あたらしい仲間
「それでは、班の結成を祝って、乾杯!」
とラインハルト君の音頭で、みんな一斉に手元の飲み物を飲む。この世界では未成年がお酒を飲んでもいいので、僕以外はみんなお酒を飲んでいる。僕は果実のジュースをごくごく飲んでいます。こっちのほうが値段的には高いんだけどね。
「ほな、それぞれの得意分野を自己紹介していくとしますか。まずはわしから。剣を持った近接戦闘が得意で、攻撃に関してはソコソコや思うとる。魔法に関してからっきしなのは剣一筋のせいで、何も使えんちゅーわけやない。ただ、魔法の修練をしとらんちゅーだけや。ほな次、セシーいってみよか」
「あ、わたしなのね。んっうん。わたしは剣に魔法を纏わせる魔法剣の使い手です。二刀流で戦います。オークであれば二対一でも、充分戦えるレベルです。魔法剣の属性は2種類。炎と氷を唱える事ができます。当然ながら両方の系統の魔法も詠唱可能です。こんな所かな。じゃ、次はランバルト」
指名された時はちょっと動揺していた感じのセシリアさんだったけど、あとは淀み無く応える。セシリアさんって二つの系統を使いこなせるんだ。やっぱりそれは珍しいようで皆賞賛の眼差しをセシリアさんに向けていた。
「え、これ順番じゃなく指名制なのか。えーっと、俺の得意分野はこう見えて回復魔法や防御魔法などの聖職者系のものだ。ただ肉弾戦もこなせるので、別に前衛に出ないという訳ではない。鍛えてるので重装備も可能だ。じゃレイモンド」
真っ赤な髪だからバリバリの前衛職かと思ってたんだけど、クレリックなのね。回復の要という事は、指揮官向きな人なのかな?
「ほいさ。僕は剣も魔法も使いこなす魔法剣士だね。それぞれはハルトやセシーには追いつかないかもしれないけど、両方の組み合わせでは負けないと自負している。ちなみにオークなら、魔法使いタイプが混じっていても三匹まで平気だ。じゃエリー行こうか」
レイモンドは魔法剣士かぁ。勇者っぽい見た目だし、そういうの得意そうだよねぇ。
「はい、よろしくお願いします。私は氷系統の魔法使いです。一応三位です。ではコージ君」
え、説明はやい! とりあえず三位の氷の魔法使いって事だね。なかなか凄いのかも。
「えっと、剣も魔法も一応使えます。どれぐらいのレベルかは自分ではわかりません。回復魔法も使えます。あ、あとマジックアイテムを使いこなすのが得意です」
僕の自己紹介に不思議そうな顔をする面々。ちょっと変とは思うけど、正直に言いたかったんだ。あ、でもマジックアイテムを創れるってのは言わなくても良いよね?
「それはなんつーかでたらめやなぁ。ほんまに自分そんだけ色々できんの?」
「うん、できるけど僕の魔法って普通じゃないのもあるから、そこらへんは見逃して欲しいなぁ」
「唱える魔法の系統は何なの?」
「たぶん、全部いけると思うよ。どこまで唱えられるかは分かんないけどね」
僕の言葉にぽかーんとする皆。でも、唱えられるとは思うけど威力がそれに伴うかどうかは分かんないんだけどなぁ。あ、でも一応釘をさしておいた方が良いのかな?
「僕、ちょっと田舎者だから良く分かってないんだけど、そういった事って他の人には内緒のほうが良い?」
「うーん、話だけやと嘘くさいけど、それがほんまならあんまり言わん方がええなぁ。でも後は実力やな。古代遺跡でばっちり見せて貰う事にするで」
「・・・お、お手柔らかにね、ラインハルト君」
僕の自己紹介に考え込むようにしていたレイモンド君が、そこで声を上げた。
「それよりも、演習場を使わせて貰って皆の得意な技を披露するのはどう? それを見ればお互いどれぐらいの技量か、一目瞭然だし」
「そうだな、お互いどれぐらいやれるか実際に見る方が戦術も立て易い。俺も皆がどれぐらいまで耐えられるかを見極めさせて貰いたい。班のリーダーを決めるのはそれからでも遅くないしな」
「じゃあ、明日からそういう感じで放課後残るって事で良いわね? 難しい話はこれで終わりにしましょ。丁度料理が来始めたしどんどん食べましょ。どれもおいしそうよ」
「だな、じゃ頂くとするか」
とその言葉を合図にそれぞれ食事を始めた。
「う、おいしい。ここの料理ってレベル高いよねぇ」
「しゃべってると食いっぱぐれるぞ」
「そっちの肉の奴こっちにもくれる?」
「ほいほい」
「うむ、うまいなぁ。おまえらもう少し味わって食えよ、みっともない」
「・・・ん~・・・」
それぞれが料理を楽しんでるようで、ある者は勢いよく、またある者は丁寧に、またある者はブラックホールのようにと、料理を片付けていった。おいしい料理があると会話も弾むもので、ラインハルト君が年上のお姉さん好きだとか、レイモンド君の女性の苦労話とかセシリアさんの家の人の過保護っぷりなど、色々な話を聞く事ができた。
「ふぅ食った食った・・・おわっ、まだデザートもあるんか。気が利くねぇ。ところでコージよ」
「なに? ラインハルト君」
ごくごくとジュースを飲んでるとラインハルト君に声を掛けられた。
「それや! そのラインハルト君ってのやめてくれんか。かゆいわ。君付けは無しや!」
「あ、それ私も思った! もう仲間になったのにさん付けとか、止めて欲しいわね。勿論わたしも止めるわよ」
「遠慮しているのかもしれんが、これからはそういった遠慮は不要だ」
「「うんうん」」
そう言えば僕だけ皆を君付けやさん付けしてたなぁ。
「うん、分かった皆。じゃあこれからはそういうの無しで」
その後はデザートを食べて一服してから解散となった。
少し暗くなった道をゆっくりと家に向かって帰る。バスを使っても良いんだけど、今の時間は歩いて帰ると風が涼しくて気持ちが良い。明日から皆で訓練するから、色々準備しないと駄目だなぁ。「グッドラック」はリュートの中に消えていったから、あれに変わる武器が欲しい。システム的には「グッドラック」のものが最善なんだよねぇ。うん、決めた! いっその事「グッドラック」を創るとしましょう。
「ただいまぁ」
挨拶もそこそこに家に入り、すぐに部屋に戻る。さぁ武器の仕組みをさっそく考えよう。「グッドラック」は武器を出す瞬間にのみ、魔力が少量放出していた。普段はブレスレット自身からは魔力を感じなかったので、魔力を変換して武器を作っている訳じゃないのかもしれない。その時、ふと指輪に目に入った。そう言えば、僕の指輪って「グッドラック」のシステムに似ているかもしれない。イメージするだけで取り出せる所だけだけど。あれっ?色々な武器を先に指輪に入れておけば似たような事ができる・・・な。
想像だけど「グッドラック」は普段から装着している人間のイメージを読み取って武器を創造しておき、取り出す時に転移魔法で装着者の手元に出している。
さほど魔力が篭ってた物じゃないのに、あれだけの数の武器を保管してたから、普段から魔力を周囲から少しずつ取り込み、それを増幅すると同時に武器を作っていたと思われる。凄く効率よく魔力を変換する仕組みがあればこそできる芸当だ。あと「グッドラック」の凄い所は装着者のイメージから武器を作り出せる所だろう。でないとビームガンなんかできる訳がないしね。
なんか考えすぎて疲れたし「グッドラック」のような効率の良い変換を実現できそうにないので、今日の所は武器をいっぱい作って指輪にしまっておこう。