表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/106

58.惹き合う石

「何? 笑っちゃうような人なの?」


とアンに言われ、アンナはハッとした。


(やだ。私ったら、思い出し笑いしてたの、顔に出ちゃってたんだわ。そういえば、皆からリアムの彼女は誰か聞かれてたんだった)



アンナは慌てて、


「ううん。綺麗な子よ。でも、私も知らない子……」


と口にした途端、胃がきゅうっと締め付けられていく感じがした。



******



エステルとシンは、王宮の礼拝堂にいた。エステルは、いつものように引き出しから王冠を取り出し、石を窪みにあてはめてみようとしたが、今回得た石は二つある。一つずつあててみても、二つを一緒に嵌めてみようとしても、どれも合わなかった。


 二つのアーモンド型のピンクの石の一つを、シンがエステルの手からつまみとると、自分の目の高さまで上げ、石をいろんな角度にして観察した。シンが、石をある角度にした時、ステンドグラスを通して入って来ていた日差しに反射した。


「綺麗だな」


シンは、少し位置をずらすと、光の色が変わるのが面白く、向きや位置を変えて楽しんでいると、エステルもそれを真似て、もう一つの石を親指と人差し指でつまみ、視線よりも高い位置まで持ち上げると、光の反射を楽しんだ。



 シンは、様々な色がキラキラと反射する中を、エステルがクルクルと向きを変えてはしゃいでいる(ように見える)様子にいつの間にか見入っていた。


 エステルが、シンがぼーっと立っていることに気づき、石をヒラヒラっと振り、


(どうしたの?)


とでも言っているように頭を少し傾けた。その仕草を見たシンは、顔にボワッと一気に血が上ったのが自分でも分かった。


エステルの表情が徐々に豊かになってきているのか、エステルの微妙な表情の変化を自分が捉えられるようになったせいなのか、


(この間から、エステルが可愛く見えるのは気のせいか?)



 シンが気持ちを落ち着かせようとエステルから視線を外し、ステンドグラスの方を向いた時、ピンクのステンドグラスから自分が持っている石へと光が伸び、さらにそれがエステルの持っている石へと続いていることに気づいた。


「エステル!」


エステルも気づいたようで、シンを見てコクリと頷いた。二人は、その光が王冠に向かって真っ直ぐ伸びるように石の位置を動かしてみた。その光が直線になった瞬間、二つの石は光の糸に通したかのように互いに真っ直ぐ引き合い、中央で一つに合わさると、綺麗なハートの形になった。その瞬間、光の糸が切れたように石が落下しそうになったところをシンが素早くキャッチした。


「おっと……」


シンが石を掴んだ手を広げると、ピンクの光と甘い匂いがほわっと広がった。エステルが、


「いい匂い」


と言って、シンの手のひらに鼻を近づけてきた。シンは、


(なんか、いろいろ試されてる気分だな……)


と思うと、手がじわっと汗ばんできそうになったため、慌ててその石をエステルに手渡した。


「それ、もう一回王冠にはめてみないか」


エステルは、シンが珍しく落ち着かない様子でいるのが少し気になったが、受け取った石を黙って王冠の窪みと合わせていった。



 左から二番目の窪みに縦にして入れてみるとカチッと音がして嵌った。すると、先ほどと同じように、王冠がピンクにパァッと光り、甘い匂いがふわっと二人の間に広がった。


その時、二人はそれぞれ、何か遠い記憶が頭をよぎった感じがし、目を合わせた。


「今、何か……見えたような……」

「私も。昔見た景色だったような気が……」


エステルはそこまで言うと、ハッとした顔をした。


「前に風の精霊を訪ねた時の記憶だわ」

「前って……」

「前世なのか、それよりもっと前なのか、いつかは分からないけど……あれは、どこだったのかしら……」

「どんな景色だ?」

「どこかの森のようなんだけど、他に手がかりになるようなものは見えなかった……」

「そうか……俺が見たのは、川だと思うんだが、どこかで見たことがあるような気がするんだよな」

「森と川……」


エステルが考え込んでいると、シンが確認してきた。


「四度目の災害は、嵐だったよな。そして、言い伝えによれば……」

「石は小川のほとりに……」


エステルは、そこまで答えた後、


「森の中を流れる小さな川?」


とシンに投げかけた。


「かもしれないな」



*******



「そろそろお昼の準備しなくちゃね」


アンナの声かけに、ジュリアが、


「わ! ほんとだ。もうこんな時間! 今日の洗濯は、皆さんの衣装が灰だらけだったから、結構汚れ落とすの苦労しましたよ〜。一体、どうしたらこんなに灰だらけになるんですか?」


とジュリアが笑いながら答えた。ジュリアは大の洗濯好きで、落ちなさそうな汚れを見ると俄然やる気が出るらしく、今日はいつも以上にテキパキと仕事をこなしていた。ジュリアが、最後の洗濯物を竿に干していた時、


「あら? あの子、新しく入った子かしら。初めて見るけど……」


と言うので、アンナも、


「どこ?」


とジュリアの指差す方を見た。訓練場の方から歩いてくるその女の子を見て、アンナはドキッとしたが、平静を装って答えた。


「あぁ……あれは、リアムの彼女よ」

「え? リアムに彼女?」


ジュリアも、アンやルビーと同じく目を丸くして驚いている。


(噂をすればって言うけど……今日も彼女、ここに来てたのね。しかも訓練場の方から来たってことは、リアムと会って……)


「アンナ? どうかした?」


ジュリアは、女の子を見つめたまま動かなくなったアンナに呼びかけた。アンナの視線の先には、リアムの石とペアになっているもう一つの石を首からぶら下げ、嬉しそうに歩いてくるリアムの彼女の姿があった。

お読みくださり、ありがとうございます!


次回、四つ目の石の在処が分かる??


毎日一話投稿していこうと思っています。

ご感想、ブックマーク、評価、大変励みになります!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ