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これから世界が死んでいきます  作者: 狐面
生きる人々
37/59

神狩 秀遥:陸

 草薙(くさか)特佐からの連絡で、私は資料を広げた。


「後で詳細を連絡するが、問題無い」

「そうですか」


 受話器を置き、資料を読み返す。


 彼に資料を送るつもりは無い。

 この話は、此処(ここ)で止(とど)めておくべきだ。


 廃墟の贋作(がんさく)――話を聞いた者の精神に寄生し、これを捕える。被害は出ているが、体験した者から聞かなければ伝染しない。話す者が無くなれば姿を消すだろう。


 見ザルと一緒に。


 言わザルとの共鳴で精神が崩壊した見ザルは、響子(きょうこ)によって確保――護送の途中で行方不明になった。彼女は護送車の運転手と、見慣れない廃墟について言葉を交(か)わしたらしい。

 数日後、護送車の運転手も廃墟を見たと同僚に話した。その同僚も廃墟を見たと、今度は複数の人間に話した。


 其処(そこ)から話は広まった。


 何(いず)れも共通した目撃談が有る。

 テープで巻かれた女が居(い)たそうだ。 

 響子からの話で、私は思い当たった。

 言わザル用にしか拘束具を用意して無かったので、仕方(しかた)無く、その場に在ったガムテープでグルグル巻きにしたそうだ……見ザルを。

 見ザルは、ゴーグルをリミッターとする、見つめ合った者を石に変える能力者だ。

 拘束する段階で目を損傷してしまい、能力は失(うしな)われている。

 杖も失(な)くしている。

 ふらふらと、その廃墟を彷徨(さまよ)っているのだろう。

 仲間――言わザルと聞かザルが、同じ廃墟に居るのだと信じて。


「哀(あわ)れな」


 私は、ゆっくりと資料を閉じた。


 しかし、特佐は気になる事を言っていたな。

 どうやら、オリジナルの中に『斑(まだら)』という人物が居るらしい。それが『創(つく)り出したのかもしれない』とも。


 待て、斑だと?

 神崩(かみなだ)の生き残りで見た名だな。

 現在は行方不明だ。

 贋作を創るとは、源典回帰(げんてんかいき)め。

 何処(どこ)に居る。


 神皇(しんのう)との喧嘩(けんか)で後から話したが、小夜子(さよこ)君は、黒嵐(こくらん)の参謀から情報を引き出せなかったそうだ。それどころか詳細を聞こうとしても、「言えません」の一点張りだ。軍属とは言え一般人だから、参謀相手では荷が重かったのだろう。何より、あの強さに責めれる私では無い。


 と、其処(そこ)で再び受話器が音を立てた。


「はい」

「ああ、神狩博士ですか? 桔梗(ききょう)ですけど」

「さ、小夜子君、どうしたんだ?」


 当人(とうにん)からの連絡で、私の声は少し上ずった。


「お願いがあるんですよ」

「何だね?」

「写真を撮って下さい」

「写真?」

「集合写真です、撮って下さい」

「そんな物、一体どうするんだ?」

「記念ですよ、記念」

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