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57.リアムの彼女

ポンペイ遺跡から戻って来たときには、既に夜中になっていたため、シンとエステルは、翌日の朝食後に二人で王宮の礼拝堂に向かった。前回も二人で行ったので、もうその理由を問うてくる者もいなかった。



 二人が行った後、朝からリアムが昨日精霊から受け取っていた石をネックレスにして首に付けていることが気になっていたルビーは、食事後にウサギから人間に戻ると、


「それって昨日の?」


と、猫から人間に戻ったリアムに声をかけた。


「ん? あぁ」


と、リアムは嬉しそうにほほ笑み、そのネックレスを手にして改めて石を眺めると、訓練場へと向かって行った。リアムは、特に命を受けていないときは、午前中は騎士達の訓練を任されている。



「リアムでもあんな風に笑うんだな」


とアンが素直に驚いていると、アンナがさらっと言った。


「そうね、めずらしいわね。彼女といる時くらいしか、あんな顔見せないもの」

「え! リアムに彼女?!」


ルビーとアンが揃って大きな声を出した。二人とも、目をまん丸くしてアンナを見ている。



「ふふ。二人、同じ顔してるわよ!」


と笑った後、アンナは、


「時々見かけるわよ、楽しそうにしているリアムと彼女。見たことない?」

「見たことない……」


ルビーもアンもしら~っと目を細めた。


「あいつに彼女なんていたの?」

「えぇっ!誰?誰?」


と二人が驚きを隠さず話し始めた横で、アンナは思い出していた。



-------



いつものように洗濯物を干していた時だった。後ろの方から、


「よぉ!」


とリアムの声がしたので、てっきり自分に話しかけられたものと思い、振り返りながら返事をしようとしたが、リアムはアンナとは別の方向を見ていた。これまでに見たことがないほど優しい目で見つめるその先には、さらりとしたグレーのロングヘアに濃いグレーの瞳、少し気の強そうなキリっとした顔立ちの美しい女性がいた。


(城内では見かけない服装……

女性というよりは女の子かな? どう見ても私より年下よね。それにしても綺麗な子……)



 アンナがいることに気づいていないのか、その女の子はリアムの名前を呼びながら駆け寄って来ると、そのままリアムに抱きついた。


(え?)


アンナは驚きのあまり目を見開いたまま、その光景を見ていた。



「久しぶり! 会いたかったぁ~!」

「あぁ、俺もだ」

「今回、私すっごく頑張ったんだから!」

「そうみたいだな」

「あれ? 知ってるの?」

「そりゃぁ、お前のことなら何でも知ってるさ」

「なぁんだ。せっかく自慢しようと思ってきたのに、つまんないの。ね! じゃぁ、ご褒美に何かご馳走してよ!」

「ふぅ……しょうがないなぁ。何食いたいんだ?」

「ん~、お店行って考える! 今日は何時に仕事終わるの?」

「あぁ……お嬢様に早く上がらせてもらえるか聞いてくるよ」

「やった! じゃぁ、分かったらメル送って。いつものお店ね!」

「あぁ。分かった」



 メルとは、精霊が連絡に使う手段の一つで、物にメッセージを込めて相手に飛ばすことができ、受け取るべき相手がその物を受け取ると手紙に姿を変えるというものだ。仮に意図しない相手がそれを受け取ってしまっても、それは手紙になることはないため、精霊を従えている貴族は、確実に相手に届けたいときに用いたりする。


しかし精霊は、このメルは誰にでも送るわけではない。仕えている主人の命で送るほかは、精霊が認めた相手、多くは、身内やごく親しい友人、それから恋人に送るときに使う。



 後ろを振り返りながら満面の笑みで手をふる女の子の姿が見えなくなるまで優しい瞳で見送っていたリアム。


(あの子には、そんな顔もするのね……)


アンナは胸がギュッと締め付けられる思いだった。目をそらすこともできず、最後までその様子を見ていたアンナは、リアムがようやく向きを変えてこちらに向かって来ようとしていることに気づき、慌てて洗濯物のシワをパンパンと伸ばし、忙しそうに振舞った。



「よぉ」


さっき彼女に声をかけたのと同じように話しかけてきたことが、何だか癪に障ったアンナは、


「何?」


とリアムの方も見ずに、ぶっきらぼうに答えた。リアムは、


「ん? 何かあったのか?」

「……別に」

「……そうか」


いつもと違うアンナの様子が気になりながらも、リアムはその場を後にした。アンナは、リアムの足音が離れていくのを聞きながら、


(いつものお店って言ってたから、そこにはもう何度も彼女と一緒に出掛けてるってことよね。あのリアムがメルを女の子に飛ばすなんて……それにあの子、リアムに抱きついてた……)


と、悶々と考えながら洗濯物を抱きしめたまま突っ立っていると、


「どうしたの?」


と、口の端にクリームをつけたルビーがキッチンの窓から顔を出した。また試食でもしていたのだろう。元気で何でも美味しそうに食べるルビーは、すっかりシェフに気に入られ、新作ができると必ず呼ばれて試食させてもらっている。



「リアムに何か言われたの?」

「え?」

「今、リアムいたでしょ?」

「あぁ……いたっていうか、通っていっただけよ」

「そうなの? あいつ、アンナ見ると必ず声かけてくのに、めずらしいね」

「そ、そう? すれ違えば誰にだって声かけるでしょ?」

「そんなことないよぉ! 私と会ったときなんて、絶対こっち見たはずなのに、こ~んな顔して無言で過ぎ去って行くんだから! ほんっと感じ悪いったら!」


とルビーがリアムのツーンとした顔真似をしながら話すのを見て、アンナは思わず噴き出した。

お読みくださり、ありがとうございます!


次回、礼拝堂で何かが起こる?


毎日一話投稿していこうと思っています。

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どうぞよろしくお願いします!

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