XIII.迷宮に降りても、楽しくないと引き返すらしい
何故か知らないけど異世界に召喚された俺、玆先逢兎は、変な事象神とやらに、変な能力を渡されて、気が付けば熊耳少女、あれよ、あれよ、という間に森人と出会い、気が付けば魔族を倒し、村までやって来た。
俺は異世界ならではの冒険者になろうとするが、それを妨げる冒険者に出くわしたので、全員を力尽くで捩じ伏せ潰した。が、冒険者になる条件を満たしてないと言われ冒険者ギルドを追い出された。ならばと勝手に依頼を成し遂げ、さらには依頼にない厄災の討伐にも成功した。
冒険者になるためには試験があったのだが、俺は参考書を見ていた時に一つ疑問が生まれた。
「ちょ、何これ」
思わず口に出てしまった。俺が見ていたのは『数の数え方』のページだ。しっかりと10進数表記なのだが、100ごとに謎の数字が書かれている。99と100の間、199と200の間、その後も100ごとに訳の分からない数字がある。数字だとわかるのが難解だった。そもそも全部異世界の数字だけど。
「これって10進数じゃなくて10.1進数なの? 面倒過ぎない? 道理で例題の答えが合わないわけだ~。単位の勉強だけじゃないのかよ~」
などと愚痴をこぼしていた。結局受かったことだしどうでもいい。
そんなことはどうでもいい。
俺らの冒険者ランクはEランク。そして、依頼は自分のランク、或いは+・-が付いたもの。もしくは自分の一つ上のランクの-の依頼、自分のランクより下の依頼のみ受けられる。
意味が分からないから、自分のランクの一つ上までなら何でも受けられるということにした。違っても俺はそう思うことにする。
「冒険者ギルドカードも貰ったし、もう一度行ってみようか。追い返されたところに!」
「でもあそこって、」
「Cランク以上じゃないとだめなんじゃ...?」
「行ってみないとわからないじゃん」
俺は二人の手を引っ張って迷宮へ向かった。当然のようにルナに案内してもらっていた。だっていきなり違うって言ってくるんだもん。
「たのもー!!」
俺が堂々と胸を張りに張って、わざと足音を立てながら迷宮の前に来た。
「また君か。この間も言ったろ、此処は冒険者しか入れない」
この前の青年だ。俺は待ってましたと言わんばかりにドヤ顔をして冒険者ギルドカードを見せつけた。
「これで文句ないでしょ」
どこからかドヤッと聞こえそうな雰囲気をだして通り過ぎようとした。
「駄目だ。ここはC+ランクの迷宮だぞ。Eランクが入っていいわけないだろ」
俺はムッと頬を膨らませた。
「前はそんなこと言ってなかった!」
「それ以前の問題だったからだ!」
俺と青年は睨み合う。こういうのをいがみ合うって言うんだっけ? 違うか?
「何をしているんだい」
迷宮の中から一人の男が出てきた。
「ロノスさん。申し訳ありません。このEランク冒険者が入らせろと五月蠅いもので」
「構わぬ。入れてやれ」
「ですが…」
「私が許す。文句はあるか?」
「いえ、...なにも」
そう言って青年は下がった。
「なんか大丈夫そうだし行こっか」
俺は二人に笑いかけて迷宮に入った。イリとルナも後を追うようにして入った。
「自己紹介が遅れたね。私は冒険者ギルド長のロノス・カエレゴだ。よろしくね」
「あ、玆先逢兎です。よろしくですます?」
俺の挨拶は疑問形だった。普段から挨拶しないタイプだ。いや、自己紹介とか名前だけしか言わなかった。誕生日とか血液型とかいえばよかったのだろうか?
「君のことは知ってるよ」
「知ってるって何を?」
俺は即返答した。異世界人だと知られたら兵器にされるかもしれない。
「君は一人でAランク冒険者と戦って勝ったそうじゃないか。信じがたいが、多くの目撃情報があってね」
ロノスは俺達の方を振り返る。片目だけは怖いよ。
「君たちはいったい何者なんだ?」
イリとルナは黙り込む。
俺はロノスの顔をマジマジと睨みつける。
「嵌めたな」
俺は呟くように言った。
「そんなつもりはないさ。君が小石で転んだだけだろ」
「その小石をまいたのはお前だろ」
最初に即答したのがまずかったらしい。自白を貰えて何よりだ。よし、逃げよう。
周りの冒険者たちも足を止め、四人を囲むようにまばらに傍観している。逃げ道を塞がれたようだ。
「まあいっか。迷宮に入れてくれたってことは、自由にしていいんだよね?」
「そうだね。これを渡しておこうか」
そう言ってロノスは俺達に『Bランク依頼受諾可能書』と書かれた紙とチップを一つ渡した。
「そのチップは転移装置の様なものだ。迷宮には居る冒険者はみんな持っている。それに魔力を流し込んで、置いて帰ればいつでもそこに転移できる。ちなみにだが、紛失は自己責任だ」
そう言ってロノスは迷宮の外に出て行った。
「よく分かんないけど行こっか。行けば多分わかると思うし」
「そうですね」「うん」
俺達は迷宮の階段を下りる前に腕輪を付けられた。この腕輪には緊急エスケープ機能がついているらしく、自身が通った経路を記憶していて、一つ上の階層に飛べるらしい。
「二人はダンジョンに入ったことある?」
「ないです」「ないよ」
二人とも即答だった。この先が不安だな。
「あ!もうすぐだよ。早く行こうよ」
イリが第1階層の明かりを見つけて走り出す。
「イリちゃん危ないよ」
ルナは走る入りを追いかける。
この迷宮は未だ完全攻略されたことがないらしい。150階層まで行ってもまだまだ先があるらしく、150階層のモンスターがなかなか倒せないらしい。ボスなのだろうか。
「最初は豚鬼のようですね。これくらいでしたらルナたちでも倒せます」
「階段とか探しながら適当にすすもっか。多分大丈夫らしいし」
俺がそんなこと言った途端に豚鬼が襲い掛かって来た。
「身体発火」
一瞬で豚鬼らが灰になった。何故か二人が俺の方を見てくる。
「灰じゃなくて花火にした方が良かった? 出来るか知らないけど」
「違う! 僕も戦いたいの!」
俺は黙ってルナを見る。ルナは黙って首を横に振る。
俺はルナを見つめる。ルナは黙って首を横に振る。
俺はため息をついてからルナを見上げるようにして見る。ルナは黙って首を縦に振る。
俺はため息をつく。
「分かった。好きにしていいから死ぬなよ」
「うん!」
イリはこれまでで一番元気のいい返事をする。
「ルナもな」
逢兎はルナの目を見て言った。イリの監視は任せても良いよね?
「はい(?)」
ルナはどこか疑問の残るような返事をした。目線の意味はくみ取ってもらえなかったらしい。
イリは見つけた豚鬼をすべて倒している。ルナも見つけ次第イリに教えている。
「なんか、俺より手際良いな」
「アイト兄ちゃんの戦い方が可笑しいだけだよ!」
「魔法職は後衛職だと聞きますが、逢兎さんは近接タイプですもんね」
「だってちまちまするよりドッカーンってした方が楽しそうじゃん?」
そんなこと言いながら俺は目の前にいる豚鬼に斬りかかる。
「それに楽だし」
そう言って俺は歩き出す。
「戦ってもいいって言ったんだから戦わせてよ!」
「じゃあ、外で戦おっか。俺この世界の戦い方全然分かんないから袖練習しよ」
「えー」
イリがこれでもかと嫌な顔をする。
「外の方が強い奴いると思うけどな」
「アイト兄ちゃん早く帰るよ。ルナ姉ちゃんも早く」
イリは俺達を引っ張る。来た道を戻ろうとしている。
「さっき貰ったチップ投げればさっきの所に戻れるって上の方が言ってましたよね」
「興味ないと忘れちゃうんだよね~」
「何でもいいから帰るよ」
イリは真っ先にチップを地面に放り投げた。
すると、チップが魔法陣になってイリだけを転移させた。その後は魔法陣がチップになった。
俺とルナもチップを投げた。するとチップが魔法陣になり俺達も転移した。




