神狩 秀遥:漆
腹には、神崩の腕が突き刺さっている。見て判る致命傷だ。
「神狩か……チッ……同類が、邪魔をするな」
「馬鹿にするなよ……」
源典回帰に興味が有った。
――だが本当は、そんなことの為に来ていない。
世を狂わせた源典回帰に、私の生き様を見せに来た。
抗う人間の姿を、見せに来たのだ。
「私はな、神崩……弱く、汚く、自分でも愚かな人間だと思う」
先日、居なくなった妻の行方を調べてみた。
彼女は実家に戻り、私を陰からサポートしていた。
もっと早く気付くべきだった。
国から支援を受けていない自分が、研究を続けられていた事に。彼女の実家が情報会社を運営していた御蔭で、私の研究が神皇の目に留まったのだと言う事に。
礼を言おうにも、彼女は既に病死していた。
私は愚かだ。
だが。
「予測すると聞いたが、出来なかったろう? 私が娘を庇う事など」
「チッ……」
これが、私とお前の違いだ。
「私は愚かだが、人でなしでは無い!」
子を捨てたお前に、解るものか。
「私を」
子を救うのは、親の務めだ。
「私を! 貴様と一緒にするな!」
突き刺さった神崩の腕を掴んだ。
「響子!吹け!」
「オヤジ」
「私ごと燃やせ!」
長くは保たない。
内臓を損傷した所為か、口から血を吐いた。
「はやく……しろ!」
「オ、オヤジ……すまネェ……」
「言うな!」
私は、お前に謝罪を言われるような人間では無い。
寧ろ謝罪を言えぬまま逝く私こそ、お前に謝るべきなのだ。
こんな事しか出来ない。
私に何か有っても、自身を護る力を付けておく。
その為、他を差し置いても真っ先に、娘のお前へ強化を施した。
結果として広告塔になってしまい、随分と負担を掛けてしまった。
挙句、お前の母すら救えなかった。
こんな行為は、償いにもならん。
「響子ォ!」
私は、神崩ごと紅蓮の炎に包まれた。
間に合わせの罪滅ぼしを、どうか許してくれ。
響子――私の大切な娘、愛している。




