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71.洞穴

カチャリと鍵が開いた音がした。


「開いたみたい」


と言い、エステルがそのまま岩戸を開けようとすると、中から、


ゴーッ


という音がし始めた。しかも、徐々に大きくなってきている。アンは、


「あんまり良い予感しないな」


と言うと、シンが、


「同感だ」


と返事した直後、ルビーが、


「これ……風だ! 皆んな伏せて!」


と叫んだ。シンはエステルを、リアムはアンナを咄嗟に抱えて、少しでも風除けになりそうな木の裏側に回って伏せ、アンはルビーの元に行こうとしたところをじいに捕まり、木の裏に避難させられた。アンは、じいの力の強さに驚くと同時に、ルビーが心配でじいに物申そうとしたが、その前にじいが、


「あの子は、風の精霊じゃろう? 心配はいらん」


と微笑んだ。


(このじいさん、どこまで知ってるんだ?)


と一瞬戸惑ったが、じいのその落ち着きぶりを見て、アンもそこでルビーを見守ることにした。



 風の音が地鳴りのような音を立て、岩戸がゴトゴトゴトッと動き出し始めた。ルビーが立ったまま両腕を前に出して構えた瞬間、岩戸が、


ガゴッ!


と大きな音ともに外れ、ルビーに向かって真っ直ぐ、もの凄い勢いで飛んできた。ルビーは、咄嗟に身をかがめ、周りに受け流せる場所がないと見るや、風の流れを上に向けた。岩戸はルビーの頭上をかすめ、エステル達が伏せている木々の手前でカーブを描くように上へと浮かび上がると、その後、弧を描いて彼らの後方で、


ドッスーンッ!


とけたたましい音を立てて落下した。かなりの衝撃があったが、それよりも、皆、ルビーの頭上へと流れ、形作っている風に見入っていた。

 その風は、龍の姿をしていた。



一同は圧倒され、しばらく黙って見上げていたが、



「龍神様か……まさか、この目でお目にかかれる日が来るとは……」


じいが呟いた。龍神は、半透明、いや、ほとんど透明だが、陰影でそこにいることが分かるのと、青く光る綺麗な瞳が存在を表していた。龍神は、全てを見透かすような瞳で全員を見渡すと、アンのところで目を止めた。アンは、自分が見られていることに気づいたと同時に、体を動かせなくなった。


(な! どういうことだ?)


シンがアンの異変に気づき、


「アンドリュー? どうした?」


と聞いたが、アンは龍神を見据えたまま、黙っている。いや、実際には、何も発することが出来ずにいた。隣にいたじいもアンの様子がおかしいことに気づいた。



龍神は、ルビーの周りをぐるりと一周すると、岩戸がなくなって現れた洞穴の中へと入って行った。


「ついて来いって言ってる……」


ルビーがシンに伝えると、じいが、


「行って来なされ。アンドリュー殿は、私にお任せください」


シンは、もう一度アンを見た。アンは、視線だけシンの方を見たが、首を縦に振ることも横に振ることもできないようだった。シンは、


「アンドリュー、後で落ち合おう。じい、アンドリューを頼む」


と言うと、


「え? アンドリュー?」


とルビーも事態に気がつ木、心配そうにアンを見た。シンが、


「ルビー、アンドリューなら大丈夫だ。俺たちと一緒に行ってくれるか?」


と頼むと、ルビーは少し考えたが、龍神の姿が洞穴の奥へと進んで行ってしまうのが見え、


「アンドリュー、絶対後で会おうね。約束よ!」


とウィンクし、先頭に立って洞穴に入って行った。シンがエステルを連れてそれに続き、最後にアンナがアンに、


「先に行っております!」


と声をかけ、リアムと共に洞穴の中へと姿を消した。その瞬間、またも突風が、今度は先ほどと逆向きに吹き、後方に落ちた岩戸が、


ゴトゴトッ


と音を立てたと思ったら、


ゴロゴロゴロゴロッ!


と洞穴め掛けて転がってきた。じいはアンを抱えて、バッと飛び退いた。岩戸が、


ゴッ!


と最後に大きな音を立てて洞穴の入口を塞ぐようにぶつかると、辺りは静まり返った。岩戸が閉まったのと同時に、アンは、再び動けるようになり、仰向けに倒れ込むと、


プハーッ!


と息を吹き返したように、肩でゼエゼエと呼吸をした。


「はぁ、はぁっ……なんだよこれ? どうなってんだ?」


アンが呟くと、


「龍神の仕業でしょうな」


とじいが答えた。


「龍神の? でも何で俺だけ? 日頃の行い?」


と冗談めかしてアンが言った。


「さぁ……それは分かりません。ただ、ちょうど、北斗殿と話がしたいという人がここに訪ねてくることになっておる。あ……ちょうど来たようじゃ」


アンにも覚えのある気配だった。



「北斗。久しぶりだな」


と、アンに声をかけながら木の影から現れたのは、アンの父、龍司だった。

お読みくださり、ありがとうございます!


次回、龍司が現れた理由とは?


毎日一話投稿していこうと思っています。

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