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これから世界が死んでいきます  作者: 狐面
生きた人々
43/59

無名

 火が消えた神狩(かがり)を見ると、表皮が炭化している神崩(かみなだ)に反し、身体は燃えていなかった。(ふた)()多層回路(たそうかいろ)の能力――炎を吐く前に、神崩を冷気でコーティングしたな。響子(きょうこ)は目覚めたか。


火炎砲(かえんほう)、神狩を連れて下がれ! 傷口を凍らせて止血しろ!」


 ()ぐに響子と小夜子(さよこ)が駆け寄る。

 神狩はどうなるか(わか)らんが、(つかさ)は助からん。

 まだ二人のコーティングは無理だったか。

 司、じき()くから奥方(おくがた)とゆっくりして()てくれ。


「貴様、何のつもりだ」


 目の前の(まだら)を見る。


「言ったでしょう? 時が来たんですよ」

「お前は、()()()()()()()?」

「初めから死ぬつもりです。ここまで観客が増えるとは、思っていませんでしたけど」


 周りの風景が(かす)み、白衣の人間が囲んだ。

 その数、大よそ百人――神崩研究所の所員達だ。みな青白い顔で、我々を(にら)んでいる。


「恨めしそうですね」


 我々は、手に持った刀を握り締めた。


下衆(げす)な能力だ」

「それじゃあ、オーダー追加で」


 斑が指を鳴らすと、さらに軍服が囲んだ。

 今度は、かつての部下達だった。


「一対二百、ってとこですかね」


 振り向き、近寄って来た白衣を切り捨てる。

 切られた白衣は、何も無かったように()き消えた。


「この程度……お……おれを……俺を()めるな!」

「へえ……神崩や神狩を見て、内なる贋作(がんさく)を振り切りましたか」

「来い下郎(げろう)……(ちり)に変えてくれる」

 

 メスや瓦礫(がれき)や、どんな武器を持ったところで、幻は幻だ。


「百だろうが千だろうが、仮令(たとえ)万であろうが――切り捨てるのみ」


 迫る弾丸を(かわ)し、刀で()らし、有象無象(うぞうむぞう)に捕まれようが、恨み言を吐かれようが、切って切って切りまくった。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」



 十数分の(のち)、最後の一人を切り捨てる。


「魂の込もっていない幻影などで、俺を殺せると思ったか?」

「……降参(こうさん)ですね」


 目の前で、斑は両手を広げた。


「僕も退場しましょう」

「貴様」

「神崩を始末できた、それだけで十分です」


 手に持った刀で、首を横に()いだ。


 瓦礫(がれき)は消え、何も無い荒野が広がっている。

 本部と連絡を取る響子達を(ほう)り、倒れている神崩を抱き抱えた。


「そ、総一郎……」


 もはや瀕死(ひんし)(ため)か、時を数える(くせ)は出ない。


「司……まだ、こんな道化をそう呼んでくれるか」

「どうやら、私達夫婦は此処(ここ)までのようだ。付き合わせて悪かった」

「俺だって、部下の復讐に付き合わせた」

「お互い様だな」

「ああ、それに……」

「それに?」

「俺達は友達じゃないか」

「そうだ……な……」


 寂しそうに笑い、親友は先立った。


「く、そ……」


 時間が無い。


「くそ!」


 幻影は時など関係無いか……攻撃が有効とは、(あなど)った。


「司、俺は間に合うか?」


 俺の脇腹から、血が(したた)っている。

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