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これから世界が死んでいきます  作者: 狐面
生きた人々
44/59

行平 康太:漆

 自分と慎吾(しんご)姫桜(ひめざくら)――三人で、百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)の森に立っている。


「ふんふんふー」

「ノリノリですね」

「久しぶりの遠足だもんねえ」

「違います」


 姫桜を見ていると、本当に百鬼夜行か疑いたくなるが、周囲の森はそれを否定していた。

 彼女が源典(げんてん)に触れる時、自分達は彼女に触れる。その瞬間、風景は暗い森へと変化したのだ。(ねじ)れた枝が()(しげ)り、木漏(こも)れ日の差し込みすら許さない。もっと遅いかと思っていた。自分が受けてから一年も()っていない。姫桜は、まだ()()の最中なのだ。


「コータの時は私用で抜けたんだから、今回はしっかり働きなよ?」


 姫桜が信悟の脇腹を(つつ)く。


「あう」


 彼は眼鏡を中指で持ち上げ、言葉を返した。


「あ、当たり前です」

「……そう言えば、副隊長はどうしたんだ?」

「彼女は別の役目です」

「副隊長なのに、部下を危険な目に遭わせて良いのか?」

誤解(ごかい)無いよう言っておきますが、重要な役目を(にな)っています。まとめた終息論(データ)を、本部へ報告して下さっているのです」

「それって、隊長の役目じゃないのか?」


 自分の言葉に、姫桜は胸を張る。


「本部なんて行きません!」

「えー」

「迷うから!」

「えぇ……?」

「それに彼女だって大変ですし、ね」

「何?」

「彼女も対峙する者(オリジナル)、来年は彼女が補助です」


 副隊長までオリジナルだったのか。普段は連絡係とは言え、馬鹿に出来ないな。


「って、それじゃ副隊長は一年ごと大変じゃないか」


 確か、今オリジナルは()()()()()


「そうなんですよ。姫桜(たいちょうさん)にも、もっと考えて貰わないと」

「い! や!」


 さすが我らが姫君、(ひど)暴君(ぼうくん)っぷり。


「……それで、今回は誰を補助するんですか?」

「今回こそ、彼女達ですよ」

「誰?」

「こないだ会ったでしょう?」


 ああ、先日の双子か。

 あの二人、百鬼夜行の日々で姫桜に会いに来ていたとは、精神力が強いな。


「さて、ぼちぼち行きますぞ」

「また意味不明なキャラクターになって……誰です? それ?」


 その言葉に、姫桜が固まった。


「ああ、(あま)り深く考えないで」


 今度は、その言葉に目を見開いて口を広げる。


「想定外でした、みたいな顔は止めて下さい」


 彼女が立つ木の(かげ)から、数メートルはあるムカデが()い出てきた。


「危ない!」


 銃声が響き、ムカデが消え去る。

 いつの間にか、信悟が両手に銃を持っていた。


「さっさと行きますよ」


 自分も刀を抜く。


「え?」


 服の腰元を引っ張られて横を見ると、隊長殿が上目使いで自分を見ていた。


「コータ、守ってね」


 か、可愛い。

 在りし日の妹のようだ。


「はい!」


 姫桜の指示で信悟が前衛、自分は後衛となった。

 巨大な(わに)の口をバック転して避け、回転しながら銃撃――大蛇の噛み付きを身を(かが)めて回避し、そのまま前後左右を見ずに銃撃――人の顔が浮かんだゴキブリの軍勢を、連続して正確に銃撃――袖口(そでぐち)からカートリッジをスライドさせ、一瞬でリロード。

 先行した信悟は、(またた)く間に贋作(がんさく)を撃ち消していく。


「凄いな」

「ダメだなあ、手え抜いてるよ」

「……あれで?」


 後衛は(ひま)仕方(しかた)無く、ついつい口数が増えてしまう。

 それでも姫桜と合わせ、迫る敵を防御し、足止めし、打ち倒した。

 

 しばらく進んで行くと、遠くに異様な光景が見えた。


 ()()()()()()()()()()


「あ、あれは?」


 前を進んでいた信悟が割って入り、あっという間に殲滅(せんめつ)した。


「ありゃりゃ、出番なかったね」


 横で姫桜が呟く。


 中央には、二人の女性が立っていた。


「姫桜様」

「ご苦労様です」


 礼する二人に、姫桜も頭を下げる。


「試験終了だね、おめでとう」


 周囲は、贋作の痕跡すら消えている。

 こうして、大した事件も無く、彼女達の百鬼夜行は終わった。

 神皇が名付けた彼女達の二つ名は――。


 盤上遊戯。

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