喜びのクラスメイト
古代遺跡。大陸の各所に点在する遺跡。共通するのは、機械仕掛けの敵が出てくる事とフレームが必ず安置されている事。それ以外の遺跡はただの遺跡であり、お宝が無いとは言えないけれど古代遺跡に比べるとやっぱり優先度が下がってしまう。
そしてロバスの地下に眠る遺跡はかなりの規模らしく、いまだに全容が掴めていない。遺跡を調査するための人員が不足している為だ。そしてその人員を輩出するために発足されたのが冒険者学園。冒険者と名を掲げてはいるものの、遺跡を調査するために生き残る技術に偏るのはその為だ。地上は魔石獣が闊歩し危険は危険なのだが、古代遺跡は古代の機械が徘徊しているのでかなり危険なものなのである。
これまでは遺跡の浅い層であっても、役に立つ道具が出てきていたので調査が楽だったのだが、最近は浅い層には魔物が住み着くようになり、調査をする際に手間がかかるようになってきたのである。
「そんな危ない事になってるんだ。前に潜った時は運がよかったんだねぇ、僕達」
あの時は、ささっと特に問題なく15層まで降りられたもんね。まぁそこで危ない奴が出てきたから、運が良いとは言えないかもだけど。
「コージ君は遺跡に潜った事があるの? 一人で?」
「ううん、一人じゃないよ。セリナ達と一緒に15層まで行った事あるんだ」
「へぇ~すごいのね」
「コージ、そんな所まで潜って大丈夫やったんか? 言っちゃ悪いけど、コージやったら5層ぐらいでも危ないんやないんか?」
「ぐさっ」
ラインハルト君が率直な意見を述べる。ううっ、確かに学園での成績を見る限り僕って普通の子供だもんね。
「それに比べてセリナちゃんやミミちゃんはすげーよな。俺達とそんな変わらんのにあれだけの技量を持っとるもんなぁ」
心底感心したように、セリナ達を見るラインハルト君。それにヒロコや白夜もおかしなぐらい強いんだよねぇ。まぁヒロコは全く戦わないけども。
「本気だせばコージは私たちよりよっぽど強いんです、ね、ミミ」
「うん。だってコージのほうがずっと強いもん」
「じゃな。わしをここまで従えられるのは主ぐらいのもんじゃ」
僕が弱いって言われるのが我慢できなかったのか、そう横槍を入れてくる。だけど、僕の成績を見る限りまったくもって信憑性が無いので、セシリアさんとラインハルト君はしょうがないなぁって顔をしている。
「そんな事言ったら、マスターが力づくで言う事聞かせてるみたいだよ、みんな?」
そんな微妙な空気の中なんか、ヒロコらしくないまともっぽい事を言う。やっぱり電波受信している・・・?
「ま、マスターの強さはボクたちが知ってればそれでいいのさっ、ね?」
と、セリナ、ミミ、白夜と順番に見つめていくヒロコ。
「ですね、わたしとした事が危うくライバルを増やす所でした。ヒロコの言う通りですね」
「そぉだね~、ミミ達がぁコージを守ればいいよねぇ~」
「うむ、わしらでガードすれば完璧じゃ」
いや、まぁコメントしづらいよ。でもお礼を言ってもおかしくない場面だよね。
「ありがとみんな。でも、無理はしないでよ?」
「それはこちらの台詞です、コージ」
「だよねぇ。結構危ない目にあってるのってコージだけだよねぇ」
「我といれば問題ないぞ」
「ふんふふんふふ~ん」
そんな僕達のやりとりを見て、ラインハルト君がにやりと笑った。
「まぁ、そんなもんは来週の遺跡実習ですぐに分かる。わしの実力も見てもらう、ええチャンスや」
「そうですね。わたくしも魔法と剣を組み合わせた戦闘術を見てもらいましょう。これでもそこそこ名が知れているのですよ?」
「へぇ~・・・二人とも自信満々だねぇ。いいなぁ・・・」
自分からすすんで鍛え上げた技ってやっぱり自信に繋がるんだろうなぁ。二人とも毎日すごい訓練をしているんだろう、今の二人の発言には何か重みを感じた。今僕が使える能力は、なんというか棚からぼたもち的な物なので、使いこなせてる自信がイマイチない。僕も何かを磨けばそう言える日がくるのだろうか。千里の道も一歩からっていうし、今日もヒロコとトレーニング頑張ろう。
次の授業は、今更な感があるが冒険者学園の成り立ちの講義だった。
今僕達が住んでいるのは西側ブロックなんだけど、冒険者学園は東西南北のブロック毎に校舎があり、一箇所にまとまっていない。なので同じ学年でもブロックが違う生徒達は交流があんまりない。と考えがちだが、古代遺跡で調査や警備をする事が多いので、そういった場所で何かと交流があるようだ。最初は南側のブロックから始まった学園だったらしいのだが、一度魔石獣の襲撃で破壊された事があり、その時に一時的に反対の北ブロックに仮校舎を建てたそうだ。北ブロックに校舎が建つと今度は北ブロックの人達の中から冒険者学園に通いたい人が訪れ、仮校舎が結局、本校舎となり修復が終わった南ブロックの校舎も結局そのままになった。そうすると今度は東西のブロックから、なんでこっちには校舎が無いんだ! とねじこまれ、結局すべてのブロックに校舎が建つ事になったそうだ。
町の中心にある塔「ティンラドール」のある所に校舎を建てられれば問題なかったんだろうけど、生憎あの場所は常に魔石獣がやってくる場所となっており、大人しく勉強できる場所でもない。魔石獣を観察するのは良い場所みたいだけどね。
で、この講義が何を言いたいかと言うと。
「で、四つのブロックに四つの校舎。人が三人集まれば派閥ができるというが、校舎が四つもできると争いが始まるのだよ。毎年、ブロック毎の生徒が遺跡から稼いだ、売り上げを発表して、一位になったブロックにはボーナスがでる。まぁ、ボーナスと言っても各校舎の経費や儲けを差し引いた分を校舎の生徒数で割った物だから、大金って程でもないがそれでも毎年一人頭三十ゴールドは分配されている」
その言葉を聞いて、色めきたつクラスメイト。三十ゴールドと言えば結構大金だ。浮かれない方がおかしい。
「それで来週から始まる遺跡調査の実習の為に班分けをして貰う。六人以上で班を組むように。あまった奴は適当に少ない所に放り込むから安心しろ」
それって安心できるのか? 僕達は五人だからあと一人誰か入ってくれたら良いだけだ。
「あ、そうそう言い忘れてた。転入生たちは固まらないようにな。全員必ずバラけてクラスメイトと仲良くなるように。いいな?」
うおー? それはなんていうか僕は余った奴確定じゃないか!? 講師のその言葉を聞いてクラスメイトの男子が早速セリナ達に熱い視線を投げかける。いや、女子もすごい熱い視線を注いでいた。じゃ、班をくめーと講師が言うと皆それぞれ動き出した。
「コージ君、よかったら一緒に組まない?」
持つべき者は、やさしい隣人。セシリアさんのその言葉に涙が出そうになった。
「おいおい、コージはわしと組まんとあかんでしょ? ここは男同士仲良くいこうや」
おぉお!? ラインハルト君まで誘ってくれる・・・男子にまで誘って貰えるなんて、なんだか新鮮だぁ~・・・と感極まってると、セリナ達から恨めしい視線が飛んできた。そして講師はすでにセリナ達の恨み光線で沈没していた。
「え、えっと二人とも組む相手はもう決まってるの?」
「あたしはエリーと組む予定よ。エリー以外は特に決まってるって訳じゃないわ」
「わいは、ランバルトと組む予定や。あとはレイモンドも来るはず」
レイモンドってあの王子様? いや本当は王子様かわかんないけど、そう呼んだ方がしっくりくる。
「というと・・・みんなで組めば丁度六人にならない?」
「わいに、バルトにレイにセシーにエリーにコージ・・・そやな、丁度六人や。それでええか?」
「そうね、悩む必要が無くなったわね。それでいきましょ」
良かった。僕、余った奴にならなくて良かった・・・
「ん? 本人に承諾は無しかハルト?」
「そうだね、せめて確認ぐらいはしようよ、ハルト」
ふと振り返ると、筋肉質のがっちりした赤毛の少年と、王子様ことレイモンド君が立っていた。たぶん、この赤毛の少年がランバルト君だろうな。そして、セシリアさんの後ろに大人しそうな女子がおずおずとやってきて、何事か話している。
「ん、こっちはオーケーよ。よろしくね」
「よろしくです。エリー=マグワイヤーです」
そして僕に向かって自己紹介をする大人しそうな女子ことエリーさん。
「えっと僕は、コージ=H=アースです。よろしくです」
「転入生の名前を忘れるほど耄碌してねぇよ。俺はランバルト=スミスロスだ、よろしく」
「同じく僕も忘れてないよ、コージ君。僕はレイモンド=ハンスベルです。よろしくな」
と、男子二人も自己紹介を済ます。正直クラスメイトの名前って全員覚えきれて無いのですっごく助かる。周りを見ると、他の皆もそれぞれ班を組んでるようだ。セリナ達も例外ではない。こうして、遺跡調査の班は無事に結成された。