III.自分で貰った能力なのに、何も分からない能力だった
俺はイリを連れて森の中を彷徨っている。
「腹減ってない? 喉乾いたりしてないよね? さっき川の水飲んだけど汲むの忘れたから取りに戻ってもいい? そんな事よりもうすぐ日が暮れそうだけど暗くなっても叫ばないでね? 間違えて殺しちゃうかもしれないし? 俺こう見えても結構ビビりな性格してるんだよ? 本当だよ? 昔、ドア開けたときに隠れたた親に『ワ!!!!』って言われて圧し掛かって泣きながらニ〇ラしたからね?」
「えっと、何から答えればいいですか? まず、暗い所は大丈夫ですよ」
イリは困惑したような表情をしている。普通に質問に答えてくれたらいいんだけど。もしかして俺の質問が難しかったのか? そんなにたくさん質問してないよ。
「あとは、川に戻りたいんですか? 戻れるんですか? 自分が来た道もわかっていなかったようですが?」
「あー、無理だね。イリは川の場所知らない? 水がないと死んじゃうじゃん。いや、俺が死にたくないって言ったところで死ななくなるわけじゃないんだけどね? てか、俺自分の鑑定してないじゃん。そもそも出来るかどうか知らないけど。てか、鑑定で本当にあってるのかな? わかんないけどそんな感じのやつ!」
俺は最後の一言は妙に力を入れて言った。よく分からないけど変に力を入れないと発動できないと思ったのだ。
玆先逢兎 人間 魔法使い
称号:
スキル:思考現実化 解剖S 解析 鑑定S 妨害S 隠蔽S 隠匿S 隠密S 遮断S
魔法:思考現実化
耐性:各種属性攻撃耐性S 物理攻撃耐性S 魔導攻撃耐性S
「うぉ、見れた。てか、何だ?このステータス、『思考現実化』って何⁉」
思考現実化:自身が理想とする能力を現実に表すことが可能になる
「マジか? チートじゃん。いや、この能力って、俺があの婆に欲しいって言った能力じゃん。マジで使えるようにしたのか?」
「アイト兄ちゃん? さっきから一人で何言ってるの?」
俺また考えを口に出してたのか。なる早でこの癖直さないといけないと思ってはいるんだけど、多分無理だよな。
「何でもない。それより、お前も鑑定してみるか。『鑑定』」
イリ・レノージュ 獣人 武闘家?
称号:奴隷気質
スキル:危機察知B 獣話 鑑定E
魔法:土魔法D 風魔法D
耐性:屈辱耐性A 恐怖耐性E
イリのステータスを見た俺は驚きのあまり口が開いた。
「―――イリ、お前、誰かにそのステータス見せたことあるか?」
「え? ステータス? それなら僕の村の人たちみんな知ってるよ。僕の事『奴隷娘』って呼ぶんだ。僕、奴隷なの? 奴隷だからこんな所まで連れてこられたの?」
「イリが何でここにいるのかなんて俺は知らん。でも、『奴隷気質』か」
奴隷気質:主に付き従うことで真の力が覚醒する。ただし、主は自身が心より崇拝、あるいは尊敬する存在しか認められない。また、主従関係を築く必要がある。
俺はイリの顔を見ながら考えこむ。一言も発することなく。
「イリ、お前は強くなりたいか?」
「え……?」
イリは困ったような表情をした。
「ま、まあ、一人で戦えるようになれたらいいなとは思ったことあるけど...そんな力僕にはないし……」
イリは俯きながら呟いた。
「そっか。お前が俺を慕うってなら、強くしてやれる。けど、本当の’奴隷’になることになるぞ」
俺が言うと、イリはさらに難しい顔をした。険しい顔で、真剣に考えている。
「奴隷...僕、アイト兄ちゃんと離れ離れになりたくないよ!」
そう言いながらイリは俺に抱き着く。円らな瞳で、潤んだ瞳で俺を見つめる。闇夜の中で入りの瞳が輝いている。何?俺を惚れさせたいの? ただけだけど美香10歳にも見てたないよね? 俺を犯罪者にしたいの? いや、異世界だから犯罪かどうかわかんないけど、モラル的にね?
「安心しろ。俺の奴隷になる感じだ。まあ、奴隷の関係を使うだけで、実際に奴隷になるわけじゃないけど、どうする? いやなら他の方法考えるけど」
「僕が、アイト兄ちゃんの、奴隷になるの?」
「そうだな。まあ、そんなすぐにできるようなことじゃないだろうけど」
「大丈夫! 僕、アイト兄ちゃんの奴隷になる!」
イリは目から少し涙が溢れ出かけている。
そんな顔なのに、すごく可愛らしい笑顔をしている。直視できない可愛さだ。
「そうか。まあ、とりあえず今日はもう遅いし、寝ようか」
そう言って俺は、寝袋とテントを作り出した。思考現実化の魔法で、『想像した形を具現化して欲しい』と念じたら出来上がった。
翌朝、イリが起きたときには、俺は既に起きていた。外で謎の模様を描いていた。魔法陣だ。多分!
「お、イリか。ちょうど起きたのか」
「ん? お兄ちゃんどうしたの?」
「取り敢えず、この魔法陣の真ん中に立って」
イリは俺に言われるが儘に魔法陣の中心に立った。まだはっきりと目覚めていない状態で少しふらついている。
「引き金、カノ者の信頼。術容、奴隷締結。仮刻印兼刻印陣狂痕。要請陣発動。仮奴隷、仮契約提の契約確立。施錠!」
俺がそう言うと、魔法陣が輝きだし、魔法陣はイリの手の甲へと収まった。
手の甲に着いた魔法陣は、着いてすぐは白かったが、直ぐに赤く変色したのだ。
「アイト兄ちゃん、もう動いていい?」
「あ、ああ。好きにしていいぞ…」
俺は少し動揺していた。
魔法陣が赤くなるのは条件を満たしたときのみ。つまり、イリは俺に完全に信用していて、主の器としての条件が満たされていたということだ。何で? 昨日初めましてだよね? 俺何か間違えた?
「おいイリ! お前どこ行くんだ⁉」
イリは森の中に向かって歩いていた。焦って俺は後を追ってイリに聞いた。
「顔洗うの。こっちに奇麗な川があるから」
そう言ってイリは歩き進めた。
俺はイリに付いて行った。一人だと迷子になるから。誇れるほどの方向音痴な俺はイリを視界に入れておかないと右も左もわからなくなるのだ。
川で洗顔してるイリの横で俺は水を汲んでいた。
「アイト兄ちゃん、戻ろう。片付けないといけないでしょ?」
「そうだな。テントも片付けないといけないしな。ちゃんと道案内してくれよ」
「もー、アイト兄ちゃんは本当に道知らないんだね」
「舗装されてないと分かんなくなるんだよ」
俺はイリにテントまで案内してもらった。適当に小袋にしまって二人は森の中を彷徨う。
二人で森の出口を探していると、何処からかゴブリンが出てきた。
「キャァァァーーーーー!!!!」
イリは発狂しながらダッシュで逃げた。俺はイリを追う前にイリを見失ってしまった。
「あんなに逃げ足早いのに、昨日の奴からは逃げられなかったのか? そんな事よりも、リアルゴブさんじゃん。肌が緑かかっていて、鬼と豚の顔面を足して5で割ってブルドッグを少し加えて不細工加工した感じじゃん!」
俺は目を輝かせながらゴブリンを観察している。こん棒で殴られそうになりながら。余裕で避けているが。
「見れば見るほど飽きるな。多分これ以上みてたらは居ちゃうと思うし殺すね。んー、行け!ファイヤーボール!」
逢兎は杖の頭をゴブリンに向けて叫んだ。逢兎の頭くらいの大きさの火球がゴブリンを焼き払った。
「オロロロロロロロロ……」
俺は吐いた。真っ黒に焦げたゴブリンを見て。着ていた衣類がなくなり、巨大な棒に気分を害して吐いたのだ。うん、これだったら人間のスタンドアップした棒を凝視した方がましだ。マジで!
「ゲホゲホ…こういうのって消えてなくなるもんじゃねえの? 何で黒焦げで残ってんだよ。しかも全く形崩れずに!」
俺はその場を離れることにした。見ても気分が悪い上に、悪臭がするのだ。生ごみを塩漬けにして、そのまま半日密室で生乾きさせたような匂いがする。実際にそんなことしたことがないからイメージだけど、多分間違いなく臭いよ!
「イリー、何処だー。戻って来ーい」
俺は森中に響き渡るほどの大声で探し回る。俺の案内役は何処に行ったんだよ。
「アイト兄ちゃん! なんでこっちに行くの? 私向こうに行ったよね? なんで反対方向に言っちゃうの?」
イリが何を言いたいのだろう。俺もゴブリンから逃げたんだよ? イリがどこに逃げたのか分からないから俺も適当に逃げただけじゃん。




