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チート勇者の異世界冒険記  作者: 松竹梅
第一章 消える封印見ゆる真実
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第十五話 学園生活12 魔装の限界

「こんなんで驚くなよ。まだまだ序の口だぜ?」


 魔王は神鬼のその言葉に、一抹の不安を感じたが、すぐに表情を取り繕った。


「ふむ。確かにお主のオーラの扱いには感服した。じゃがの、オーラ如きで我の使う『幻惑』に勝とうとは、笑止千万なりっ!!」


 魔王はそう叫ぶと、また神鬼に対して突撃してきた。


 ただし、今まさに槍が迫ってきているという状況で、神鬼は目を瞑っていた(・・・・・・)


「魔王さんよぉ、もうその技、見飽きたわ(・・・・・)


 神鬼は目を瞑ったまま、ゆっくりと手を前に突き出した。


 すると、先ほどまで違うところにあった槍を、神鬼は槍の穂先のすぐ後ろを、素手で掴んでいた。


 その行動に、魔王も驚きを隠すことができなかった。


「なんと!!!お主今、どうやって我の槍が現れるところを察した?!」


「簡単さ。お前の行っているその幻術、元に戻す瞬間ほんの少しだが、空間に揺らぎが生じてる。俺はそこを見たんだ」


しかし、神鬼が言うほどこの幻術、甘くはないはずなのである。


例えば、目の前に縦15m、横20m程の大きさの絵画があり、そこに砂粒よりも小さな虫がいたとして、普通、それに気づけるだろうか?

ましてや、それがいつの間にか移動していたり、 背景の色ととても似ていたりしていても、瞬時に気づくことができるだろうか?


しかし、今神鬼が行った事は、それとほぼ同等の行為なのである。

空間の揺らぎと言っても、人の視界はとても広く、揺らいだ所は背後にある景色の色と全く変わらない。

 さらに、その揺らぐ場所は一定ではなく、魔王も移動しているため果てしなく困難を極める。

 そして、空間の揺らぎと言っているが、その揺らぎの大きさはわずか5mmほどしかない。

 それも、揺らぎが起きてから槍が突き出されてくるまでの時間は、たった1秒ほどである。


そんな小さな変化に気づくことができ、なおかつつかみ取ることのできる神鬼は、まさしく人外レベルの動体視力と反射神経を持っていると言えるだろう。


「さぁ。これでお前は俺に、あの術を使った攻撃はできなくなった。どうする?降参でもするか?それとも、まだ隠している力でも有ったりするか?」


神鬼の言葉に魔王は歯嚙みし、ゆっくりと立ち上がった。


「良かろう・・・そんなに見たいのであらば、見してやろう。我が魔装の『限界』を!!」


魔王が叫ぶと、辺り一面に黒く、濃い霧のようなものが立ち込め始めた。


「なんだこれ・・・前が見えずれぇ・・・!!??」


神鬼はその視界の悪さを不快に思っていたが、少しづつ前に見えてきた光景に、思わず息を呑んだ。


「なんで・・・なんで、あの記憶が・・・??!!」


神鬼が戸惑っていると、何処からか声が聞こえてきた。


『フッフッフッ・・・。それこそが、我が魔装の最終奥義、【夢幻世界(むげんせかい)】よ。この術をくらったものは、発狂して廃人になる者しか見ておらんなぁ。はっはっはっはっ!!』


魔王は今度こそ勝利を確信し、高らかに宣言した。


ーー【魔装・ラスト】の最終奥義、【夢幻世界(むげんせかい)】、それは魔王の言うように、対象者が持っている『一番辛い記憶』を掘り起こさせる術なのである。

故に、この術をくらったが最後、恐怖や恐れという言葉とはけた違いの『絶望』を、何度も何度も繰り返されることになる。


 なので、魔王もこの戦いに終わりが訪れる・・・そう思っていた。


 しかし、神鬼からは倒れる気配もせず、絶望の記憶に対する叫び声や、苦しみの声も聞こえてこない。

 不審に思った魔王は少しづつ、身構えた状態のまま神鬼に近づいて行った。そして、霧のなかに神鬼と思わしき人影を見つけた。


 しかし、魔王が見つけた神鬼は、先ほどまでの神鬼とは違っていた。


********************


「なに?何なのこの霧・・・?」


 不安に思った白河が、疑問の声を漏らした。


「わからない・・・。ただいえるのは、この霧は魔王の力で出されたもので、ジン君はこの霧の中にいるって事だけね」


 多香美は辺りの状況を確認した後、白河の発した疑問に答えた。


「見て!霧が晴れてきた!!」


 天海の言葉に、みんな一斉に霧が晴れ始めたところを見た。そこには魔王がいた。みんなして落胆の表情を浮かべたが、晴れ始めてきたために薄くなってきた霧を見ていると、少しづつ、神鬼らしきシルエットが見えてきた。そこにいた全員(魔王は除く)が歓喜の声を、あげようとした。


 しかし、そこにいたのはまさしく『悪鬼羅刹』と言われるような、禍々しい、漆黒のオーラを持った神鬼であった。


「ッッ!まさか、兄様!!!」


 優里だけはそのオーラの色の原因を知っていたのか、駆け出そうとする。しかし、そのオーラの強烈な威圧感(プレッシャー)によって、駆け寄ることを躊躇う結果となった。


「兄様・・・まさか、さっきの霧は、兄様にまたあれを体験させたというの・・・?」


 原因を完全に突き止めた様子の優里は、このような状態になっている神鬼を止めることのできない自分に、無力感を感じていた。


 そんな優里には全く気付かない様子の神鬼は、ゆっくりと、ゆっくりと、魔王へと足を進めていった。


「お主・・・オーラの色がそんなになるほどまでの『絶望』とは。いったい、お主は何を経験したというのだ?」


「教えてやんねぇよ。この記憶は・・・あの出来事だけは、絶対に忘れちゃいけねぇけど、一番思い出したくねぇ記憶だったんだからよ・・・」


 神鬼はそういうと、スッと右腕を前に出した。


 その瞬間、神鬼の周りにあった漆黒のオーラが何かに変質していった。


「まさか、お主っ!?」


「あぁ。あの記憶をしっかりと見せられたせいで、使えるようになっちまったよ」


 魔王が驚いたのは、変質したオーラが移動し始めた時だった。


 その変質したオーラは、神鬼の体に纏わりはじめ、やがて、気体のようなもやもや(・・・・)から、すべての光を飲み込んでしまい、光を反射させるような気配を全く感じさせない、鎧のようなものができていた。


「なんと・・・!!!」


「お前も知っているはずだぜ?この、【気鎧(きがい)】の事は」






なんでだ・・・。この話で戦いは終わらせるはずだったのに・・・。orz


というわけで、次でちゃんと終わると思います。なのでお待ちください。



あ、でもこのタイミングだと、次の話での魔王の扱い雑になるかも・・・


魔王「?!!」

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