食生活。
明日までの辛抱だ。
今日は会社帰りに神社へ寄った。
困った時の神頼み。
なけなしの5円玉をお賽銭箱に入れて、残り2円。
明日まで無事でありますようにと、手を合わせる。
2円で乗り切れますようにと、礼をした。
今日は神社脇の草むらで野草摘みをする事にした。
夜闇の作業で、悪戦苦闘しながら野草を探す。
そんな中、神様が授けてくれた野草たち。
本日の野草ラインナップ。
ノビル・・・
ネギやニンニクの仲間の野草。
以前にも摘んだことがある。
フキ・・・
独特の香りがある野草。
山菜としても人気が高い。
ドクダミ・・・
ドクダミ科ドクダミ属の多年草。
ララの姉御へのお土産。
松の葉・・・
マツ科の常緑樹。
古くから薬草や香りづけに使用されている。
あまり種類がない、
夜の暗闇で見つけられなかったのが残念である。
早速、自宅に帰ると、異世界への準備。
いつもの革装備、リュック、護身用ナイフ。
手には摘みたての野草入りビニール袋。
そそくさとトンネルから異世界に入る。
ここ最近で見慣れた市場への入り口付近へ出た。
・・・何か、やけに市場に人が多いな。
いつにもまして冒険者の数が多い。
それに加えて、街娘、上等な服を着た商人風の男、
はては浮浪者、衛兵の姿まである。
・・・どうなっているんだ。
田村が市場に入ると、どよめきがおきる。
「おい、あいつじゃないないか?」
「本当にそうか、そうなのか?」
誰かが田村を見ながら言った。
辺りの視線が一斉に集まり、空気が一変する。
異様な雰囲気にのまれて田村は後ずさった。
そこへ、一人の女性がこちらに駆けてくる。
ララの姉御だ。
「田村、逃げて!」
そう叫ぶと、一斉に
「なに、あいつが田村だと!?」
「はやく、早く捕まえろ!」
市場にいた人たちがみな、
田村めがけて、走り出す。
「おい!・・・なんだよこれ!」
慌てて逃げだす田村。
・・・なんで、追ってくるの。なんなの異世界!
通りを抜けて、裏路地に入る。
しかし、リュックの中身が重すぎて、走りづらい。
やばい!追いつかれる!
・・・おいおいおい、無理無理無理ぃ~。
路地を右に左に入りながら、
追手を交わしていたが袋小路に入ってしまった。
まずい!
すると、横の壁にある扉がガチャッと開き、
強引に田村を中へ引きずり込む。
「うわ!」体勢が崩れて、
ドアの内側で尻餅をつく田村。
引きずり込んだのは・・・ララの姉御だった。
姉御は口元に指1本あて、
「静かに」とのジェスチャーをする。
声を押し殺す二人。
扉の外から、怒声が響いた。
「おい、どこに行った!」
「このあたりにいるぞ!探せ!」
そこに遠くから聞こえる声がこだまする。
「おーい、いたぞ!こっちだ!」
「捕まえろ!」
扉の外にいた連中がそれを聞くと、
皆がそちらへ駆けて行った。
「あいつら、うまくやってくれてるね。」
ララの姉御がそう言って、田村に説明を始めた。
始まりは昨日、田村が姿を消したあとだった。
市場では、田村のお茶を賭けて女達が
醜い争いを繰り広げていた。
娯楽に飢えた人々が、
女たちの争いを見ようと人だかりができる。
「あたしの茶よ!」叫ぶと同時に、
気合いの投球・・・ハズレ。
「嘘つけ、先に並んでたのは私だ!」
小石とはいえ剛速球・・・命中。
女冒険者の兜に小石が当たり、
カーンという音とともに歓声もあがる。
その後も女達の小石投げ合戦が繰り広げられ、
女の怒声と見物人の歓声が交錯する。
だが、それがいけなかった。
奪い合いをするほどのお茶の噂が、
瞬く間に見物人から街中に拡散されてしまった。
人から人へ、次第に噂に尾ひれがつきだす。
「あのお茶は、秘宝の霊薬が溶け込んでいて・・・。」
「その茶を飲めば、どんな傷もたちまち治り・・・。」
「おい、例の茶、どうやら王侯貴族が
探し求めてるらしくて・・・。」
朝の市場に、お茶を目当てに徘徊する人が現れる、
時とともに膨れ上がる人の数。
それを見たララの姉御は田村を捜しにかかる。
仲間とともに四方八方を捜したが、
手がかりすら掴めなかった。
仕方なく、田村を市場で待つことに決める。
ララの姉御は待つ間に、
屋台の店主達と田村をどう逃がすか相談していた。
先ほどの「おーい、いたぞ!こっちだ!」の声は、
屋台のおやじたちの声。
今頃、街中に散らばったおやじ達が、
こっちだ!あっちだ!と騒ぎ立ててるはずだ。
ララの姉御がいなかったら、
もう田村はどこかで捕まっていただろう。
昨日の田村が淹れた、たった五杯のヨモギ茶から、
一晩でそんな事態になるなんて・・・。
・・・おいおい、嘘だろ。異世界怖し。
田村は絶句した。
「しばらく、どこかで身を隠す事は出来るかい。」
ララの姉御が聞いてくる。
「・・・逃げ切れれば、多分。」
どうにか現代に帰れれば、追って来れないだろう。
「できれば街を離れな。
あんたを追っている連中があきらめるまで。」
助かった、明日は給料日。
もう1日1食生活とはおさらばできる。
田村は思わず口元を緩め、
ほっとしたように深くうなずいた。
「三日もすれば、こんな噂話、吹き飛んじまうさ。」
「わかった。」
姉御との、水と引き換えに庇護を得る水の契約は、
あと四日間。
三日間は、
少なくともこの危険な異世界に関わらずに済む。
そう思うと安堵した。
ララの姉御に今日分の水のペットボトルと、
手土産のドクダミ葉入りの袋を手渡す。
「ありがとよ。」
受け取りながら、姉御は3日分の食料だと、
モンスター肉の干し肉の束をくれた。
リュックの中に束を詰め込み、
あたりを見渡す二人。
ララの姉御は内周の方へ、
田村は逆の外周の方へと走り出す。
しばらくすると、ララの大声がこだましてくる。
「見つけた!見つけたよ!こっちだよ!」
・・・ララの姉御、ありがとう。
・・・神社の神様、ありがとう。
あの時、
残り7円のうち5円を使っておいてよかった~。
わずか5円のご利益の享受に感謝しながら、
現代に帰宅するのだった。
スマホでも見やすいように、
2025年5/13に直しました。




