尊武神皇
いくらの敵を倒したかも解らぬが、もう力が出ん。変化と再生が追いつかぬ。
刹那、頭の後ろを殴られた。
「なんの!」
足を杭に変え、地面に食い込ませる。
「小夜子に叩かれたことに比べれば、このようなもの!」
両腕を銃に変え、骨を変えた弾丸を叩き出す。
「負けぬ!」
贋作の数はすさまじく、弾丸では止められない。
「まだまだぁ!」
両腕を薙刀に変え、思い切り振り回す。
「うわあぁ!」
壁のように迫り来る異形どもを、何体も何体も切り裂く。
ギィと言う奇妙な叫びを聞き足元を見ると、地面から小さな虫が這い出ていた。
「くっ!」
そのまま爆発し、身体が吹き飛ばされた。
飛ばされた足を見ると、膝から下が無くなっている。
「おのれえ!」
叫んだ顔面を殴打され、ひれ伏した。
ゼロ、妾はここまでのようじゃ。
妾は、死ぬのか?
自分の中の贋作が首をもたげた。
「大丈夫、大丈夫」
言葉をつぶやき、その頭を押さえ込む。
末期の時くらい、好きにさせよ。
押さえ込んだら押さえ込んだで、とたんに怖くなってきた。
一人になるのが怖い。
いやじゃ、もう一人はいやじゃ。
「ゼロ! どこにおる! ゼロ!」
早う来てくれ、時間がない。
「ゼロ!」
「此処に!」
すぐ前に、ゼロが降り立った。
「下がれ出来損ない!」
贋作の間をかいくぐり、銃を乱射する。舞うように攻撃を避け、弾丸を叩き込み、数秒で辺りを何もない空間にした。
「ゼ、ゼロ……」
「陛下!」
妾を抱きかかえ、優しく微笑む。
ああ……やはりゼロは美しい。
「わ、妾は頑張ったぞ」
「解っております」
微笑いながら泣いておる。おかしいやつじゃ。
「ずいぶん遠回りしてしもうた」
「はい」
「妾は、良い王になれたかな?」
「ええ、立派ですとも」
「それは僥倖、出向いたかいがあった」
笑うたつもりじゃが、上手くできておるだろうか。
顔に力が入らぬ。視界がぼやけて、なにも見えぬ。
「陛下!」
いや、なにか天から人影が見える。
「ああ、父様……母さ……ま……」
待っておってくれたのか。
やっと会えた。
寂しくはない。
これからは、ずっと二人が一緒じゃ。




