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これから世界が死んでいきます  作者: 狐面
生きる人々
30/59

神狩 響子:伍

 (れい)のヤツ、いきなり訪ねたらビビっかな。


 オヤジは神皇(しんのう)のトコ行ったし、小夜子(さよこ)はアネキんトコ行った。非番のオレは、にっくき時計屋を放置して、無名(むみょう)ならぬ零の担当。


 しかし思い返してみたら、零ン()って行ったコト無くネェか?


 互いに広告塔だった所為(せい)か、家ナンざ行かなくても前線で引っ切り無しに会ってたからな。生き地獄みてえな戦場を一緒に駆け抜けて、夜になったら朝まで飲み明かしたモンだ。 

 そんな零が、いきなり戦場に来なくなっちまった。思えば、アレが黒嵐(こくらん)()いた時なンかね。他にダチも()ネェし。ぶっちゃけ、かなり寂しい。からかわれるから、アイツにゃ言わネェけど。

 やべ、久しぶりに会えると思ったら、ニヤケ顔が止まんネェよ。人が見たら、ぜってえ変人に思われる。


「っと、ココだったかな」


 門を抜けて屋敷の前に立ち、軽くノック。


「零?」


 フツーにノック。


「おーい」


 全力でノック。


「居るー?」


 シカトか?


「居ないのかー?」


 フン。

 ナンだよ、せっかく来てやったのに。


 ガマン出来ネェから、扉に触れてみた。


「ン?」


 カギ掛かってネェぞ。


 中を(のぞ)き込んだら。


「エッ?」


 無数の腕に(つか)まれた。


「げっ……ちょっ……待てや……キモ……」


 引きずり込まれながら、沢山の笑い声が聞こえる。

 最近、ロクな目に合ってネェ。

 黒嵐ナンざ辞めたろか、関係ネェけど。



 いつの間にか、オレは玄関ホールに突っ立ってた。

 我に返って身体を見回すと、腕は消えてやがる。


 ナンだ、今のは。 


「……はー。しかしスゲェな、コリャ」


 外見はちょっと大きいくれえだったけど、中は異常に広い。

 ホールを抱き抱えるように、湾曲(わんきょく)した階段が二つ。二階には左右と奥に、先が見えないくらいまでドアが並んでやがる。


「あなたは、だあれ?」


 フイに声がして、咄嗟(とっさ)に身構えた。

 十歳くらいのガキが、いきなり目の前に立ってる。

 長い髪を真ん中でジグザグに左右へと分け、二つに束ねている。皮製の硬質な服には、いくつも鎖が巻かれていた。


 そういや、零はメイドと二人暮らしだって言ってたな。

 これメイド?

 いやいや、有り得ネェっつーの。

 メイドを(はら)ました?

 零……殺すぞ。


「だあれ?」

「お、おじょーちゃん。ナニモン?」

「……タガエ」

「いやいや、名前じゃねくてね」

「タガエだよ?」


 やりづれえ。 


 作った笑顔で必死に対応する。笑いは引き()ってンだろうがな。


「タガエちゃんだけどさ、ココでナニしてンのかな?」

「……ねえ、パズル好き?」


 ハナシ聞けや!


「パ、パズル? キライじゃネェけど」

「パズルに()()()()()()()?」


 背筋に怖気(おぞけ)を感じ、後ろへ飛び退()いた。

 目の前の空間に、マス目が浮かぶ。

 浮かんだマスはグチャグチャに入れ替わり、景色が歪んだ。


「テメー、ナニモンだ」

「だからタガエだよ」


 コイツ、空間を互い違いに組み替える能力者か。


「姫が、そう呼んだんだ」


 姫……神皇か!

 この年で(ふた)()持ってやがるとは、ますますナニモンだ?


「なあ。パズル止めてさ、他のモンで遊ぼうゼ」

「なんで? パズル楽しいよ? いやだよ」


 コイツ、会話が通じネェ。破壊型みてえな暴力的思考だ。死霊(しりょう)かと思ったが、死んだら能力を失うしな。

 だとすりゃ一つだ――コイツの精神は、贋作(がんさく)にかなり近い。


「ワリイな、タガエちゃん。今日は帰るわ」


 ダッシュで逃げた。

 あのまま戦ってたら、きっとどっちか死ンでたわ。流石(さすが)に、零んトコに住んでるガキとやり合うつもりはネェ――しかし、アイツはナニモンだって、零に問い(ただ)さなきゃな。

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