XV.別れるのも一つの戦略だよね?
俺達は朝起きると、宿で出された食事をとり、部屋に備え付けのシャワーを浴びてから宿の、街の外に出た。
俺は街のすぐそばの草原でゴブリンやスライムといった下級モンスターと戯れていた。
「アイト兄ちゃんこの辺り弱いのしかいないから面白くないよ」
「確かにどれも一撃で倒せてしまいますね。もう少し森の方に行きますか?」
「じゃあ行くか」
俺達は森の目の前まで歩いて来た。モンスターの死骸は、無限巾着にいれて俺が持っている。あとでリーノさんに怒られるんだろうな。
「どうする? 森の中入っちゃう?」
「ここにいても何も来ないですからね」
「入っちゃえー!」
イリは森の中へ突っ走っていた。イリを追いかけるようにルナと俺も森に入った。
森に入ってすぐ、俺たちはバラバラになってしまった。
僕は出て来たモンスターはみんな殴って倒した。頭を殴ったら頭が爆発するし、お腹を殴ったらお腹が爆発した。
出てこなくても見つけたら殴ってるんだけど、どれだけ探してもアイト兄ちゃんもルナ姉ちゃんも見つからないよ。
ルナはモンスターを少数ずつモンスターを倒しています。魔法でどうにか動けなくしてからとどめを入れているのですが、たくさんは一緒にできないです。なので群れているところにはいきません。
イリちゃんを探していたつもりが、いつの間にかアイトさんもどこかに行ってしまって迷子になってます。
俺は、片っ端からモンスターを魔力刃で斬りまくっている。斬って斬って斬りまくっている。到底魔法使いとは思えないほど近接戦を繰り広げているのだろう。でも、近づいて来るんだから近接神しかできないよ?
俺達はみんな適当に進んでいたのに、なぜか途中で合流した。
「二人ともどこ行ってたの⁉ 探してたんだよ」
「イリが勝手にどっか行ったんだろ」
「アイトさんが黙って探し回ってるせいで見失いましたよ」
好き好んで迷子になりたがるような変人はこの中には居ないようでよかった。
「二人とも向こうに行ったら駄目だよ。危険だから」
俺は変な気配がする方を指しながら言った。
「よし、いこー!」
イリが腕を突き上げながら言う。
「駄目だって言ってるだろ」
俺は突き上げられたイリの腕を掴んだ。
「向こうに何かあるんですか?」
ルナが俺に問う。
「分かんないけど、危険だってことはよくわかる。禍々しい気配がするんだよ」
「そうですか。『危機察知』」
ルナは俺の指さした方向の気配を読む。しかし、ルナには何も感じないみたいだ。イリはそれを聞いて無理やり俺の手を払って走り出した。
「“止まれ”」
俺がそう言うとイリはピクリとも動かなくなった。声に魔力を乗せるってこういう感じなのか。あんまりやりたくない。吐きそうになる。
「どうしても行きたいなら、三人で、一緒にだ。一人でも見失ったらすぐに逃げろ。俺が二人を探し出してやるから」
「分かった…」
ルナと俺は目を合わせて無言で頷き合う。絶対にイリから目を離さないでおこう。
俺とルナはイリから目を離すことなく周りの気配を探っていた。
「ッ…!」
少し進んだ時、ルナの足が止まった。
「これ、大丈夫なんですか?」
「何があっても俺が二人を逃がしてやるから安心しろ。そんなに震えてたらイリを守れないぞ」
「は、はい」
ルナは自分の腕を掴んで震えを押さえて歩みを再開した。
しばらく俺達はひたすらに歩いていた。道中全くモンスターと出会わなかった。突然、イリが足を止めた。
「見つけたよ。いっぱいいる」
目の前には多種多様なモンスターが大量にいる。俺達は物陰から様子を窺っている。
「イリ、無理すんなよ。何かあったらすぐに逃げろ。ルナはここで見ていてくれ。イリが逃げたら護衛を頼む。街まで行くんだ。俺がイリと一緒に行く」
「逃げないよ!」
「分かりました」
「行くぞ、イリ」
俺とイリはモンスターの大群に飛び出した。
「『超身強化』 イリ、無茶するなよ」
「分かってるよ」
イリが力いっぱい殴るとモンスターの頭が弾ける。だが、倒すよりも早くモンスターが押し寄せてくる。
「『魔力刃』 イリ、危ないと思ったら逃げろ。下がれ!」
俺がイリをかばうようにモンスターを倒す。イリも少なからず頭を潰している。グロいから頭はやめてほしい。
「イリ、ルナの所行け。何体か街に向かってる。二人で止めてこい。こっちは俺がやる」
「それだとアイト兄ちゃんが…」
「俺は大丈夫だ。街を守って来い」
「分かった」
イリは顔を顰めながらルナの元に行った。
「ルナ姉ちゃん! 町が危ないって! 僕たちで食い止めてって!」
イリは少し離れたところからルナに伝えた。ルナは一瞬俺の方を見て、イリを追いかけた。
「イリちゃん!ルナは逢兎さんみたいに守ってあげられるか分かりません。無茶は絶対にしないで下さいよ」
「うん。見つけたよ。あそこが先頭だよ」
イリちゃんは先頭にいたモンスターを殴り潰してしまいました。ルナはイリちゃんの前に少し低めの壁を創造まし。高さとしてはイリちゃんが壁の向こうを見えるくらいの高さです。
「イリちゃん下がりながら戦ってくださいよ」
「わかってる!」
壁を越えてくるモンスターをイリちゃんは大きく一歩下がりながら殴り飛ばしています。
ルナはイリちゃんが殴り飛ばしたモンスターに止めを刺しています。とはいってもほとんど死んでいるのであまり仕事がないです。
「ルナ姉ちゃんどうする? このまま下がって行ったら街が…!」
「確かにこのペースだと街が…でも他にどうすれば…」
ルナは考えます。どうすれば街に被害を出さずにモンスターの大群を止められるのかを。
イリちゃんとルナは森の外、草原まで出てきました。モンスターはまだまだ残っています。最初よりもどんどん強くなっていて、イリちゃんだけでは確実に仕留めきれなくなってきています。
「ルナ姉ちゃん! もう街だよ!」
ルナは少し考えてから返事をしました。
「イリちゃんそのまま下がってください!」
「え、でも……」
「いいから!大丈夫です」
イリは後ろに大きく下がる。
「『天明の祝壁』『樹栄吸』 これじゃ足りない。もっと、、、『大束樹』」
ルナは魔法で巨大な壁を作り、次々にモンスターを串刺しにしていきます。しかし、その上から飛んで来たり、避けて横から来ます。
「イリちゃん!」
「大丈夫! ルナ姉ちゃん下がって。前にいたら危ないから。『爆撲禅風』」
イリちゃんはルナが下がった瞬間に、両腕を地面に突き刺すほどの勢いで殴り、地割れが起きるほど大きく大地を揺らした。その後すぐに両腕を前に勢いよく突き出し、ルナの障壁もろともモンスターを吹き飛ばしました。
後ろで立っていたルナも揺れで飛ばされる程の大きな揺れでした。
「ロノスさん、今の揺れ」
「ゾーノ君、君もかい?」
地面が揺れた。一体だれが。
「ええ、今のは人為的な揺れ。それもかなり近くで」
「Cランクの冒険者に緊急招集を呼びかけようか」
「いや、Aランク以上の強制招集だ。僕は傍観しておく。一般市民に被害が出るならすぐに終わらせる」
そう言ってゾーノ君は近くの屋根の上に飛び乗ってより高い建物の屋根に移動していく。
「Aランク以上って、まあ、Cランクでは限界が出るのか。仕方ない」
私は急いで冒険者ギルドに走って行く。
私が冒険者ギルドに着くとリーノくんが駆け寄ってきた。
「ロノスさん」
「Aランクの強制招集、並びにCランク以上の任意招集をかける。すぐだ!」
「はい!」
リーノくんは街中に冒険者緊急招集をかけた。
私は冒険者ギルド内に保管されている装備をいくつか取り出し並べた。
リーノくんが町中に招集をかけたことで集まった冒険者は、Aランク5人、Bランク2人、Cランク4人、Sランク1人だった。もう少しいてくれればよかったのだが仕方あるまいか。




