源典回帰
この日記の最後に、兄様への全てを綴っておく。
誰にも読まれないだろう。
でも、それでも構わない。
兄様。
兄様は、別の世界から来たんだね。
いいかい兄様。
別の世界から何かを持ってくるってことは、それだけじゃ済まないんだよ。
植物を考えてごらん?
根を掘り返したら、土が着いてくるだろう?
植え替えようとしたら、先の土壌を整えるだろう?
そういうことさ。
兄様が、贋作を連れてきたんだ。
あるいは、兄様が来るから、『やつら』が先に来たんだ。
でも、別の世界のものは、すんなり世界に入ってこれない。
同じ特性のものが居たら、存在が重なってしまうからね。
だからだよ。
だから贋作になったんだ。
あいつらは自分を保つために、偽物になるしかなかったんだ。
そして、あいつらに通常兵器は通じない。
偽物だからね。
偽物に本物は通じない。
世界がちがうから。
やつらは寺院を襲わない。洗礼した攻撃も通じる。
何故だか解るかい?
相手が神だからだ。
神はね。
偽物でも本物でもないんだ。
信じる者が居れば、信じない者が居れば、どちらの属性にもなる。
だから、あいつらには通じる。
世界ってのは、そんなものさ。
そうそう、世界と言えば、兄様の世界には、厄介なものもあったね。
魔法さ。
魔法なんか、この世界に無い。
で、持って来られた魔法はどうなったか。
贋作に伝わり、特殊能力になった。
他に濃縮された魔力が、僕に宿った。
僕は考えたよ。
この魔法を身近なものに与えたら、家族を守れるんじゃないかって。
そして、オリジナルが生まれたんだ。
どうして、僕がこんなこと知っているかって?
どうして、人では僕だけに魔力が宿ったと思う?
答えは簡単さ。
僕は、まさに『この世界のあなた』なんだ。
兄様は強いね。
ただの人じゃないだろう。
あなたがこの世界に来たから。
僕は、あなたの贋作になっちゃったじゃないか。
正直、混乱したよ。
焦ったよ。
僕は、この世界じゃ本物なのに。
兄様を見た瞬間、解ってしまったんだ。
ああ、この人が本物か。ってね。
ずるいよ。
あなたが来て、僕は偽物になってしまった。
贋作が現れ、世界は荒れ果てる。
自分の『本物』が、日に日に家族に浸透していく。
そこで、僕は思った。
本物が居てくれるなら、僕は僕に出来ることをやろう。
思いついたことを実行に移した。
残った魔力全てを手に集め、日記を書き始めたんだ。
内容は知っての通り、僕の悪夢さ。
勘違いしてるみたいだから言っておくけど。
勘違いさせてあげたんだよ?
意味が解るかい?
僕が、悪夢の日記を書いたから贋作が現れたんじゃないんだよ?
贋作は初めから居たんだ。
じゃあ、僕が贋作が出てくる悪夢を書いたらどうなるか。
僕はね。
贋作を、僕の頭に閉じ込めていったんだ。
もし、僕が死んだら。
僕が居なかったことになれば。
贋作は、消える。
僕はね。
全てを僕の夢にして。
僕ごと贋作を消そうとしたんだ。
だから、全てを僕のせいになるよう演技した。
一世一代の大博打さ。
でも、何度も何度も考えたんだけど。
やっぱり、自分じゃ死ぬ勇気が無くてさ。
だから、暗示を持つ強化に、頑張ってもらおうと思った。
僕は、夢の中で双子に会ったんだ。
その時、思った。
こいつら使える、ってね。
僕は、いずれ死ぬだろう。
勘違いしないで欲しい。
別に恨んでいる訳じゃない。
懺悔して欲しいとも思っていない。
ただ一言、伝えたかった。
兄さま。
どうして来たんだ。
あなたさえ、来なければ。
この世界は、人々は、死ななかったのに。




