EP10異世界と屋台と
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タイトル忘れてもこれで見つかります!
田村は異世界の冒険者ギルドに立ち寄る。
だが、雰囲気は建売住宅レベルの残念感。
受付中年事務おじさんに替を頼む。
ドワーフ金貨は珍しく、周囲ざわつく珍しさ。
そこに現れたのは、前に揉めた大剣男。
名前はチャッピー。
チャッピーが田村を探していると知り、焦る。
ギルドを即離脱し、市場の人混みに紛れた。
市場に逃げ込んだ田村はしばらく身をひそめていた。
幸い、追っ手は来なかった。
セーフ!
どうやら、大丈夫らしい。
さっきの屋台へ向かう。
空腹には勝てなかった。
「おやじ、串を3本。」
「お、あんたかい。お金はくずせたかい?」
まだ焼きたての肉串。
「ほらよ、3本。銅貨9枚だ。」
・・・意外に高かった。
屋台の脇に腰をおろし、串をまじまじと見つめる。
謎肉串。
その肉から漂う、おいしそうな匂いじゃ・・・ない。
表現するならエンジンオイルや、ガソリンのような。
ツンと鼻をつく油臭さ。
・・・あ~、ダメなやつだ、これ。
匂いから期待値ゼロの謎肉串をほうばる。
血生臭さと獣の臭みと油臭が口の中で三重奏。
・・・あ~。そうとうダメな奴だ。これ。
噛んでも噛んでも噛み切れない。
顎がつかれた。
しかも塩気が一切ない。
おかげでダイレクトで血の味がひろがる。
肉を一口かじる。
口の中が血生臭さで満たされていく。
・・・あ~。・・・あ~。(泣く)
もはや言葉が出なかった。
体が本能的に身震いし、拒否反応をしだす。
串焼きを買う客をみた。
その場で無心で食べている。
この味に耐える修行中なのだろう。無心だ。
食べる人すべて、修行僧に見えてきた。
田村も修行する、・・・あと2本も。
・・・無心だ、無心を保て。
・・・修行、そうこれは修行なのだ。
一本食べては「腹のため」
二本食べては「金のため」
3本目を食べきった頃にはすでに悟りを開いていた。
自分が高僧になった気分だ。
・・・腹は満たされた。
・・・一週間後。
・・・給料日。
・・・それまでの我慢だ.
・・・この苦行を耐え切るのだ。
南無。
その日は市場でナイフを1本買った。
護身用ナイフを腰にぶら下げて、帰ることにする。
外周部では用心に用心を重ね歩く。
無事出口をみつけ帰ることに成功した。
翌日。
朝から何も食べていない。
水道水で空腹をしのぐ。
所持金、残り150円。
給料日まで・・・あと6日間。
夜。
革装備に着替えてトンネルへ。
異世界へ、再出勤である。
無事に市場へ直行。
屋台を探し、市場の隅に行く。
今日は謎肉串ではなく、キノコに挑戦する。
昨日は控えたが、さすがにキノコの方がマシだろう。
血生臭さもなさそうだし、直焼きだし。
金網の上で直焼きのキノコ。
だが、近づくにつれて立ち込める、異臭。
・・・腐臭。
日本のクサヤのような強烈な匂い。
それがあたりに立ち込める。
・・・あ~。・・・あ~。お前もか。涙、涙。
買うのがためらわれるキノコ。
しかし、腹は減る。
「おっちゃん、1個」
石の平皿に転がる腐臭キノコ。
静かに手を合わせる。
南無三。
田村の修行2日目開始。
味はほんのり旨さを感じる。
だが、腐臭がまさる。
うぇ!
思わず、えずく。
しかし、これも修行!
キノコは吐き出さなかった。
口の奥に広がる異臭。
鼻を突き抜ける腐臭。
すこし、うまみを感じる救いはあるも、腐臭!
塩気はゼロ。
ここの住民は塩を知らないのだろうか?
ごくりと飲み込む。
胃から、胃から立ち上る強烈な腐臭!
息が!息が臭いぞ!
自分でもわかる。
すごい臭さだ!
公害だ。
公害レベルだ。
逮捕だ、屋台のおっちゃんを逮捕しろ。
公害をまき散らした罪で日本なら逮捕されるぞ。
どちらだ、今日はどちらで腹を満たせばいい?
謎肉VSキノコ
血生臭さVS腐臭
2択。
そして、田村は選ぶ。
えぃ!・・・どちらもだ!
今、目の前の石の皿に、謎肉串1本・キノコ1個。
両雄並び立つ!
・・・修行。
それは苦しいもの。
キノコをほおばり、肉をくらう。
無心。
そして、昇華。
心が洗われた。
田村は手を合わせる。
ごちそうさまでした。
まさかの修行2日目。
外周部では用心に用心を重ね、帰途に。
・・・あれ、誰も近寄ってこねぇや。
通行人も、酔っ払いも、物乞いすらも。
田村を避けて通る。
・・・臭い。
修行の成果が表れていた。
その夜、田村は静かに眠りにつく。
部屋には腐臭が充満していた。
迎えた3日目。
もう慣れたものだ。
いざ異世界へ、そして、市場へ。
今日はスープ。
俺の食欲はスープを欲している。
キノコの直焼きが嫌い・・・いやいや。
謎肉串が食いたくない・・・いやいや。
修業はどうした・・・いやいや、三日目はちょっと。
今日の俺はスープな舌になっているだけだ。
まるで自然な流れでスープの屋台を訪れる。
この市場でスープが飲める屋台は、たったひとつ。
屋台の看板には、でかでか「熱汁」と書かれていた。
「おっちゃん、熱汁一杯。」
出てきたのは、黒い濁ったスープ。
中身は謎肉の内臓のぶつ切り、モツみたいな肉。
そして、薄くスライスされ、色が赤いキノコ。
表面に肉の油がほんのり浮いている。
香りをかぐ。
・・・ほんのり腐臭と油臭。
修業?
口をつけてすする。
・・・今日も修行!
修業3日目突入。
口の中で二つの味が融合する。
謎肉内臓の血生臭さとキノコの腐臭。
そして、塩気がない、ただのお湯。
出汁はどうした?
うまみはないのか?
何ともいえない雑味が広がる。
謎肉は噛めば噛むほど血の味わいが広がる。
キノコは噛めば噛むほど腐臭汁がでる。
なんでこの2つはこんなに相性が悪い。
スープの中でバチバチに喧嘩してる。
両雄並び立たず!
一口、また一口。
すする。
無心にすする。
誰もがそうしている。
周りは静かだ。
修業とはこういうもの。
すする音だけが静かに響き渡る。
田村はそっと手を合わせた。
ごちそうさまでした。
・・・修業3日目終了。
今日も異世界の異臭をまとい、外周部へ。
誰も・・・近寄ってこない。
修業の成果がまた発揮されていた。
スマホでも見やすいように、
2025年5/10に直しました。




