59.休日
「アンナ」
と呼ばれ、ハッと我に帰ると、エステルとシンがすぐ近くまで歩いて来ていた。
「お嬢様……」
アンナが取り繕うように笑顔で答えると、ジュリアはその後ろで心配そうな顔をしてアンナを見ていた。エステルは、
「皆んな疲れているでしょうから、今日はゆっくり過ごすことにしましょう。アンナ、あなたも今日は帰って休みなさい」
と命じた。いつもなら、
「休みなんていりません! 私はお嬢様と一緒にいることが何より楽しいんですから!」
と言って居座るアンナだが、今日は珍しく、
「……そうですね。そう致します」
と力なげに言うと、一礼してその場を去った。ジュリアは、アンナの返答に驚きながらお辞儀をすると、アンナの後を追った。
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(お休み、もらっちゃった……)
エステルは、皆に平等に休みは与えているが、家族がいないアンナにとっては、城で過ごしている方が寂しくないし、何よりエステルの側で働けることに生きがいを感じていたため、家は着替えとお風呂と寝る為のもので、それ以上でもそれ以下でもなかった。とはいえ、この家自体もエステルが用意してくれたものだ。王宮同様、ピッカピカに磨き、大事に使っている。
アンナは家に着くと、いつものように、ぱぱっと片付けをした。一通り掃除を終えると手持ち無沙汰になり、
「……買い物でも行こうかしら」
と呟くと、町着に着替え、外に出た。食事はいつも城でとっているので、買い物といっても石鹸やら、古くなったリネン類、掃除道具等を時々買い替えるぐらいのものなので、今、行かなくてはならない訳ではなかった。
が、じっとしていると、リアムと彼女のことを思い出してしまい、気分が沈んでくるので、とにかくブラブラと歩いてみた。前に、アンに紹介した美容院の前まで来た。
(そういえば、もう随分来てなかったかも……)
アンナは、伸ばしっぱなしになっている自分の髪に触れ、美容院の中へと入っていった。
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美容師から、
「はい、できましたよ」
と言われ、ぼーっとしていたことに気づいたアンナは、鏡を見て驚いた。いつものお団子ヘアではなく、髪を下ろし、毛先をゆるりと巻いてある。これだけでも、気分を上向きにするのに十分だったが、
「もしよかったら、少しメイクもしてみませんか?」
「あ……じゃぁ、お願いします」
美容師はにっこりと笑うと、メイク道具を取り出し、すすっとメイクをしていった。人にメイクをすることはあっても、人にメイクをしてもらう体験は初めてだった。
(してもらうのって、なんかちょっと恥ずかしいものね……)
と思いながらも、自分とは違うメイクの仕方に見入っていた。
(あぁ、これ、今度お嬢様にして差し上げよ。これ絶対似合うわ! お嬢様ならもう少し色味がハッキリしてるものでも……)
とすっかり仕事にモードになっていたとき、
「こんな感じでいかがですか?」
と声をかけられ、改めて自分の顔を見てみた。
(え? これ……私?)
アンナは目を丸くして、顔を右に向けたり、左に向けたりしながら鏡で確認すると、気持ちが徐々に高揚してくるのを感じた。
*******
午後になって訓練場が空くと、エステルはリアムとシンに付き合ってもらい、火の玉の扱いを練習した。リアムが、火の玉を作ってはエステルに向かって投げ、エステルはそれを打ち返す、または消滅させる、を繰り返していた時、
(何か違和感が……)
どこかぎこちない気がしたシンが、
「エステル……もしかして……手と足、同じ方を出してるか?」
「え?」
エステルは、自分で再演してみて、
「そうね」
と答えた。エステルは、足先まで隠れる長さのドレスを着ているので、足捌きをどうしているの分からなかったのだが、これで違和感の正体が明らかになった。シンは、
「……なるほど」
と少し間を置いた後、
「それもいいが、右手で投げ返すときは、左足を前に、左手のときは、右足を前に……こうすると、力をより出しやすいかもしれない」
と言いながら見本を見せた。エステルは、すぐに真似をすると、火の玉の動きが明らかに勢いを増し、またコントロールが格段に良くなった。
(勘が良さそうだな)
シンが感心していると、エステルも感覚を掴めたことが嬉しかったようだ。その後、リアムが、
「お嬢様、すみません。そろそろ失礼させて頂きたいのですが……」
と切り出すまで、夢中になって練習していた。
「そうだったわね。リアム、ありがとう」
リアムは、お辞儀をするとその場を去った。エステルは、リアムが行った後も、動きをチェックしながら、体に覚え込ませようと何度も繰り返していた。
(アンナに火の玉をぶつけたこと、ずっと気にしてたんだな……)
シンは、その日は、エステルの気が済むまで、練習に付き合った。
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次回、今度こそ四つ目の石の在処が分かる??
毎日一話投稿していこうと思っています。
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