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嫌われ魔眼保持者の学園生活 ~掲示板で実況スネーク活動してたんだけど、リアルで身バレしそうwww~  作者: ぺぱーみんと
【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】
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***


ルルは自分を助けてくれた人物たちを見て、信じられない気持ちだった。

二人とも知っている人物だったからだ。

1人は英雄ヴィンセント。

もう1人は、ルルが王都に引っ越して来る前に出会った少年だった。

正直、少年のことをルルは忘れかけていた。

引っ越す前の思い出作りにと肝試しをした。

その時、色々あってルルとその友人たちは埋められていた宝物を発見するという体験をした。

その体験の記憶に上書きされて、そもそも大元の切っ掛けとなったユートの事を忘れていたのだ。

宝物の発見は、ヴィンセントからの頼みでもあったから。

そっちの記憶の方が鮮烈だったとも言える。

でも、今、暴漢に攫われ暴行をされそうになっていた自分を助けてくれた少年。

その少年の顔を真正面から見て、ルルはユートのことを思い出した。


(やっぱり、幽霊なんかじゃなかった)


ユートの方も、ルルのことを覚えていたようで、とても驚いている。

そういえば、王都に引っ越すとか言ってたっけ、と思い出す。

しかし、悠長に会話をしているような場合ではない。

警察と、怪我は治したものの救急車を呼んだ。

そうするように、生徒会のマニュアルにあったのだ。


その後、簡単な報告を警察と救急隊員にし、ルルの乗った救急車を見送って、ユートとヴィンセントは別れた。


そして、翌日。

目覚めて寮の食堂に行くと、すでに昨夜のことは噂になっていた。

ちらちらと、他の寮生がユートのことを見てくる。

しかし、声をかけてくるものはいなかった。

ただ、通学路の時と同じように、


「おい、今度もヴィンセントのお陰で手柄を立てたんだって」


「マジかよ、ウケる」


コソコソとそんなことを言われていた。

睡眠時間がいつもよりも少ないので、ユートはいつも以上に大きな欠伸をした。

もそもそと、用意された朝食を摂る。

食べ終わると、さっさと自室へ戻っていく。


「絶対勘違いしてるよな」


「あとで〆るか?」


先輩寮生が実に楽しそうにそんな会話を交わしていた。


(あー、ねみぃ。

今日は報告したら、そのまま授業さぼって寝てよう)


ユートは無理はしない事に決めていた。


登校してすぐに、ユートは生徒会室に向かった。

報告のためだ。

そこに待ち構えていたのは、生徒会長のアイリ、ではなく。

風紀委員会の面々であった。

風紀委員会の面々に取り囲まれる。

そして、始まったのはリンチだった。

口汚く罵られる。

身の程を知れと、怒鳴られる。

まさかユートが仕事を成功させるとは考えていなかったのだ。


「今回、任務が成功したのは英雄ヴィンセントのお陰だ。

お前が強かったからじゃない」


胸ぐらを掴まれ、無理やり立たせられる。


「…………さいで」


ユートはボコボコになった顔でそれだけ口にした。


「わかってないようだな」


風紀委員の一人が吐き捨てる。

そして、どうせ回復と治癒魔法が使えるんだから、という理由でさらに暴行が激化した。


(ダルい)


殴られながら、ユートはただただそう思った。


(ねみぃ)


こんなの、訓練施設時代の授業に比べれば屁でもなかった。

ある程度のところで気が済んだのだろう。

暴行がやんだ。

そして、ユートがアイリへ提出予定だった報告書を、風紀委員達は破り捨てたのだった。

風紀委員長が、床に倒れ伏したユートを冷酷な眼差しで見やる。

そして、


「嘘ばっか書いてんじゃねーよ。

お前みたいな下賎な奴が、魔法で賞金首の親玉を倒せるわけねーだろ」


そう吐き捨てられた。


(嘘じゃないんだけどなー。

ま、いいや)


ユートの実力を知っているのは、学園内では今のところ生徒会長のアイリと、英雄エディだけだ。

反撃は正直余裕ではあるが、なにしろ飼い主の【他の生徒を立てろ】という命令は継続中だ。

これに加えて、【殴らせるな】と命令してくれていたらもう少し動きようもあるが、その命令はいまのところ出ていない。

そのため、ユートはこうして風紀委員を立てているのだ。


「再提出だ」


ニヤニヤと楽しそうに笑いながら、風紀委員長はそう言った。


■■■


420:魔眼保持者

報告書にボツくらいまくって提出できません

(´TωT`)


421:名無しの冒険者

報告書って、昨夜のか?


422:魔眼保持者

生徒会長に報告行こうとすると

風紀委員に阻止される

もう帰っていいかな?(´;ω;`)


423:名無しの冒険者

え、それ邪魔されてるってこと??


424:魔眼保持者

まぁ、そうなるかな

めんどいから朝イチで報告書持って生徒会行ったのに

風紀委員がいてビリビリに破かれた

これでも、報告書とか暗部時代に叩き込まれたから

変なこと書いてないのになー


425:名無しの冒険者

うわぁ


426:名無しの冒険者

完全なるパワハラ


427:魔眼保持者

本当に宮仕えっぽくなってきてる

実況したい(´;ω;`)


428:名無しの冒険者

つーか、生徒会やめろよ


429:名無しの冒険者

生徒会長って力ないのかな?

こういうの止められないってことだろ??


430:名無しの冒険者

>>429

下手に庶民出身者に肩入れ出来ないんだろ


431:魔眼保持者

もうめんどい

今日はもう帰ろう


432:名無しの冒険者

ん??

ちょい思ったんだけどさ

その報告書って提出期限ある?


433:魔眼保持者

>>432

あるけど、それが??


434:432

あ、じゃあさ

提出期限過ぎるまで待てば?

そしたら、生徒会から早く出せってお呼びが掛かるだろ?

そうなったら堂々と持ってけるじゃん

少なくとも風紀委員に邪魔はされない


435:名無しの冒険者

Σ\(゜Д゜;)おいおいおいおいwww


436:432

それとも、風紀委員を通さなきゃいけないルールがあったりするのか?

魔眼保持者の書き込み見てると、最初は直に生徒会長に渡そうとしてたから

元々風紀委員通すことないんだなって思ったんだけど

違うの??


437:名無しの冒険者

なるほど


438:魔眼保持者

たしかに、そうだな


439:432

あとは、英雄エディに実力バレたんなら

エディを通して会長に渡してもらえば?


440:魔眼保持者

あ、たしかに!!

その手があった!!


441:名無しの冒険者

いや、気づけよ

元社会人


442:名無しの冒険者

つーかwwwおまwww

元暗部だろwww

風紀委員くらい余裕で出し抜けるだろうにwww


443:魔眼保持者

元暗部ってのはバレてないからな

もしバレてそこから芋づる式に、魔眼保持者ってことがバレたら笑えないだろ


■■■


ユートは早速、仕上げておいた通算数十枚目の報告書を手に取ると、エディを探し始めた。

エディが所属している教室まで行ってみる。

彼はクラスメイトの女子生徒に囲まれていた。

どうやら勉強を見ているようだ。

ユートのことに気づいたのは、護衛のルドルフだった。

ルドルフは教室の入口に立っているユートへ、こっそりと近づいてきた。

ユートは、彼に事情を話す。


「なるほど、では俺から主人に渡しておきますよ」


そう言われたので、ユートは言葉に甘えることにした。

報告書を渡すと、やっと肩の荷が降りたとばかりに寮に帰ろうとする。

しかし、ルドルフが呼び止めて小さな声で言ってきた。


「しかし、ユートも中々の狸ですね。

全く気づきませんでしたよ、貴方が【ファントム】だったなんて」


ユートはため息を吐いて、言い返した。


「あっけない幕切れになったけどな」


まさかDNA鑑定までしてくるとは思わなかったのだ。


「お宅の王子様、イーリスには言ってないの?」


ついでに気になってることを聞いてみた。


「えぇ、最初は言おうとしていましたが。

やめたようです。

貴方こそ口止めをしなかったですよね?

我が主人にもですが、生徒会長にも言うな、とは言っていないようですし……」


「バレたから、もうどうにでもなれって気分だったからな。

それに」


「それに?」


「俺みたいな飼い犬階級は、飼い主の言うことは聞くけど飼い主を操ることは出来ないからな」


ルドルフは、それを彼自身が平民としての立場を弁えているから、と解釈した。

ユートは言うだけ言って、その場を離れようとする。

そんなユートにルドルフは、礼の言葉を投げた。


「遅くなりましたが、我が主人を助けていただきありがとうございました」


「何の話だ?」


「デス・バレーの件ですよ。

私も、主人もここにこうしていられるのは貴方のお陰ですから。

主人に代わってあの時の感謝とお礼を申し上げます。

本当にありがとうございました」


ルドルフは頭を下げそうな勢いだったので、ユートはそれを阻止する。

そして、


「仰々しいな。

気にすんな、趣味のついでだっただけだ」


そう言って、その場を去った。

ルドルフはそれでも、軽く頭を下げた。


他の生徒が不思議そうにルドルフを見ていたが、しかしとくに見咎める者はいなかった。

まさか、ユートに対して頭を下げているとは考えなかったからだ。


ユートは生徒玄関へ向かった。

靴もイタズラ書きをされていたが、ボロボロにされていなかったので履けた。

生徒玄関を出て、校門近くを通った時。

妙な人だかりが出来ていることに気づいた。

興味をそそられ、なんだろなと様子を見に行くと、


「あ、いたでござる」


「さっさと携帯で連絡をとれば良かっただろう」


何故かヴィンセントとチェスタがいた。

その陰に隠れるように、もう一人少女がたっている。

ルルだった。


(なにしてんだ、この人たち)


ヴィンセントとチェスタがユートに手を振る。

こっちに来い、という意味だ。

学園の生徒たちの視線が、ユートへと移り、集中する。

ユートは疑問符を浮かべつつも、そちらに歩み寄った。



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