大切なものがいなくなったから嬉しむ
大切な人がいなくなってしまった。
でも嬉しい。
私は笑顔を浮かべた。
そう、だって、彼はいなくならなければならなかった。
大切だったけれど、彼といきるより他にもっと重要な事があったから、仕方がなかった。
彼の亡骸を前にして微笑む。
一人にしてください、といったから誰にもこの顔が見られる事はない。
不謹慎だけれど、この表情はとうぶん変わらないだろうな。
だって、ずっとこの時が来るのを待っていたからだ。
私は、彼のきらきらした肌を指でなぞった。
冷たくて固い。
人間の皮膚じゃなかった。
当然だ。
彼は、人外。
鉱物でできた生き物だったのだから。
宝石人種と言う存在。
鉄とか銅とかの皮膚がほとんどだけど。
手の甲や額に宝石がうまっているのだ。
これをとって売れば、きっと高い値がつく。
昨日、とうとう、長い間少しずつ毒を盛った効果が出た。
それで、こうなった。
私は部屋の外に聞こえないように小さく「あはは」と笑った。
知ってる?
どんなにすばらしくても愛はお金の前では無力なんだよ。
どんなに大切にしてても、その感情はお金の前では無力なんだよ。