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51.新たな啓示

 シンは、食事のあと部屋へ戻ると、すぐに風呂に入り、


「先寝るわ」


と言って、ベッドに入った。アンは、食事の時から一言も話さないシンを、


(エステルと何かあったのか?)


と心配しながらも、


「あぁ」


とだけ答え、そっとしておくことにした。シンは布団の中で、さっき見たことを思い出していた。



-------


「な……!」


これまで、王宮の者がアンを見たときの反応に違和感を持っていたが、その理由が分かった。


「こんなことが……」


シンは自分でも、過去にこれほどまで動揺したことがあっただろうかと思うほど、驚きを隠せないでいた。エステルから、


「このことは、アンとルビーには、まだ黙っておいてほしいの」


と言われ、何とか、


「二人に言わない訳は?」


と聞いたが、


「まだ分からないことがあるの」


(不用意に言う訳にはいかない……か。何か重大なことに絡んでる可能性があるんだろうな。国を揺るがすような……)


 

訳が分かったとしても、それは良いニュースではないだろうと、シンの直感が言っていた。


-------



 アンとは誕生日も同じで、子どもの頃から、まるで双子のようにずっと一緒に過ごしてきた。学生時代も仕事をするようになった今でも、誰よりも長く時間を共にしているのは、やはりアンだった。互いのことは知り尽くしている、いや、知り尽くしているつもりだった。なのに今、初めて知るアンの、いや、アン自身も知らないことを目の当たりにし、シンは打ちひしがれていた。シンはなすすべなく、ただ様子を見ることしかできない自分に、苛立ちともどかしさを感じるばかりだった。


「くそっ!」


シンは布団の中で、声を押し殺しながら叫んだ。



*******



翌朝、アンナが鼻歌を歌いながら洗濯物を洗っていると、後ろからリアムがやって来た。


「楽しそうだな」

「まぁねぇ♪ だって、昨日のあんなの見ちゃったらさぁ……興奮冷めやらぬってやつ?」

「あぁ、生壁をドンってするやつか?」

「生壁を……ドン? あぁ、違う違う、壁ドンをこの目で見ちゃったってこと」

「壁ドン?」

「やだ、知らないの?」

「……知らない」

「こうすんのよ!」


と言うと、アンがいきなり立ち上がり、自分が座っていた椅子を踏み台にした。と思ったら、いきなり壁にもたれて話していたリアムに覆いかぶさるように倒れ込んできて、右手をリアムの左肩の上にドンと当てた。もう少しで互いの鼻が触れ合う、というところで、アンナが言った。


「ちょっとドキドキしない?」

「……。そ、そりゃ、そんな顔が目の前にあったら、誰でも心臓がバクバクするだろうよ」

「ちょっとぉ! 人の顔を化け物みたいに言わないでくれる?」


アンはケラケラと笑って再び踏み台に座り直し、洗濯に戻った。


「私もいつか壁ドンを〜♪」


と自作の歌を歌いながら洗濯しているアンナの後ろ姿に、リアムは呆気に取られながらも、


(敵わないな……)


と顔を赤くしながら笑みを浮かべた。



*******



 朝食のときにエステルから、神殿で啓示を受けたという話があった。今回の内容はこうだ。



『怒りに満ちし炎の玉よ、打てば離れ、受ければ寄るらむ。別れしものよ、逢ひて一つとなるものぞ』



「炎……噴火か?」

「災害が起きた順番だね」


シンとエステルの会話にアンが割り込んできた。この間から明らかに距離を置いているシンに対してとっている態度だということはシンも分かっていた。シン自身、アンと再び普通に話すきっかけを失い、どうしようかと思っていたところだった。


(やっぱりアンは、こういうところが上手いな)


と、有り難くアンの誘いに乗っからせてもらうことにし、シンは微かに笑みを浮かべながら答えた。


「そうだな」


シンがいつもと同じ調子で返してきたことに、アンは内心ホッとしていた。シンが、


「言い伝えでは……」


と聞くと、エステルが、


「暖炉の灰の中よ」


と答えた。


「火山灰に埋もれた神殿……」


と言って、シンはアンを見た。アンもシンを見ていた。二人は目を合わせ、


「ハハ!」


と笑うと、同時に叫んだ。


「ポンペイだ!」

「ポンペイ?」


ルビーが聞くと、アンが、


「イタリアだ。一緒に行ったろ?」


とウィンクした。ルビーは、


「あ!」


と声を上げ、、シンを振り返った。シンがにっと笑っていた。



 ポンペイは、服部一族に依頼された任務を遂行するために、三人が一緒に行った初めての場所だ。

そして、ルビーが迷子になった場所でもある。



 三人の脇でエステルが、


「ポンペイ、確かにあそこなら……」


そこまで言ったところでアンナが、


「イタリア行き、申請しておきます」


と言った。エステルはアンナの顔を見ると、アンナは、


「失礼します」


と早速王宮に向かった。エステルの言葉に、シンが続けた。


「あそこにはアポロ神殿があるわね」

「あぁ、アポロ……太陽神だな」



 皆んなの後ろにいたリアムの瞳が一瞬カッと見開くと、リアムは挑むような顔をした。

お読みくださり、ありがとうございます!


次回、イタリアへ行きますよ〜


毎日一話投稿していこうと思っています。

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