国美夜姫
寝所で体を横たえると、いつも浮かぶ情景がある。
父上や母上と神崩へ赴いた際、目に入った光景。
真っ白い服を着せられ、一人の人間が椅子に縛られておった。
何処を見ているか判らぬほど薄く開かれた目で、生きておるのかすら怪しい。
ただ、美しかった。
男か女かも判らぬ中性的な顔立ちで、ただひたすらに美しい。物言わぬ姿が、より虚ろな印象を引き立たせ、異様な光景を強く心に刻まれた。皇族である妾が、神々しささえ感じてしもうた。
あの生きておるのか死んでおるのか判らぬ者、ゼロと言うたか。
また会うてみたい。
ふと人の気配を感じ、目を開いた。
何処から入ったのか、黒い影が立っておる。
「……貴様、何時から其処におった?」
「望みを叶えに来た」
「望み? 妾のか?」
「如何する」
「貴様如きが妾の望みを?」
「ある部隊を用意して欲しい」
「望みを叶えてくれるなら、容易い事じゃ。父様に頼んでみよう」
「……その父君だが、近々命を落とす」
「なに?」
「母君と一緒に」
「不吉な事を申すな」
「それから、もう一つだけ条件がある」
「何じゃ?」
――目を覚ますと、黒い影は消えていた。
夢か。
奇妙な夢じゃ。
しかし半月と経たぬうち、夢は現実となった。
父様と母様は、事故に遭い命を落としてしまった。こんな事なら、あのような夢など見とうなかった。
されど約束は約束、果たさねば望みは叶わぬ。
妾は即位し、尊武神皇となった。
初仕事は、約束通り部隊の設立じゃ。
ゼロがそうであったように、黒衣の部隊としよう。
名は、そうさな――黒衣の嵐――さしずめ黒嵐。




