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46.山羊座

 奥へ行くほどに暗さが増し、シンの作る明かりだけではおぼつかなくなってくると、エステルも明かりを灯した。


洞窟だと思って進んでいたのは、どうやら神殿の廊下のようだった。よく見ると、その壁は、地上で見た壁と同じく、煉瓦を積み重ねて作られており、直線ではなく、なだらかなカーブだったり、ぐるりと回るようなカーブになっていたりと、不規則な構造となっていた。


「これ、方向感覚おかしくなるね」


地下神殿全体に聖霊魔法がかかっており、多機能型メガネが役に立たないことが分かったアンが、メガネを腰ベルトにしまいながら言った。


「ほんと。目が回りそう」


ルビーが少しふらつきながらそう言うと、アンが、


「大丈夫か……」


と手を貸そうとした寸前に、アンナが、


「大丈夫?」


と手を差し伸べた。王女付き侍女長たる者、常に周囲の人たちに気を配り、できることがあれば即行動に移す。アンナが皆から高い評価をえている理由の一つは、この行動の速さにある。リアムが後ろで、ククッと笑ったのが聞こえた。アンは罰が悪くなり、壁をペチペチと叩きながら歩いた。何度か目にアンが壁を叩い時、遠くの方から、


ゴーッ!


と地鳴りのような音が聞こえてきた。その音がだんだんと近づいてくると、


「あ、もしかして俺、なんかスイッチ押しちゃったかな?」

「そうみたいだな」

「でもって、これって、よくあるあれかな?」


とアンが確認してきた。シンは、


「それだろうな……」


と答えるとすぐ、


「皆んな柱の隙間に避けろ!」


と叫んだ。シンはエステルを、アンはルビーを、リアムがアンナを抱えて柱と柱の間のわずかな隙間にそれぞれ飛び退くと、廊下の幅ギリギリの直径と思われる大きな岩が、加速をつけて、


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!


と、前方から転がり落ちてきた。鼻先を擦りそうなほど近くを岩が通り過ぎるとき、アンナが、


ヒーッ!


と叫んだ。ルビーは緊張から、耳のように二つに縛っている髪をユラユラさせ、なんとかやり過ごそうとしいてる。エステルは……こんな時でも全く動じる様子はない。岩が通り過ぎると、最初にアンが廊下に飛び出た。


「たまに戻ってくるパターンもあるからね〜」


と様子を見ていると、本当に、


ゴーッ!


と言う音が再び、先ほどとは反対の方向から聞こえてきた。アンは、


「おっと!」


と言いながら、再びルビーの隣に戻った。ルビーは、


「アンがそんなこと言うから、本当に来ちゃったじゃない!」


と涙目で叫んだ。アンは、


「悪かった」


と言いながらルビーの肩を抱くと、


「大丈夫だ。俺がついてるから」


と、ぐっと引き寄せ、耳元で言った。ルビーは、アンのがっしりとした力強い腕を背中に感じ、心臓をバクバクさせながら、


(さ、最近のアン、距離近い感じがするんだけどぉ! これって、少しは期待しちゃってもいいのかな? なんか、最近ずっとぎこちないし、このままじゃ嫌だし! 今なら、なんか勢いで気持ち伝えられそうな気がする!)


と意を決して、


「あ……あのね! 私、アンのこと……」


と言い始めたとき、



ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!



ちょうど二人の前を岩が通過し、ルビーの最後の言葉を掻き消した。アンに、


「ん? なんか言ったか?」


と聞かれたルビーは、


(もー! もう一回言う勇気なんてないよぉ!)


「別に!」


と逆ギレしてしまった。二人の間に気まずい空気が流れていた時、三度、


ゴーッ!


という音が聞こえてきた。



「おいおい、これ何往復するんだ?」


アンが呟くと、隣の柱の向こう側に避けたシンから、


「次に岩が通過したら、廊下の反対側に一箇所だけある窪みが見えるか? あそこに移動するぞ!」


と指示が飛んできた。アンが、


「あぁ、あれね。オッケー」


と返事をすると、シン達のさらに向こう側の柱の間にいるアンナから、


「見えました! 分かりました!」


と、さっきまで、ヒーヒー言っていたとは思えないほど、威勢の良い声が返ってきた。

 アンナは、体験したことのない事態に出会すと、一旦は驚いたり怯んだりもするが、その後の切り替えが早いことは、ここまで見てきて分かったことだった。



ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!


皆の前を岩が通り過ぎた瞬間、


「今だ!」


と言うシンの声と共に、シンがエステルを抱えて飛び出した。それに続くようにアンとルビー、リアムとアンナも反対側の窪みに移った。


 その窪みもやはり、皆が一列に横並びしなければ、岩が戻ってきた時には当たってしまうだろうというほど狭かった。シンが、わざわざこちら側に移った理由を話しだした。


「この廊下は緩やかなカーブになっていて、向こう側は岩が通過する度に、少しずつ削られていってた。あのままあそこにいたら、次に岩が通過する頃には鼻がもげてたかもしれない」


そう言い終わったところに、


ゴロゴロゴロゴロゴロゴロッ!


と岩がまた戻って来た。岩が行った後、皆が向こう側を見た。さっきまで自分達を守ってくれていた柱が削られていた。アンが、


「鼻だけじゃ済まなかったかも」


と言ったとき、アンナは顔面蒼白となった。シンは、アンナの気を紛らせるためにも、素早く話題を変えた。



「皆んな、上を見てくれ」


皆んなが言われた通りに見上げてみると、そこは他の壁と違って、煉瓦の積み方が凸凹としており、その影が、あるものを描き出していた。アンが素直に感心しながら言った。


「勇者様、さすが……よくこんなの見つけたね……」

「ここの壁だけ、影の入り方が不自然だったからな」


そう言いながら、シンももう一度上を見た。


 下半身は山羊で上半身は人間という牧羊神パーンが、立体的に浮かび上がっているように見えた。

お読みくださり、ありがとうございます!


次回、今度こそ土の聖霊登場?!


毎日一話投稿していこうと思っています。

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