表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/106

74.怪物

「回避する方法は?」

「知らぬ」


そう即答した風の精霊に、シンは苛立ちを覚えていた。


「そう怒るな。知らぬものは知らんのじゃ。しかし、龍神ならば、何か知っておるかもしれぬぞ」


風の精霊が、両掌を大きな龍神に向けると、その体を撫でるように暖かな風がすり抜けた。大きな龍神は目を開けると、シン達を見た。後ろで、バタバタッと音がしたと思ったら、アンナとルビー、そしてリアムまでも床に倒れていた。


シンが、


「何をした?」


と風の精霊に尋ねると、


「案ずるな。気を失っただけじゃ。龍神が、そなた達と話す気になったようじゃ」


シンもエステルも、三人のことを気にかけながらも、龍神の方に向き直った。龍神が、二人を真っ直ぐに捉えた。瞳がカッと開き、金色に発色したと思ったら、二人の頭の中に声が響いてきた。



-------

白と黒が入れ替わる時、黒となる者を滅せよ。さすれば、白となる者は最大の力を得、未来の鏡に映る世界も変わろう。

-------



そう言うと、大きな龍神は再び目を閉じた。



「白と黒が入れ替わる?」


シンが自問するように呟くと、風の精霊が、


「始まりの令嬢は、この意味を分かっていよう?」


とエステルの方を見た。エステルは、やはり黙ったまま何も答えない。


(エステルは何か知ってるのか? しかし、ここで答えないということは、少なくとも俺に知られたくないか、もしくは、まだ言うべき時でないと思っているのか……)


シンは開きかけた口を閉じた。




「さて、龍神からのお声も賜った。本題に入ろうではないか。そなた達がここへ来た目的は、石であろう?」


風の精霊が、話を切り出した。ようやくエステルが、


「えぇ」


と答えた。風の精霊は、


「ふふ。そなたは声も美しいのう。わらわは美しいものが好きじゃ。勇者も、これまでやって来た者の中で、一番美しい顔立ちをしておる。よき組み合わせじゃ」


と満足そうな笑みを湛えた。



「もう一度、鏡を覗くがよい。そなた達が石を持つに相応しい者であるか、試されるだろう」


風の精霊が言い終わった瞬間、ふっと、全ての灯りが消え、辺りは暗闇に包まれた。



「エステル、いるか?」

「えぇ、ここに」


シンは声を頼りにエステルの元に移動し、エステルを背にして立つと、辺りの様子を窺った。左腕を、エステルを庇うように後ろに回し、右手で剣を抜いた。


「いいと言うまで、俺から離れるなよ」


エステルは、返事をする代わりに、シンの左腕に掴まった。エステルが不安そうにしているのが伝わってきた。いつも平静を装い、表情にも態度にも、不安などおくびにも出さないエステルだが、この時ばかりは、アンのこと、未来を映す鏡のこと、これから起こる未知のことなど、不安が重なったのだろう。視界が完全に遮られた暗闇の中で、どうしようもない不安や恐怖が生じたとしてもおかしくはない。シンは、初めてエステルに頼られた感じがして、気が引き締まる思いだった。



 目が少し慣れてきた時、先ほど皆を不安に貶めた鏡が見えてきた。シンとエステルは、顔を見合わせると、同時に鏡の方へと足を向けた。シンが後ろを振り返ると、ルビーとアンナとリアムが、今も気を失ったまま倒れていた。


(これから、何が出てくるか分からないからな。しばらく、このまま寝かせておいた方がいいだろう)


シンは再び鏡の方に向き直り、鏡の前に来ると止まった。シンはエステルに目を合わせて尋ねた。


「準備はいいか?」

「えぇ」


エステルも腹を括ったようだった。二人は息を合わせたように、同時に鏡を見た。すると、鏡の中で黒煙が渦巻き始めた。ゴーゴーと鏡の奥で風が嘶く音が聞こえてくる。二人が目を離せないでいると、鏡の中で二つの目がギラリと光った。その目が、徐々にこちらに近づいて来るのが分かると、シンはエステルを抱え、ルビー達が倒れているところまで、一気に飛び下がった。皆を庇うように前に立ちはだかると、鏡の中から怪物が頭を出した。が、頭は一つではなかった。一つ、また一つと鏡から出てきて、全部で八つの頭が長い首を従えていた。いや、その怪物が全貌を表した時、尾も八つあることが分かった。


「まさか……ヤマタノオロチか?」


十六の瞳が、シンを見下ろしている。


(でかい……)


先ほどの大きな龍神をも悠に凌ぐ大きさだ。ヤマタノオロチが少し動くだけで、その風圧にバランスを崩しそうになる。シンは、エステルにできるだけ下がって身を伏せるように言うと、自分はヤマタノオロチに正対した。


が、シンは、この圧倒的な力の差を前に、生まれて初めて怖さを感じていた。

お読みくださり、ありがとうございます!


次回、シンはこの怪物を倒すことができるのか?


毎日一話投稿していこうと思っています。

ご感想、ブックマーク、評価、大変励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ