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セシル・ケーシル

社交界デビューの為に招かれた王宮の舞踏会であの方を見た瞬間に思い出した。


ここは『私が主人公の二次元の世界』だと。


私の名前はセシル・ケーシル。

ケーシル伯爵家の次女。

誰もが憧れる金髪。

サファイアのような青い瞳。

健康的な肌。

女性の平均身長よりちょっと低い身長。

周囲からは小動物のようだと揶揄されている愛嬌を持っている。


なにより!この世界の主人公(ヒロイン)


タイトルは忘れたけど皆に愛し愛されるこの世界のヒロインがわ・た・し♪


メインヒーローはアルフレッド公爵家の次男でエルヴィン・アーバルト伯爵様。

近衛騎士に所属しているエリート様。

幼い頃からアルフレッド公爵領と隣接しているアルテナ侯爵家の娘にまとわりつかれて強引に婚姻を結ばされた可哀想(・・・)な方。

我儘な妻の行いに辟易し、夫婦仲は極寒のごとく冷え切っているが表舞台ではそんな様子を微塵も感じさせない方。


そんな時、私と出会い数々の困難を乗り越えて……


というのがあの方との物語。


他にも第二王子や王立研究員のエリートなど恋のお相手はいるけど、私はメインヒーローだった騎士が一番好きだった。

騎士のルートだけは他のキャラよりも多く見てきた。

だからきっと彼を幸せにしてあげられる!


そんな情報があっという間に脳内を駆け巡り、あの方がそばを通る時に思わずよろけたのを助けていただいたわ。

これはもう運命よ!

あの方と私は結ばれる運命なのよ!


舞踏会の帰りに馬車の中で両親にそのことを告げると両親は顔を真っ青にしていたが私は気づいていないかった。



翌日から私はあの方に近づくためにあの方がいるであろう場所に突撃した。

最初は冷たくあしらわれるのは知っているわ。

だって、最初から好感度が高いってことはあり得ないもの。

だから徐々に徐々に親密度を上げていけばいいのよ。

ふふ、だって私は知っているもの。

あの方が家のしがらみに雁字搦めになっているってことを。

私と親密になることによって家のしがらみから解放されるのよ。


だから、私がその元凶を消してあげるの。

でも、元凶を排除してもあの方が私に思いを寄せてくれないと意味がないのよね。

ふふ、毎日差し入れをして印象付けようかしら。




どうして?

あの方が大切にしている秘密の花園を見に行ったら不法侵入だって衛兵に捕縛されたわ。

そりゃ、誰にも知られていない秘密の通路を使ってこっそり入ったけど、あの方なら笑って許してくれるはずなのに……

後日、あの花園の半分近くが処分されたと噂で聞いたわ。

なんでも元凶が指示したって。

あの方の大切な花園になんてことをしたのよ!

あの花園には貴重なバラが植えてあったのに……


あの貴重なバラのブーケを差し出されながらあの方から求婚して頂くのが私の憧れなのに!!


しかも、あの元凶があの方の子を宿しているってどういうこと?

本来なら外の国に嫁がされるはずだったのにあの方以外は嫌だとわがままを通して婚姻を結んだから、あの方と元凶の仲は冷え切っているはずなのに……


ああ、そうか。

国が取りまとめた婚姻だから簡単には離婚できないのね。

ご実家の公爵家のために仕方なくなのね。

ふふ、跡取りがいればあの方が元凶に構う必要はなくなるわね。


うーん、でも正妻がいる限り私に日が当たることはないのよね。

それはそれで嫌だわ。

堂々とあの方の隣を歩きたいもの。

あ、そういえば物語の途中で元凶を亡き者にすることが出来るルートがあったわね。

たしか、第一王子妃とのお茶会の後で……


ふふ、元凶が亡くなった後は私がその後釜に収まるためにも周囲を味方につけなきゃね。

あの方に相応しいのは私だってことを……知らしめなきゃ!

手始めにあの元凶を憎く思っている令嬢方を味方につけましょうか。



どうして?

どうして皆あの元凶に味方するの?

学院に在籍していた時はあの元凶が憎いって言っていたじゃない。

なのに学院を卒業して社交界にデビューしてからは手のひらを返したようにあの元凶の味方をする。


私に有利な噂をわざと流しても数日で消えてしまう。

次から次へと流してもさほど広まることはなかった。



元凶はあの方そっくりの息子を生んだらしく、アルフレッド公爵家、アルテナ侯爵家が社交の場で嬉しそうに話していた。

元凶は産後の肥立ちが悪いらしく屋敷からあまり出られないという。

これはチャンスかもしれないわね。

私は以前偶然(・・)知り合った『裏』に生きる人達に元凶を屠るよう依頼した。

最初は拒まれたけど提示金額の倍の金を払うというと一番下っ端だという者が引き受けてくれた。

依頼書はすぐさま捨てたかったけど任務を遂行するまでは写しを所有するように言われたので仕方なく部屋の本棚に隠した。

決行は第一王子妃のお茶会の日だと知らせが来た。


私は特等席でその場を見るために王宮に赴いた。

あの方がその場にいたのは予定外だったけど。

いくら名だけの妻だといえ目の前で……なんてことがあったらあの方の心が傷ついてしまうわ。

でも今からあの方を連れて移動する時間もないし……傷ついた心は私が癒してあげればいいか。


『裏』から貰った計画書予定通りに元凶は階段から転げ落ちた。

あの方は必至に元凶の名を呼んでいたけど……どうしてかしら?

体面を気にして……?

元凶が物語通りの即死じゃなかったのは残念だけど、この世界の医療技術だったら助かる可能性は低いわね。

ふふ、これであの方は私の物……




「セシル・ケーシル。ローザ・アーバルト伯爵夫人暗殺未遂容疑で逮捕する」

あの元凶が目覚めたという話が流れてきた数日後。

私は友人が開いていたお茶会の場で騎士団に拘束された。

抵抗しようとしても力が強く振りほどくことが出来なかった。

友人たちの視線もどこか冷たかった。



事情聴取の間、黙秘を貫いていたら『裏』の者が証拠品としてあの時交わした依頼書と計画書を騎士団に提出したという。

『裏』に直接文句を言いたくても騎士団の牢に入れられているためにそれも叶わない。

その後、私の部屋に捜索が入り依頼書の写しと計画書が発見された。

両親はその依頼書の写しと計画書と(あの元凶への暴言を綴っていた)私の日記を証拠品として騎士団に提出し、私は裁判にて『(戒律が厳しいことで有名な)国立修道院にて生涯幽閉』という判決が下った。

異議申し立てをしたが聞き入れてくれなかった。


「本来ならば王家に連なる者を傷つけたそなたには『死』を持って罪を贖わなければならないが、アーバルト伯爵を始め、ローザ様のお身内の方達より『死よりも生を持って贖ってほしい』という要望があった。そなたはその恩を生涯忘れてはならない」

判決後、裁判官の長にそう言われたが納得できずにいた。


面談に来た両親になんで騎士団に証拠品を渡したのかと、両親が提出しなければ私はこんなことにならなかったと罵った。

「お前が私たちの話に耳を傾けず、現実を見ずに、妄想の世界にいるからだ」

冷たい視線と声が返ってきた。

初めて聞いた父の冷たい声と視線に次の言葉が出なかった。

「フロリーナはローザ様……アルテナ侯爵家の名誉を傷つけてしまったがアルテナ侯爵様の恩情で国外追放で済んだが、お前はエルヴィン殿が溺愛されている罪なきローザ様を亡き者にし、その後釜に座ろうとしていたことは日記や『裏』への依頼書で裏付けされている。私にあれらを秘密裏に処理することはできない。それをやってしまったら私はアルテナ侯爵様を裏切ることになる」

「でも、だってあの方に相応しいのは……」

「いい加減にしないか!お前達(・・・)のそのくだらない妄想癖のせいで我がケーシル伯爵家は王家、アルフレッド公爵家、アルテナ侯爵家……ひいては周辺国の王家からも睨まれてしまったんだぞ。周辺国でのローザ様の人気を知らないとは言わせない。あの方が築き上げた各国との絆をお前は自分の欲望の為だけに壊そうとしたんだぞ」

「……え?」

なに?どういうこと?

あの女の存在がなんで?

「ローザ様は多数の国から輿入れの要望が幼い頃からあったそうだ。しかし、エルヴィン殿が国王陛下に『どうしてもローザ様を娶りたい』と直訴して、陛下達が与える課題を期限内にクリアしたらローザ様を娶ることを許すという話が公式に残されている。これはどの貴族も知っていることだし、私もお前たちに言い聞かせていた。エルヴィン殿は次々と与えられる課題をローザ様への想いの為だけに乗り越えてこられた。また、ローザ様は諸外国との友好のために外の国に嫁ぐことになるからと芽吹いていたエルヴィン殿への想いを凍らせようとしていたという。エルヴィン殿とローザ様の関係は周辺国も知るところとなり、お二人の関係…互いを思いやる想いの強さに周辺国はローザ様との『婚姻』という形での交流ではなく『友人』として温かく見守り祝福してくださっていた。ローザ様はアーバルト伯爵夫人として今なお、外交に力を注いでくださって諸外国との懸け橋になってくださっている。……それをお前は……」

父の話は私は初めて聞く話だった。

私の知っている元凶……ローザは傲慢で自分の思い通りにならないと癇癪を起す問題児だった。

しかし、父の話からまったく違う人物のように見える。

「私たち周囲の人間が何度お前たちに『ローザ様はエルヴィン様の強い要望で輿入れされた』と言い聞かせたと思う?」

「…………」

「こうなってしまった以上、爵位と領地を王家に返上するだけでは収まりつかないだろう。お前たちを抑えることが出来なかった私たちの責任だ」

「……どうするの?」

「死を持って贖うしかないだろうな」

淡々と告げられた父の言葉に頭がついていかない。

「私と妻の死でどれだけ贖えるかわからないが……お前たちを育てた責任は取らなければならない。私たちの遺体はお前が幽閉される修道院の墓地に埋葬してもらえるようお願いしている」

「どうして!?私は生かされてお父様たちが死ななければならないの!?」

「どうしてだろうな。どうしてこんなことになってしまったんだろうな」

父との会話はそれが最後だった。



私が修道院に入り10日ほど過ぎた頃。

両親の死が知らされた。

両親は王の御前で、制止を振り切って毒を……

私は両親の遺体と対面する事は出来なかった。

両親が死の直前にそう願ったから。


私は失った。

愛する両親も……

愛する人も……

未来も……


私は何を間違えたのだろうか。

だって、この世界は私の為の世界のはずなのに……






神経をゴリゴリと削られました。

こういうキャラは読む分にはいいのですが、自分で書くとなると難しいです。

作者としてはこれが精一杯です。

バタリ (o_ _)o ~~~ †

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