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これから世界が死んでいきます  作者: 狐面
序章
1/59

鴉

 部屋には男女がいた。

 四畳程度(ていど)の室内には何本かの蝋燭(ろうそく)が焚(た)かれ、薄暗く照らしている。床には幾何学的(きかがくてき)な円が描かれており、中心に黒衣の男が立っていた。そして円から外れ、男性と向かい合って女性が立っている。


「本当に、良いんだね?」


 女の言葉に男が頷(うなず)く。音の無い返事をどうにか呑(の)み込もうと、女は喉(のど)に手を触れた。


「……いくよ」


 暫(しば)しの無言に続き、女は奇妙な言葉を紡(つむ)ぎ始める。


「さようなら」


 円から光が溢(あふ)れ出す。


「さようなら、師匠」


 女は構わず言葉を続ける。


「お元気で」


 言葉を終えた女は、唇を噛む。


「もう喋らないで」


 男が咆哮(ほうこう)した。だが、その声は光の壁に遮断され、女に届かない。

 そのまま光は集束し、男と共に消えた。


 男が消えた後、女は呟(つぶや)く。


「もう帰って来れないのに」


 彼女の頬(ほお)を、一筋の涙が伝った。


「バカ……」


 女は蝋燭を吹き消し、その場に蹲(うずくま)る。


「帰って来いよお……」

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