お宿にほいさっさ
町の中心部まで来て、目立つ所に見つけた一軒の宿屋。こんな立地条件の良い所にある宿屋なんだから、それなりに期待できると思う。
「セリナ、この「ティルト亭」って宿屋は駄目かな?」
「はい、ここも良い宿屋ですよ。そこの角を曲がった先にも数軒あるんですが、そちらはこちらに比べ
て安いんですけど、値段どおりって感じなので」
と微苦笑を浮かべるセリナ。以前なにかあったのかな?
「じゃ、ここにしよっか。こんばんはー」
「はい、いらっしゃいませ」
長い赤毛をポニーテールにした、たれ目の優しい印象のお姉さんが出てきた。
「3人だけど、部屋空いてるかな? 2部屋欲しいんだけど」
「はい、大丈夫ですよ。お食事はどうされますか?」
「んー、とりあえず今日は晩御飯欲しいですけど、明日以降は今日食べてから決めるって事で良いですか?」
ここでとりあえず1週間ぐらいは泊まるつもりだから、ここの食事が口に合わなかったら外で食べようかなーとか考える僕。
「はい、大丈夫ですよ~。お客様は何日お泊りの予定ですか?」
柔らかい口調でそう尋ねてくるお姉さん。
「とりあえず、1週間お願いできますか?」
「それでしたら、今日の分として1ゴールドと55シルバー頂きます。明日以降も晩御飯を取ってくださるなら9ゴールドで、晩御飯無しの場合ですと7ゴールドと20シルバーの追加になります」
おおう。所持金が半分以上一気になくなるな。でも、必要経費だと思わなくっちゃね。
「じゃ、とりあえず今日の分を払いますね」
「はい、ありがとうございます。お部屋まで案内しますね。晩御飯はいつにされます?」
「えっと7時ぐらいで大丈夫かな? それで良い? 二人とも」
「はい、大丈夫ですよ」
「うん、それでいいよー」
「かしこまりました、お時間になりましたら食堂までいらっしゃってください。お部屋はこちらになります。ごゆっくり」
2階の部屋まで案内してくれたお姉さんはそういって、階下へ降りていった。
さて、今回持ってきた素材はタタ村に居た間に狩った中の、2割ほどの量だったので1日もあれば同じ量を狩る事ができるはずだ。
それにこの町の周辺にはタタ村には居なかった高級素材を落とす獲物が居るはずなので、もっと効率が上がるはず。まずは何が高価な物かを調べてそれを重点的に狩る方向にしようとおもう。
セリナが持っていたモンスター図鑑を見ると、キラースネークや、ホーババード、レッドベアなどの害獣とされるモンスターが良さそうだ。
図鑑を見つつ、明日からの行動を考えているとあっという間に晩御飯の時間になった。
なので、ヒロコとセリナを誘って食堂へと向かった。
食堂に入ると、すでに先客が何名かいて晩御飯をおいしそうに食べていた。その中に、僕らと同じぐらいに見える少年が1人だけで食べている姿がやけに目に付いた。だけど、食事がすぐに出てきたので、それ以上気に掛けることもなかった。
「それで明日からなんだけど、早速森に出て狩りをしようと思うんだけど、どう思う?」
と、ソースの掛かったこんがりと焼き上がった、よく分からないけどおいしいお肉を食べながら、そう切り出した。
「そうですね。装備は今のところ充分ですしね。お金を稼いでからロバスを目指しましょうか」
「ボクは町を見て回りたいなぁ~、マスターと」
いきなりまっぷたつか! てかヒロコは僕の意見に賛成してくれるもんじゃないの普通?
「いやいやヒロコさん? お金が無いと町を見て回っても何も買えないでございますよ?」
「よし、じゃあ狩りに行ってから遊ぼう!」
ナニコノワガママナコ。
「はぁ・・・まぁ、息抜きもいるけどね。セリナもそれでいい?」
「ええ、今晩わたしと添い寝してくださったら、それでよろしいですよ」
にこっと笑顔を振りまきながら、またそんな事を言う。それはもう昨日の晩で懲りたよ!
「それは駄目! マスターはボクと一緒なんだよ?」
さも決定事項のように、胸を張って威張らないでねヒロコ。
「あぁもう! 僕は1人で寝るの! 男と女は別々の部屋で寝る! 良いね!」
「はーい」「はい・・・」
添い寝するって言ったのに、良いって言ってくれたのに・・・とぶつぶつ言ってるセリナ。
そんな事僕言ってないよね?
「じゃ、明日は朝早くから出るから今日は早く寝よう」
とは言っても、明日の狩りのために色々と小細工を用意するんだけどね、僕は。
僕の小細工がどこまで通用するのか、どれぐらい実用的なのかを試すには丁度いいと思うんだよね。とにかく目立ちたくないんで、僕自身が強いって訳じゃなくて、僕が持ってるアイテムが凄いと人に思わせるように今からあれこれ作っておきたい。
あ、晩御飯はとてもおいしかったので、泊まってる間は食事を頼むことにしました。