I.異世界転生が御所望なのに、異世界召喚されてしまった
かなりの長編になると思いますが、頑張って書いていきます!
応援の程、お願いいたします。
枯れ葉が散り始める秋の日。湖岸を一人、自転車をこいでいる哀しい俺は、玆先逢兎16歳の高校二年生だ。
俺は一年半の間、日本に5校しかないと言われる分野の高専に通っていた。そこから逃げ出し、今は通信制の高校に通っている。
「今日のレポート面倒だったな~。歴史とか好きな奴だけすればいいのに」
そんなことをぼやきつつ、家に帰っている。
暴走トラックに出くわすこともなく、俺は普通に家に帰りついた。転生系のラノベしか読んでないからだろうか?
「ただいま」
「おかえり」
俺が帰ると、俺の母、玆先美乃が迎えた。すでに夕刻を過ぎた刻だったためか、夕食の準備を始めていた。
食卓には俺の兄、篠兎と俺の父、雄二もいた。俺にはもう一人、海兎という名の兄がいるのだが、学生寮に入っているから今は家にはいない。長期休暇以外はめったに帰ってこないのだ。俺もそうだった。
「「「「いただきます」」」」
俺たちが食事を始めようとした瞬間、床に幾何学的な模様が現れ、輝きだした。俺たちは立ち上がって騒ぎ出すが、何もできない。そのまま、視界が白く飲み込まれ、何も見えなくなった。
「―――ッ。なんだ?ココは? 一体どこなんだ?」
俺は目を覚ました。周りには誰もいない、家族もいないで、俺一人だけだ。真っ暗な空間。何処かの社長の何億円もする家の一室並みに真っ暗で何も見えない空間だ。電気がついているのかどうかも分からない。
「おや、此処に人間さんが来るなんて珍しいこともあるもんだね。私は初めて見たよ」
俺は後ろからする声に驚いた。振り返ってみると、そこには老婆が居た。目は開いているのか開いていないのか分からないくらいでしか開いていない上に、腰が90度曲がっている猫背で、白髪長髪の婆だ。
「お婆さん誰?」
「私かい? 私はカオスってんだい。あんたらが言うところの『神様』みたいなもんさね」
俺は真顔で婆を見つめている。あたかも普通のことを自慢気に言ったような人を見る目で見つめている。だって実際そうゆう風に見てたもん! 多分!
「どうした? 人間は神だと聞くと大騒ぎすると聞いておったのに、何故貴様は驚かんのじゃ?」
「いや、ラノベの流れだとわかるけど......俺が読んだどの作品にも神が婆なんていうのは無かったぞ。こうゆうのって普通、見た目十代後半から二十代前半の女性で異世界に連れて行くか、二十代くらいの男で俺がソウいう方向に目覚めるモノじゃないのか? いや、爺が出てきて発狂したのは見たことがある。だけど、見た目も婆なんか見たことないぞ……」
俺の言葉はどんどん早口になっいく。
「あんた、さっきから私の事『ババア』って言ってないか? 私はこれでもピチピチの5986歳なんじゃぞ!」
婆が俺のどんどん早くなっていく言葉に割って入って怒鳴り散らかした。
「5986歳ってマジで婆じゃん。てか、それだけ長いこと生きてるんだったら、人間に正しい歴史を教えに来てよ。日本の縄文時代とか、メソポタミア文明の話とか物好きな人に教えたら一瞬で億万長者になれると思うよ。それに、人間って何故か知らないけど歴史を学べって煩くてさ……」
「そんなものは知らん。私はずっとここにいて外の事なんか何一つ知らんわ!」
俺の表情が完全に固まった。瞬きすらしないレベルで固まった。表情だけでなく腕や足もピクリとも動かなくなった。
カオスが息を吹きかけてもピクリとも動かない。指でつついても、杖で叩いても動かない。金縛りにあったみたいだ。しかし、カオスが俺を椅子にしようとすると飛び起きた。流石に婆の尻に敷かれるのは死んでも嫌だ!
「―――」「―――」
俺は黙ってカオスを見つめる。カオスも黙って俺を見つめる。だんだんと俺の顔が曇っていく。当たり前だ。
「何が楽しくて婆と見つめ合わなくちゃいけないんだよ! さっさと本題に入れよ。どうせ俺を異世界に連れて行きたいんだろ?」
「なぜそれを知っている? さては貴様以前にも一度ここに来たことがあるのか?」
「こんな変なところ来た覚えねえよ。変な空間に神が居たら大概は異世界にいかされんだよ! 俺死んでねぇのになんでこんな変なところ来ないといけないんだよー!」
俺の声はだんだん震えていく。何なら眼も潤んできてる。
「分かったから泣くな。人間界ではこういうネタの作り話が流行っていて、たまたま現実になっただけなのだろう? ならば作り話に入ったような感覚でいいのではないか?」
「俺は召喚じゃなくて転生を期待してたのに! 何も分かってねえ。分かった気になってんじゃねえよ。お前みたいな外の世間を知らない様な老害と同じ諮りに乗せるんじゃねぇよ。見下すのも大概にしろよ」
俺の完全に目は極まってていた。
神すら怯えるほどの罵声を挙げた。
「そうかい。それは失礼したね。本題の内容は理解してくれていると思うのだが、一応伝えておくね。貴様には向こうの世界で順応してもらうために能力を身につけてもらうよ」
「なんかもう面倒だし、さっさと終わらせて」
俺はすでに疲れ果てていた。感情が変化があまりないけど、変化するときは極端に変化するせいでひどく疲れているのだ。本音を言うとこのまま寝ていたい。
「貴様にはこれから剣と魔法の世界に行ってもらうんだ。そこで1つ...え? 4つ? えっとー、君には能力が4つ与えられるらしいよ。何か欲しい能力はあるかな?」
「え、マジ? 4つも貰える⁉ じゃあ何がいいかな~」
俺はふざけた振る舞いをしながらまじめに考えている。腕を組み、天を見上げ、悩んでいる。傍から見れば馬鹿が馬鹿なことを考えているようにしか見えないのだろう。
「これから行く世界って、スキルと魔法って違いがあったりするの?」
「ん? ああ、あるよ。よくわかったね。何でもいいから早く決めとくれ。この後で10人待ってるんだから」
そんなこと知らないといった表情で俺は再度悩みだした。
「何でもいいなら、俺の想像した魔法とスキルが使える能力が欲しいかな?」
「無茶苦茶言い寄るな。ほれ、さっさとあと2つ言いな。もう私は待つのが面倒じゃよ」
カオスは急かすように言った。
俺は『何でもいい』とか『答えがない』ということが嫌いで、関わらないようにしてきたのだ。それなのに『何でもいい』と言われて非常に困っているのだ。
「じゃあ、向こうの世界で殺されないような肉体にして?」
「それこそ無茶苦茶じゃないか⁈ もう面倒だからそれだけでいいか? あと一つはプレゼント能力のレベルを上げておいてやるから」
婆はそれだけ言って俺を異世界に飛ばした。俺には何も言う暇がなかった。
俺は異世界に飛ばされた。
「どこなんだ此処は? 森の中、ってわけではなさそうだし、定番展開じゃないじゃん!」
「定番? この世界にそんなのも止めたらダメだろ」
俺の目の前には男が一人立っていた。男は俺が急に叫びだしたにもかかわらず、驚く素振りすら見ずに冷静に言った。むしろ、叫ぶことに疑問を持っているような表情をしている。俺、何か変なこと言ってしまったのだろうか?
「知るかよ。俺は定番を期待してたんだ! 床に幾何学模様が出てきて、真っ黒の部屋に飛ばされたからな。そっからは定番じゃないことは多かったけど、異世界に行けば定番展開になると思うじゃん! なんで俺の理想は叶わないの? 少しくらい夢持たせてよ。俺の理想は絶対にかなわないの? あとさっきからぬるい水出てきてない? てか、赤いしなんな、の…」
俺はだんだんと言葉が加速していくが急に言葉を失った。手元に流れてきたほんのりと温かい水は血だったのだ。近くには、母、父、兄がバラバラの死体になって転がっていた。首と体中の関節で千切れていた。俺は目の焦点を失い、涙腺が切れ、何も言わないまま、一切動かなくなってしまった。
男が指を鳴らすと一人の男がやってきた。精神が崩壊しているせいか、顔が全く見れない。いや、見たところでどうせすぐ忘れるだろうけど。
「御呼びでしょうか?レイバル様」
「安全なところに摘み出しておけ。外れだったようだ」
「は、御意のままに」
レイバルと呼ばれた男はそう言って部屋を出た。指示を受けた男は、俺を布袋に詰め込み、最低限の装備だけを一緒に詰め込んだ。そのまま男は俺の入った袋をもって外に出て行った。




