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  作者: あきんど
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■閑話休題 TS

■閑話休題 TS


「と、言う訳でえらい目にあったわけだ」

「それはまた災難だな」俺の愚痴にハルトが苦笑する。

俺もハルトもパワードアーマー姿。

ダイソナーエリア(アルファ)にケイブ中である。

前回の事の顛末はこうだ。

ミッションはコンプリート。

魔眼の能力収束の眼鏡は無事に殿下の手へと渡った。

これで一応は血生臭い派閥争が回避出来たと言うべきかな。

その功績もあり俺たちはロスベルクの王城の謁見の間にて殿下よりお褒めの言葉と報酬を

頂戴する事となった。

用は学校での全校生徒の前での表彰授与だ。

「まあ、それはいい。正直、形式ばった儀式に付き合うのは苦痛だが一度は経験してもいいものだ」

そう思いつつ膝を付き玉座からのお言葉を待つ俺達を迎えた声は素っ頓狂だった。

「おお、キュートな狼人の乙女ではないか。また会えたな」

うさぎの尻尾が逆立つ。銀髪巨乳が玉座に座り込んだ。

「うん。殿下と言う方はミスリードだったよね」

王子か王女かは聞いておいて損はなかったな。

幸い、新城さんや彼女の横に立つ貫禄のあるおじさんが鋭い目で睨んでる。

このプリンセスもうさぎもそれ以上の行動には出なかったけど変な縁が出来たかな?

「鑑定じゃ。鑑定するのに必要なので耳を触らせておくれ」

でもこの姫さんは正々堂々とセクハラ紛いのことを言い出した。

勿論、鑑定の魔眼は見れば分かる能力で接触、特に耳に触る必要などカケラもない。

うさぎはどう見ても年上の姫さんが駄々を捏ねるのを見て冷静になった様だ。

「引くわー」渋々と耳と尻尾を触らせる。

お陰で機嫌の悪いこと悪いこと。

退場してからの怒りの誘爆注意とその解体には一苦労だったよ。

「まあ収穫もあった」

鑑定の結果、飛鳥とうさぎが魔術を使うには十分なエネルギーゲイン持ちである事も判明した。

それぞれの能力も再判定だ。

新城さんのクロスドミナント。

飛鳥の反響定位。

うさぎの絶対色感など。

後追い確認だがありがたい。

俺?

そんなもんねえーよ。まあ盾扱いが中級レベルに食い込んでた位だな。

魔力もゼロ。クソでかいため息しかないね。

でもオイラ負けないよ。


「しかしお前らもあの森でアナヒータに会っていたか」

ちなみに面々は俺、ハルト、ケラスス、それに。

「羨ましいですよね。リスクを少なく女性体にも成れるという事は」

ハルトパーティのメイジ。リーさんだ。

バフとデバフを中心にする魔術師。俺から言わせれば正統派の人。

ドルイド系統らしいが、一部の魔術師が忌み嫌うゲーム魔術も卒なくこなす。

[リヴァー]内における魔法は様々だ。

何しろコイツは都っ散らかしてマルチバースを食う。

各宇宙論的世界のアイテムはガツガツ飲み込む。

あらゆる世界線の魔術師や魔法も引き込んでいる。

オケアノスの最初期には魔術はほとんど個人のユニークスキル扱い。

インフラ構築とロジスティックの増強に多大な貢献をしてきた。

メイジ。体内に何らかのバイオジェネレーターを持つ者達。

その呼び名は様々。丹田、仙骨、チャクラ、銀の腕、エネルギーゲインetc。

彼らはこれらの臓器からのエネルギーと器官を用いて超常現象を引き起こす。

これが現在、解明されている根本的な魔法システムだ。

原理もそれなりに解明され、通称Mオルガンという臓器を体内に移植すれば凡人とて

魔法を使う事も可能だ。

魔法ギルドでは科学ギルドと提携でこの臓器のクローン増殖からの移植を行うのだ。

「でも移植手術の成功率は40%くらいなんだよね~」

失敗すれば勿論、死亡。魔法が使える代償としては丁度いいリスクなのか?

Bポッド行きを覚悟で手術を挑む猛者も多い。

まあ戦闘での選択肢のみならず、その後の生活や人生でも選択肢も増えるしなあ。

「俺もさっさと金を貯めて臓器を買うかなあ」

くそ手札の人生だけに金で買えるいい手札は増やさんとな。


尚、今回のパーティの目的だがあるアイテム入手が目的。

そのアイテムを持つ人物が欲しいのは宝石類。

で、そのお方は一々動くのが面倒だという事。

「結果、報酬を出して動く人間を手配するわけだ」

そんなわけでダイソナーエリア内でのルビーやサファイヤ、ダイヤモンドなどの鉱物資源入手が目的だ。

こういう時だけは週一でリスポーンするのは有り難い。

探すのは大変だが素材が枯れるという言葉とは無縁なのだから。

まあモンスターも枯れないが。

で、この即席パーティでの宝石入手。引いてはアイテム交換というわけだ。

その交換アイテムの名はTSポーションと言う。

男女性別切り替えアイテム。

リー君は個人的にこのアイテムが欲しい。

そこである報酬で俺とハルトをこのミッションに勧誘したのだ。

一応、リー君の名誉の為に言うと彼は俺やハルトと違い此方側の人間ではない。

用は魔術的実験というヤツだ。

性別での魔力量及びその効果の増減の確認。

そして女性専用魔法の効能データー入手が目的らしい。

成程、其方の使い方もあるのかと感心した。

子宮という魔力貯蔵庫は元より処女性による質の違う魔力、巫女聖女としての霊媒体質と破邪。

戦闘で女性魔術師が有利な局面は存在するし、そこで変身できるなら盤面のメリットとしては十分だ。

ライダー変身に動物変身。

ドラゴラムが許されるのに女体化は許されないのは確かに解せぬ。

まあ、内容が内容で誤解を受けるといけないので男世帯パーティで挑んだと言う事だ。

決してリー君からの我々への報酬が女性陣に知られたらヤバいものであるという理由では無い。

ケラスス?彼女はデバイス扱いだ。

それにどうせバレるんだし交渉して口止めした方が早い。

ロスカットの見極め能力は俺の得意分野だ。

「任せろ。詳しいんだ俺は」

このクノイチの参戦にハルトもリー君も及び腰である。

まあ初対面のエンカウントでは散々、刺されるわ爆撃されるわで好感度はゼロだな。

「しかしTSかあ」

俺の人生の中で最大の不覚を挙げるなら、やはりアナヒータの性別を確認しておかなかった事だろう。

実は誘拐される前はオンラインRPGでパーティを組んでいた仲だ。

でもコミニケーションはSNSかディスコード系の会話に終始していたしな。

東京でのオフ会では会った瞬間に[リヴァー]に飲まれたし。

再開した時には向こうは既に頭角を現していた。

その上性転換アイテムを入手し性別をファッション化した後だった。

だからハグされればビビる訳だ。

スマン。まだ俺はTSについてはレベルが低いのだ。

まあ、女の子に変身して肉まんを安くオマケしてもらうとか。

ブルマを履いて女子更衣室に忍び込もうとするくらいだろ。

戦闘に活かすとか女の子に変身してゆりんゆりんを楽しむとかは到達してないなあ。


「トロルだ」ハルトの声で我に返る。

下らん事を考えてる間に目的の洞窟へ到着。でも先客ありだ。

まあ洞窟が有れば生き物なら寝ぐらにするわな。

数は1、お供にはぐれゴブリンが4か。

トロルもゴブリンも基本、エンカウントすれば襲い掛かってくる。

こちらを完全に餌扱いだ。

でもね。

「撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけだという名言知らんのか?」

俺はスッとトロルの前に出る。ハルト達はスッと後退。

石斧攻撃を受け止めつつ、コイツをここに釘付け。

どうせ再生能力持ちなんだから後回しだ。

その間にハルト達にゴブリン達の始末は任せよう。

横目でチラリと見るとゴブリン達が俺の脇を抜けていく。

が、その内の1匹が見えない何か押された様に一瞬動きを止める。

リー君のメイジハンド。魔術師のキャントリップ。

俗に言う制限無し魔法だ。

見えない手を作り出す魔術。用は小さい小さい念動力。

せいぜい対象を押す程度だが時間稼ぎとして王道だ。

ケラススがすかさず、動きを止めたゴブリンの眉間に苦無を突き刺す。

「我が主人。ピンチの時は大声で助けを呼んで下さいね」

無視だ。

「いい従者じゃないか」

ハルトはメイスでゴブリンの横っ面をぶん殴りつつ苦笑している。

さらにはシールドを駆使してリー君をうまくスクリーンしている。

玉取ったるとばかりに錆びた短剣でケラススに突っ込むゴブリン。

「はい。ですからワタクシは触らせません」

合気。クルリと一回転して地面に叩きつけられる小鬼。

「ふむ。インストールした古武道も大体慣れて来ました。いい感じです」

リー君はその光景に苦笑。

背を向け逃げ出したゴブリンの背中をメイジハンドで押す。

当然、転ぶ。

それで後方の戦闘は終了だった。

ケラススが逃げ転んだ的の延髄に苦無を。

ハルトはケラススが投げ倒した一体を足踏みで顔面を潰す。

「これで残りはトロルのみ」

AIの指示も確認しながら俺は石斧攻撃を防ぎ続ける。

リー君の詠唱。スリープの魔法だ。

強烈な眠気にトロルが跪く。

本当、支援魔法は便利だよ。マジでメイジがパーティに欲しい。

後は一気!ヒーリングファクターの能力以上のダメージを一度に与える。

俺の正拳突きを顔面に叩き込み、ハルトのメイスが頭蓋骨を砕く。

グロだが即死確定コースだ。


「敵影無し。センサーも問題無しだ」

後は俺とハルトのセンサーで周り確認。エネミーなし。

これで洞窟の中にいるのは俺達のみ。

当初の目的を果たそう。

心得たとばかりにリー君はあぐらをかいて座り込む。

詠唱。幽体離脱系の魔法である。

俺には見えないがエーテル体となり、岩盤の中を捜索するのだ。

予め、この洞窟に鉱石があるのも探索系と占術で確認済みだ。

しばらくの間、うたた寝の様に俯いていたリー君が顔を上げる。

「此処ですね」立ち上がり少し歩いた位置の岩盤を撫でる。

さあ俺達の出番だ。

「エンヤーコーラ」ツルハシで岩盤を砕き突き進む俺とハルト。

パワードアーマーこういう時に便利だ。

欲を言えばゴールドマトック欲しいなあ。

「お目当て発見」ハルトがニンマリと笑う。

赤い鉱石。慎重に丁寧に周りの石ごとくり抜いてリー君に渡す。

クロム混ざりのコランダム。用はルビーである。

うなづくリー君。

後二つ程、こんな感じで洞窟回って鉱石入手だな。

「ハイパーテクノロジーも便利だが、魔法もいいよね」

メイジは当初、一子相伝に近い状態であり弟子も僅かだった。

誰でも使える道具とは違うのだ。

ある意味で彼らが選民意識を持つのも仕方がない。

宮廷魔術師の様に政に関わろうとする輩がいてもおかしくない状況だったらしい。

一部の冒険者からもメイジ達の傲慢さには不満を持つ者もいた。

コレに風穴を開けたのが廃神パーティーの知恵袋にして魔法使いであった人物だ。

当時、この混沌とした魔術世界。

ルーン魔術、アルケミー、カラバ、ギリシャ魔術、ドルイド魔術、陰陽道、その他諸々。

其れ等を魔法ギルドの名の元に統一した人物である。

魔力量も大した事はなく平凡な人物らしい。

ただ彼は二つの能力に秀でていた。

一つはコミニケーションという社交性だ。

廃神という後ろ盾と不満分子の冒険者達、軍にオケアノス運営をと丸め込み魔法ギルドを創設。

彼はそこの初代校長に治まった。

後は多数の民意という言葉に従い魔術師を法律規制しロジスティックを餌に強制加入させていく。

無論、メイジも抵抗するし独立も視野に入れるが閉鎖空間オケアノスではそれも難しい。

それぞれの魔術の違いから薄氷の同盟はできても堅牢な連邦は作れない。

気付けば大半の魔術師達は孤立していた。

各個別に魔術師は抑え込まれ魔法ギルドへの加入を余儀なくされる。

更には剛柔合わせる手管にその奥義を差し出す形となった。

流石に殺人まではエスカレートはしなかったそうだが脅迫、詐欺、賄賂などは当然の様に行われたらしい。

結果、彼とギルドの元にはあらゆる魔術とその最秘奥が集まる事になる。

彼は信じがたい事にそれらのほとんどの解析を完了し新たな魔術を構築したと言うから驚きだ。

「優秀な人材に資金を都合し頭を下げて任せただけですよ」とは校長の談。

謙遜ではなく事実らしい。

金はガンガン払う。責任はすべて持つ。躊躇なく土下座する。

これが彼の持つ二つ目の能力にして最大の魔法だと言う者もいる程だった。

冒険者達もそして敵対していた魔術師達ですら懐柔されたのだから。

そして誕生したこの新しい魔術は恐ろしいものだった。

何しろこの魔術。仕組みを理解せずとも条件さえ満たせば発動するのだ。

統一された魔法はレベル1からレベル7へと統括された。

レベル7魔法を使うならレベル7分の魔力とスペルブック。

それに触媒さえ有れば呪文を唱えるだけで魔法が発動する。

修行も要らなければ、何故それが発動するのもかも理解する必要もない。

スマートフォンの仕組みが分からなくても指を滑らせればアプリが起動する様に。

魔法をデバイスのレベルにまで堕落させたと言う訳だ。

魔法適正がある一般人には朗報だが真剣に神秘を学んで来た者達から見れば冒涜の一言であろう。

名称はモダンマジック。

結果、魔法は創るものと使うものに分かれたと言ってもいい。

揶揄を込めて創るものであるメイジ達は使うものをマジックユーザーと呼んでいる。

多くの冒険者や軍が研究者が魔法を便利に使い始める。

皮肉な事に魔法ギルドはメイジ達の結束する場所と象徴となった。

「まあ、それが狙いだったのかもしれないが」

創るに適したのは魔力炉や資産も資源も豊富な魔法ギルドなのだから。

メイジ達はここでの教育と研究を一つのレゾンデートルとする事になった。

しかしモダン魔術が利便性に高い事は間違い無い。

リー君みたいに護身用にモダンマジックを使うものも多い。

モダンマジックこと近代魔術は方向性があり、ダンジョン探索に特化している。

つまりは攻撃魔法だ。36の魔法が生み出され、内7割は戦闘と破壊、その補助を目的とした魔法である。

ゲーム魔術という俗称で呼ぶものもいる。

まあ、受け入れない魔術師が居るのも当然だろう。

魔術にいくつか深淵あれど未来予知を行い自分にとって都合のいい未来を選択操作し作り出す。

それが大半の魔術の奥義らしい。

それに比べればゲーム魔術は脳筋そのものであろう。

まあ確かに。

「我は破滅と混沌を司る唯一無二の存在に仕える者なり」とか。

「速き風よ。光と共に解放されよ」とか。

「ブーレイ・ブーレイ・ン・デード」

とかの呪文詠唱はカッコいい。やりたい。

けど俺の理想とするメイジはマーリンやストレンジなんだよなあ。

予知で都合のいい未来を選び取る。

その情報で現代から未来を変える。

基本だよね。

それに今回みたいに幽体離脱も応用高いし。

「幸い遭遇戦はあれ一回のみで後はスムーズに事が運んだ」

野営も覚悟していただけにラッキーだね。

依頼そのものはあっさり終わった。

さてリー君は依頼人に宝石を渡しTSポーションを貰う。では我々は?

「ありがとうございます。助かりました」

リー君が満足げに頭を下げる。

「こちらは報酬です」弁えたものでこの場で報酬はいただけるわけだ。

というかこの場以外は無理。

リー君がザックから取り出したのはこれまた水薬。

俺とハルトに3本づつのポーションだ。

それは飲んだ者に透視能力が宿る薬。まあ透けて見える薬である。

使い方?言わせんなよ恥ずかしい。


「で、メンバーの当てはできたの?」

うさぎのダイソナーエリアの冒険から帰ってきた直後の台詞である。

背中のバッグにはポーションが三つ。

浮気した旦那ってこんな気持ちかね?

「ハルト達にも聞いてみたが、中々にね」

よっこらしょとテーブルに腰を下ろとケラススがすかさず茶を入れる。

大丈夫だ。ケラススにはしっかりと口留めもしてある。

ハルト達の助っ人に参加したのも情報収集を理由と話してる。

「空振りが続くよ~」飛鳥が両手で頬杖をついてため息を吐く。

うさぎも飛鳥もメンバー探しは続けているものの芳しくは無い。

同胞の会にも顔を出している様だが人狼族はピラミッド式。

長の力が絶対視されており仲間意識が強い。

基本活動は同一種族での狩猟だ。

人間族と組むうちのメンバー2人の方が少数派と言える。

イカン、結果論で無くてもサボってた俺。

良心がチクチクと痛む。

「近々、ロスベルクにて騎士団の遠征が行われるそうです」

救いの天使はケラススだった。

彼女は素早く三人のカップに追加の茶を注ぐ。

「遠征ねえ」

中世時代と言えば領地内と言えど山賊盗賊なんぞはわんさか出る。

街道警備、領内巡察。騎士や領主の仕事としては当たり前だ。

特に中世欧州は森の海の中に孤島という村々が存在する環境だ。

モンスターがいる世界だと更に、この難度は跳ね上がる。

魔王が加わればルナテイックモード日常茶飯事。

「はい、大々的な人数で恣意行動ですね。ロスベルクからオケアノスまで。

商隊の護衛も兼ねての物資調達及び資材確保でしょうか」

「まあゲートだけで運べる量なんて限度があるし先立つものもいるしねえ」

うさぎが肩を竦める。

ロスベルクの人口は現在、2000人強。都市としての人口ではそれなりだ。

日本の戦国時代風に言うなら1石が1人1年分の食料と聞いた。

領都だけになってしまったが単純にあの姫様は2000石の大名。

いや規模で言うと豪族や国人衆という風になるな。

朝鮮出兵の際には豊臣秀吉の命で九州の大名は100石で5人の兵がノルマだったという。

「つまりロスベルクは100人ほどの総兵力があると推定できる」

先の戦いで王と王妃は戦死。

騎士団を守る為に殿を勤めて多くの騎士や兵を逃したらしい。

一部ではオケアノスから移民も受け入れているものの、文化、文明レベルの違いもある。

状況は芳しくは無い。

4姉妹と廃神。

そしてその知恵袋達が発足させた都市議員と都市法に関しても何処まで理解しているか。

いや受け入れてもらえるかだろう。

封建制度に加えて定価という概念もない経済。

啓蒙思想なんぞ誕生してもいない。

宗教は幅を利かせ文盲率は70%以上だ。

水は井戸から、移動は馬か足、調理は焚火、食の保存技術は低い、病院なし。

正に中世の世界だ。

紙幣という概念どころか、電気が存在しない世界。

これでどの様に電子マネーという存在を伝えればよいのだろう?

この様な状況なのでロスベルクの立ち位置は完全に決まってはいないらしい。

現在は独立戦争後の某ジオン共和国よろしく期限付きの自治権という形を取っている。

「まあ…何か有れば武力制圧も視野に入れてそうだけどね」

一部の議員や軍はそう考えている様だが4姉妹は人類奉仕を基本コードにしている。

一歩間違えば植民地政策にもなる考え方には賛同しない。

時間をかけて人と文化、金の移動を行う事で最終的な融合を目指す考えの様だ。

「この遠征で少しでも何かが伝わればいいんだけどな」

ああ成程、ケラススの考えが見えた。

「彼らから騎士候補をスカウトしてくると言うのはどうでしょう?

ある意味で彼らは新城様のお弟子様達であり、皆様との連携も相性がいいと思われます。

魔法の剣や単分子ブレード。パワードスーツを貸し出せばアタッカーとしては十分かと」

「でも騎士って自分の王様を守るものじゃないの?」飛鳥が首を傾げる。

「いや、確かその時代の宮廷騎士は独立行動権を持っているはずだ」

封建時代の騎士なら自分の君主を何人も持つ者いたし傭兵活動を行っていたはずだ。

領土に閉じこもる者もいれば、個人で十字軍に参加する者も居る。

新城さんにも一言ことわりを入れて口利きを頼めば可能かも。

他国と戦争しているわけでもなければ領土争いもない。

騎士の出番も少ないはずだ。

長期間の行動は可能だし常に2、3人とパイプを持てば人数的にも不足はない。

前例という意味でも悪くないかも。

文化と人材交流は新城さんも望むところであろう。

「互いにノウハウも得られるはずだ」

此処はケラススに便乗だ。

「建前上は乗りかかった船だけに護衛役を買って出て目ぼしい人材を見つけて青田買い。

それから新城さんの許可とパイプを用いてドラフト会議だ」

「やってる見る価値はあるわね」

うさぎがニヤリと笑う。

飛鳥は基本、うさぎに意見を合わせる。

意外といけるんじゃねえ。ナイスだケラスス。

「では明日にでも新城さんに話を通すとしますか」

終わり!閉廷!…以上!皆解散!

「流石はクノイチ。諜報活動はお手の物だ」

「はい。お任せください」ケラススはスカートの裾を摘み一礼。

うん。今日だけはそのけしからんポーズも許しちゃう。

しかし俺はその代償を払うことになる。

ケラススから更なるレアものの戦闘用メイド服をせがまれた。

メイドが戦う以上は戦闘メイド服は必要だ。

それは男のロマンだからだ。

問題は何故、くのいちのお前が戦闘メイド服を装備したがるかと言うことだ

黒装束とチャクラバンドでダメージディーラー。

速さと空蝉の術で忍者タンクをしてくれてもいいんだぞ。

「メイドとして頑張ろうとしている人形をご主人様がいじめます~」

「嘘泣きやめい」

コイツは何故、俺の財布に負担をかけるのだ。

どう言うプログラムが働いているんだ?

まあ元々、勝ち目の無い勝負だ。くだんのポーションの件もある。

ロスカット、狐の酸っぱい葡萄。全面降伏。

「またもメイドロボ購入資金がすり減っていく・・・」

ぼやきがでる。

なお、先ほどのTSによる魔術強化のオチ。

リー君は変化完了と同時に月のものがやって来たらしい。

「怠い、吐き気、微熱。血がドバドバ。その他諸々。二度と御免です」

とはリー君の言。

そしてハルトパーティの牡丹ちゃんは。

「これはいいデス。男の皆さんには女性の大変さを身を持って理解して貰えます」

暫くの間、アマゾネス達の間では各パーティーの男性メンバーに半ば強引にTS薬を飲ませるのが

流行したとかしないとか。

なお、TS系アイテムもこのイベント以降、一気に高値になったのは言うまでもない。

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