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042 勘違いと異なる世界

前回のあらすじ

 Q 困っている少年を助ける方法を思いつきました

 A ペロ……既に推理されてますよ

 何がいけなかったのか。おそらく、時間がいけなかった。


「あの3馬鹿のせいで時間食ったから……」

「ま、まあ……気を落とさずに」


 逸る足取りで向かった、ルリーさんのアセリア薬剤店。しかし、そこには行列が出来ていた。なんでも、冒険者が帰ってくる時間は休業日以外は毎日ああなのだそうだ。

 俺達が客ではなく依頼を受けた人間だと分かると、並んでいた人達は先に入店することを許してくれた。だが、それでも店が忙しいことには違いなく、ルリーさんの他にお手伝いのおばちゃんも居たのだが、店はてんてこ舞いの有様。結局、残りのシロヨモギと依頼達成を証明する書類を交換しただけの簡素なやり取りで終わってしまった。

 敢えて良かった点を挙げるとすれば、ルリーさんと次の約束を取り付けたことだろうか。

 その約束とは、お茶会だ。今度俺がアセリア薬剤店に赴いた時、お茶菓子を用意してくれるとのことだった。

 そんな訳で現在、俺と少年は依頼達成証書を手に冒険者ギルドへ向かっている。


「君の名前、エイルっていうんだ……」


 ポツリとそんな声が聞こえてきた。

 今更ながら、お互いの自己紹介がまだだったのに気付く。成り行きで一緒に行動している感が否めないのだが、やはり呼び合う名前は大事だ。


「ええ、そんな名前しとります。そういえば、お互い自己紹介がまだだったな……俺の名前はエイル・ライン。君は?」

「僕の名前はセシル・ライト。そうか、エイル・ライン……エイル……随分と変わった名前をしているんだね」

「そうか? 別にそんなことはないと思うんだけど……」


 この世界の名前についてはよく分かっていないが、別におかしな名前ではないと思う。何度も何度もそう呼ばれているから、そう感じるだけなのだろうか。


「う~ん、変わってるかな? まあいいや。俺は君のことをセシルって呼ぶから、君も俺のことを好きに呼んでいいよ。袖刷りあったよりは縁がありそうだし」

「う……うん、分かったよエイル!」


 セシルは嬉しそうな声を出し、はにかんだ笑顔で頷いた。もしかすると、友達が居なかったのかもしれない。

 思えば、俺もこの肉体年齢と同年代の友人は居なかった。

 アマツチ全体がそうなのかは知らないが、少なくともミッドラルでは子供はある程度の年齢に達してから外出を認められる。セシルの外出が認められたのはつい最近なのだろう。俺もつい最近なので、やはり親近感を覚える。二人とも外出が許されてからすぐに3馬鹿という厄介事にも巻き込まれており、その感覚は尚更だ。

 しかし、実際に外に出てみて分かった。おそらく、俺が想像していた異常に外は危険なのだ。

 もし、俺がスキルや魔法を使えなかったら。

 もし、あの時セシルと俺が出会わなかったら。

 どちらにせよ、あの3馬鹿から酷い目に遭わされていただろう。下手をすれば、本当に殺されていたかもしれない。

 それ故に、大人達は子供の外出に気を配るのだ。悪意のある大人は勿論のこと、同じ子供が相手でも気を付けなければならない。魔法やスキルといった能力を子供が使えるという環境は、お世辞にも褒められたものではないのだろう。

 なんにせよ、こうして友人が出来たのは喜ばしい。俺とセシルの内面年齢差はさておき、二人一組で行動できるのならば、それだけで有事の際の選択肢が増える。例えば、俺が大怪我を負ったり迷子になっても、セシルが大人を呼びに行けばよい。勿論、その逆も然りだ。


「そういえば、エイルは何処に住んでるの?」

「ん? 俺は上級区の東側」

「へぇ……やっぱりお金持ちなんだ。さっきスキルと魔法を使ってたよね? 戦い方とかも知ってる感じがしたし、やっぱりそういう所に習いに行ったりとかしてる?」

「いんや、全く。戦い方とスキルは母上様から、魔法は親父の本と独学の部分が大きいかな。まあ、そんな感じで覚えた」

「凄い、魔法って本を読めば覚えられるんだ!?」


 ついペラペラ喋ってしまったが、果たして子供の知能で本から魔法を覚えるのは可能だろうか。少し考えてみて、やはり難しいことのように思えた。


「本やら独学やらで覚えるより、誰かに教えてもらった方がいいよ。絶対そっちの方が早いし、間違えないと思う。セシルはまだ魔法が使えなかったり?」

「……うん、魔法はよく分からないんだ。最近になって『ステップ』を使えるようになったから、それで外に出ていいって言われたんだけどね」


 どうやら、セシルの親は逃げ足を重視しているらしい。『ステップ』は自然と使えるようになることが多いと母上様が言っていたので、おそらくセシルもそのクチだろう。

 確かに、最後の手段である逃走だけでもできるならば、外に出ても問題はないように思える。今日の3馬鹿からはシロヨモギを守ったせいで逃げ遅れたのだろう。


「他のスキルは?」

「ズ、ズバズバ聞いてくるね。情けないんだけど、よく分からなくて……ごめん、僕は男なのに……」

「いや、それは気にしなくてもいいんでないかい? 男とか女とか関係ないと思うんだけど」

「関係あるよ! 男が守ってもらうとか、格好悪いじゃないか!」


 もし俺がルリーさんに守ってもらうとしたら……アリなようなナシなような、微妙な感じがする。できれば、二人で協力したい。「エイル、新しい顔よ!」とか言ってほしい……首無しとか、もう手遅れですね。しかし、その場合は俺の首がルリーさんの胸元にある訳で、それもそれでアリな気がする。

 いや、その時俺の意識はあるのだろうか。ギロチンで首を刎ねられても一定時間は意識があったという記録は存在しているので、ないことはないと思うのだが。いやいや、死ぬことを前提で考えているのが間違っている。それで終わりですやん。

 なんにせよ、今度抱きつく振りをして胸元に顔を埋めてみるなければならないだろう。


「ニヤニヤしないでくれよ……そんなにおかしいことを言ったつもりはないんだから」

「おっと、失敬失敬。ちゃうねん、ちょっと夢の世界へ旅立っとってん。ん~……まあ、俺は特に気にしないかな。あんまり硬く考える必要ないんじゃない?」

「そうかな……? でも、やっぱり守ってもらうのは嫌だ」

「お、言いますね~。やっぱりセシルも男の子ですな。なるほど、紳士になりたい訳だ」


 ここは紳士の先輩として助言をしてやるべきだろうか。

 おっぱいの大きい女性には愛を。

 そうではない女性には優しさを。

 リア充には爆発を。

 それが俺の紳士道ですし、このリア充予備軍も同じ紳士道に引きずり込んでやらねばなるまい。そんなことを考えていたのだが、セシルは首を振っている。


「違うよ、エイル。僕は騎士になりたいんだ」

「え……あれ? 紳士じゃないと?」

「うん、騎士も紳士だとは思うけどね。なんて言えばいいのかな……僕は紳士としての騎士じゃなくて、騎士としての紳士になりたいんだ」

「なん……だと!?」


 否定されてしまった。

 騎士としての紳士道とは、如何なるものなのか。少なくとも、俺の思う紳士像とは違うだろう。俺の思う紳士像とは、気高き男だ。自らの想いを法令を遵守した上で体現できる、真の男である。

 しかし、騎士となれば話が違ってきてしまう。それは男女平等の価値観に基づいた紳士な訳で、早くも二人の道は別たれたのだ。


「そうか……セシルは騎士になりたいのか。俺とは逆の道を行くんだな」

「……うん? ああ、エイルは冒険者として頑張りたいってことか。確かに君は強いけど、女の子が騎士になるのは難しいらしいから……」

「えっ?」

「えっ?」


 いかん、なにやら尻の辺りがムズムズしてきた。何か致命的な擦れ違いが起こっている気がする。

 本能が警鐘を鳴らす。冷や汗が出てきた。こいつは……この目の前の少年は、何故こうもプレッシャーを放っているのか。

 いや、彼自身は自然体である。ならば、俺が気圧されていると考えるべきだ。


「一つ確認をしよう。セシル、君は男で間違いないよな?」

「見たら分かるだろ? 僕は男だよ。まだまだ騎士には程遠いけど……」

「うん、男なのは分かった。なら、君は男が好き……とか言わないですよね? 絶対、言わないですよね?」

「なんで僕が男を好きにならないといけないんだ。君みたいな女の子ならともかく」

「よし分かった。お前は真っ先に『ステアー』と心を鍛えるべきですわ……。僕ちゃんは男の子ですからね?」


 なんてことなのだろう、コイツは下心満載で俺に付き纏っていたのである。肛門がムズムズしたのも当然だ、俺にそんな趣味は一欠けらも無いのだから。


「えっ? ……えっ? どう見たって女の子……」

「紳士ですがな。どう見たって紳士ですがな。僕ちゃんまだ6歳児なんですわ。せやから小柄なんですわ。……なんか今日、夏なのに寒くないですか?」


 尻の辺りから悪寒が駆け上ってくる。この致命的な間違いは、ただちに修正せねばならない。そうしなければ、俺の精神が崩壊してしまう。


「え……? う、嘘だ! ちょっと可愛いかもとか思ったとか、嘘だ! ああでも、だからエイルって名前で……うわぁあああ!?」

「やめろぉ! 男に可愛いとか言われても嬉しくないわい! なんならこの場でフルチンになっちゃるわ!」


 確かに、俺の顔は母上様譲りの女顔だ。しかし、それでも俺は紳士である。ちゃんと一本ぶら下がった漢なのである。


「やめてくれ! そんな言葉は聞きたくない! 違うんだ! 僕はちょっと勘違いをしただけで……ひぃぃいいい!!!」

「プリケツがっ! ご自慢のプリケツから血が出ちゃう!」


 発狂するセシルと、叫びながら尻を掻く俺。そこには、年齢不相応にも現実から目を背けようとするお子様が二人居た。

 この時、確かに俺とセシルは心に深い傷を負ったのだと思う。一生癒えない傷になるのでは、という嫌な思い出となった。




「依頼達成おめでとうございます。……随分とお疲れみたいだけど、大丈夫?」

「ええ、色々とありましてね……」

「もういいんだ……もう終わったんだから。きっと、明日には忘れてるんだ……そうに決まってる」


 セシルは全身を、俺は主に尻を掻き毟りながら辿り着いた冒険者ギルド。

 今日はミシェルさんが居ないらしく、代わりの人が対応してくれている。イリス・ブートと名乗ったその女性は、銀の髪と快活そうな見た目をしていた。なんでも、ミシェルさんとは同期で同郷なのだとか。

 彼女はミシェルさんとは違い、如何にもお姉さんといった口調で対応してくれている。そのおかげなのか、セシルも話し易そうにしていた。


「色々、ね……ミシェルから少しは聞いていたけど、そんなに大変な依頼だった?」

「あ~……えっとですね」

「駄目だエイル! さっきのはもう無かったことにしたいんだ! 僕にそんなつもりは無かったんだ!」

「言わないから……俺もあれは記憶から抹消したいから……。えっとですね、昨日ミシェルさんにお伝えしたんですけれど、スヴェンとラッドっていう兄弟と腰巾着のことは知ってますか?」

「こ、腰巾着って……うん、知ってるよ。エイル君から報告があったから、今朝ギルドに顔を出した時、注意されてたわね。あの3人がどうかしたの?」

「う~ん……」


 少し考えてみる。あの3人が暴力沙汰を起こしたのを報告するのは当然として、問題はその切っ掛けについてだ。

 あの場で俺が馬鹿兄をマッパにしたのは、元はといえばセシルを助けるのが目的だった訳で、そうなるとセシルが無許可でシロヨモギを採取していたことも話さねばならなくなる。

 いくらあの馬鹿共とはいえ、なんの理由もなしに冒険者でもないセシルを襲うとは……馬鹿の生態に詳しくないので分からないが、多分ないと思いたい。

 セシルのことを話さなければ、俺が先に因縁を付けたと思われるのではなかろうか。


「あの、僕がシロヨモギを勝手に取ってて……すみませんでした」


 俺がどうイリスさんに伝えようか迷っていると、セシルが勝手にゲロし始めた。俺が答えあぐねているのを心苦しく思ったのだろう。それでも黙っていればよかったのに、なんとも損な性格をしているものだ。


「あ、あ~……そのシロヨモギはどうしたの?」

「エイルが植え直した方がいいって教えてくれたので、そうしました。本当にすみませんでした!」


 営業マンも真っ青の素晴らしい直角姿勢である。将来は騎士になりたいと語るだけあって、セシルの態度はなかなか堂に入っていた。

 対するイリスさんは、それを見て一瞬表情を緩め、そして引き締める。


「分かりました。植え直したなら、問題も少ないでしょう。でも、次からは絶対にやっちゃ駄目ですからね。まあ、子供がやったことだし……ちょっと可愛いかったし……」

「すみません!」


 俺としては、イリスさんの最後の台詞が引っ掛かるのだが。

 再び頭を下げるセシルに、イリスさんは少し目尻を下げている。やはり、セシルは誰から見てもイケメンなのだろう。イリスさんの表情を見ていると、辛い現実が横たわっている気がした。


「……それでですね、セシルが持っていたシロヨモギをあの3人が奪おうとしていたんですよ。それで俺が助けに入って、マッパにしてやったんです。これってどうなんでしょ?」

「マッパ!? え、えっと……マッパって真っ裸? うわー、私も見たか……こほん、それは適切な対応ですね。エイル君、君には花丸をあげましょう」

「要りませんから……。この場合、あいつ等のギルドカードは剥奪になりますかね? 一応、こっちの首を狙って『風刃』使ってたんですけど」

「うわ、首狙われたんだ。大丈夫?」

「大丈夫ですよ、ちゃんと腕で『ガード』したんで。相手の魔法がへなちょこだったのもあって、全くの無傷です。彼の方がやられてますね……服とか泥だらけですし」


 そう言って、セシルを横に立たせる。

 王都に入る前に綺麗にしようとしたのだが、あまり上手くいかなかった。特にスネちゃまが蹴った脇腹の辺りには、今もクッキリとつま先の形に泥が付いている。


「あ、それでそんなに泥だらけだったんだ。可哀想に。こんなに可愛いセシル君に……絶対に許せない! 一般人の子供に対する暴力行為と、明らかな殺傷を目的とした魔法使用ですね。うん、間違いなく剥奪になります!」

「あの、男なのに可愛いって言われるのは……」

「言ってやるな。せっかく上手くいきそうなんだから」


 なんにせよ、これであの3馬鹿トリオはめでたく免許剥奪になりそうだ。それだけの悪行をやったのだから、当然の報いである。

 俺もあんなに容易く命を狙う奴の相手をするのは、もうこりごりだ。

 ホッと胸を撫で下ろすと、存外に重たい息が漏れた。


「それにしても、『風刃』を受けて無傷っていうのも凄いわ……ミシェルが自慢してくる訳だ。『エイル君は逸材なのよ! ふへへ!』って」

「へぇ……」

「いや、それは親父の七光りという部分もあるといいますか。イリスさん、あんまりミシェルさんの妄言を真に受けないで下さいよ」

「あはは、でもエイル君のことは職員の間でも噂になってるんだよ? 子供なのに凄い、って」

「ちょっと恥ずかしくなってきたんですが……」


 主に首筋が痒い。先程まではプリケツを掻き毟っていた手が、今度は首筋へと伸びていた。


「6歳で4大スキルに中級魔法まで使えるんだから、もっと自信を持たないと。今回もちゃんと初依頼を成功してしる、ミシェルもこれを知ったら上機嫌になるんでしょうね……キャベツ食べながら」

「さ、さいでっか……」


 キャベツまみれのミシェルさんが可哀想だ。

 それはともかくとして、期待してもらえるのは嬉しいのだが、それはプレッシャーにもなりかねない。程々が一番である。

 そんな心境の俺を知ってか知らずか、横で目をキラキラさせているのが約一名。騎士になりたいと公言している、セシル君である。


「やっぱり……エイルは凄いかったんだ。僕とは全然違う。僕も頑張らないと……」

「いやいや、正直そんなに変わらないから。セシルだっていつかは魔法もスキルも使えるようになるだろ。そうなったら違いなんてすぐに埋まるから」

「そうそう、別に焦んなくてもいいからね。それに……」


 俺の言葉の後を引き継ぎ、イリスさんがフォローを入れてくれる。俺とセシルの顔を交互に眺めつつ、更なるフォローを考えてくれているらしい。


「それにほら、君の方が男の子っぽいし」

「おいこら、俺の目を見てもう一度言ってみろ」

「エイル君ごめんね、君はちょっと将来が不安というか、お尻を守った方がいいというか……私としては色々と期待したいというか、ね?」

「そこはかとなく腐乱臭が漂ってきましたね……」


 最後に「ね?」とか付けられても、どう反応しろというのか。なにもかもが間違っていると思います。

 確かに、セシルの方がイケメンなのは否定できない事実だと思う。しかし、それで俺のプリケツの心配へと話を続けるとは、イリスさんは少々腐った感性をお持ちなのだろう。彼女こそが真の異世界人だったとは……。

 俺の柔肌に触れるのが許されているのは、ルリーさんと尻叩きの鬼である母上様だけ。それ以外の方はご遠慮願いたい。

 セシルは意味が分からなかったらしく、首を傾げている。彼にはそのままピュアな存在で居てほしい。


「エイル、そろそろ後ろが混んできた。もう行こう」

「む、ちょっと待たれよ。もうちょっとだけ続くんじゃよ。イリスさん、依頼料は俺の口座に?」

「あ、どっちに入れておく? お母さんが作ってくれた方と、君が作ったお方」

「俺の方でお願いします。っていうか、その辺の情報は共有されるんですね。ミシェルさんからですか?」

「同じ職場で同じ部屋に住んでるからね。でも、知らなくていいことって沢山あるんだよ? ミシェルの財布の中身とか、主食が白菜とキャベツだとか」


 確かに、それは要らない情報だ。涙の出るベジタリアンである。きっと、今頃は肉なしロールキャベツとか作っているのだろう。

 まあ、ミシェルさんとイリスさんがルームシェアしているというのはありがたい話だ。ミシェルさんには事後承諾になってしまうが、ちゃんと連絡が届くということでもあるのだから。


「あの、依頼は他の人と一緒に取り組んでも構わないんですよね?」

「ん? あ、パーティーを組みたいんだ? もちろん大丈夫だよ。えっと、セシル君も冒険者登録するの?」

「いえ、パーティーではなくて、一般人を雇うという形は可能かどうかが知りたいんです。近々クロスライムの討伐を引き受けようと思ってるんですけど、彼に黒粘土の運搬を手伝ってもらいたいなと思って」


 セシルにさせようと思っていたバイトとは、これのことだった。

 セシルの母親がどの程度の怪我なのかは実際に見てみないことには金銭に関して決められないのだが、もし怪我が俺で治せるようなら俺が治療して、セシルにはその治療費分を働いてもらう。

 もし俺では治せないレベルの怪我だったら、医者なり薬なりに頼る形とし、その場合は俺が先払いという形でセシルに給料を払ってはどうかと考えていた。

 俺の言葉からバイトの意味が分かったのか、セシルは掌の上に拳をポンと乗せている。まあ、流石に俺が治療するかもしれないという部分までは分かっていないと思うのだが。


「あ、そっちか。うんうん、可能だよ。ただ、マダライヌ討伐までかな、一般人を依頼に同行させるのは。ニジイロバッタとかだと、君がセシル君を守りながらになっちゃうから、かなり難しくなっちゃうし」

「了解です。それを聞けて安心しました。狙いは黒粘土なので、クロスライム以外は狙いませんから。ミシェルさんにも、次の依頼は同行者を連れて行くって伝えておいてくれると助かります。セシルもそれでいいかな?」

「うん。エイルの言いたかったことが分かったよ。足を引っ張らないように頑張る!」


 その他諸々、聞いておかねばならない部分も質問しておく。

 そうして、頼もしい相棒の返事を聞けたのもあり、ギルドでの目的は達成した。後はセシルの家に行って、セシルの母親の怪我の具合によって決めればいい。軽いものなら俺が、酷い怪我ならギルドに戻って貯金を下ろす。それで十分だろう。


「イリスさん、ありがとうございました。明日も顔を出すと思いますので、よろしくお願いします」

「はい、わかりました。明日もミシェルは休みだから、私に話し掛けてね。お疲れ様でしたー!」

「ありがとうございました!」


 最後にセシルが深々とお辞儀をして、俺達は次の目的地へと向かう。セシルの家は下級区の南側だと言っていたので、冒険者ギルドからは近いはずだ。

 子供二人という珍しい組み合わせのおかげで注目を浴びつつ、俺達はセシル宅へと向かうのだった。

感想欄にて完璧な回答が出ていたという……く、悔しい、ビクンビクン!

いいぞ、もっとやって下さい('д`*)

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