写真展 ~花鳥風月~
『蕾 ~梅~』
肌寒い風の中、枝の先でふっくらと。
廻ろうとする季節に、花は何より敏い様です。
柔らかなその姿は、空気に微かな熱のあることを教えてくれました。
もうじき、あの賑やかな春がくるのでしょう。
『春』
いつか見た桜木には、羽を休める鳥の姿がありました。
満開にはまだ早いようで、枝の間からは青空が見えます。
散らばって咲いた所々に、綻びかけた蕾の姿も。
一面に空を覆う頃には、宴の席でも開かれていたでしょうか。
『庭園にて』
まるで、時間が止まったみたいでした。
柔らかな陽光が集められ、この空間に留まっています。
鏤められた花々は、季節を忘れたように咲き誇っていました。
震える池の波紋ばかりが、ここに時のあることを伝えています。
『夏』
生い茂る草の中で、ぽつりぽつりと。
広がる緑に対比され、花は豊かな彩りを見せています。
山間の郷は避暑地と言うだけあり、道を行くには程良い陽気です。
隠れた太陽とはうらはらに、天を仰ぐ花は眩しい位に鮮やかでした。
『夕暮れ ~彼岸花~』
夕暮れに佇んでいたのは、萎れつつある彼岸花。
闇の広がりつつある景色の中、凛と姿が浮かび上がっていました。
夜の長くなっていく日々に、躊躇いもなく落ちて行く太陽。
一瞬ごとに、気持ちばかりが置いて行かれます。
『秋』
行く道の片隅には、小さな日溜まりがありました。
日射しに照らされて、花の白さが瑞々しく映えます。
次第に冷えて行く風が、木々を枯らそうとする頃のこと。
湖のほとりでは、しなやかに薄が揺れていました。
『花月』
花と月、最初に並べたのは誰でしょう。
この言葉にされた景色は、今まで幾つあったのでしょう。
暮れ泥む折、隠れて行く太陽に背中を向ければ。
仄かな紅へ色付く空に、今日もまた一つの花月が。
『冬』
僅かばかりの陽を頼りに、もう紅梅が咲いていました。
それは年明け早々のことで、月が変わればまた別の木にも。
すっかり綻んだ白梅は、数日前のあの蕾でした。
さて、次に開くのは――
『水影 ~桜木~』
咲き乱れた桜も束の間、気が付けば一片一片と。
花弁の降る水面には、葉桜の影が浮かんでいました。
穏やかな流れの中で、風景は曖昧に揺らいでいます。
幻のように、季節は移ろうとしていました。