再会
タイムリミットは刻一刻と迫ってきていた。操作変更のタイミングは僕でも分からない。完全にランダムなのだ。相も変わらず気をつけみたいな姿勢で、攻撃をしてくる「777」いまの状態だからなんとか凌げているが、操作変更された途端に撃墜されるのは間違いないだろう。
脱出しようにもエディさんを残していけない。エディさんの意識があったならきっと置いていけって言うんだろうけど、きっとそんな事できない。何かいい方法が無いか考えるが、こんなときに限って何も思い浮かばない。正直、コックピットが吹きさらしの状態で冷静に考えろとか無理。必死になって「777」の動きを見て防ぐので精一杯だ。
そうやって必死に「777」の攻撃を回避しようとしている時、それがやってきた。意図せずにがくんと、機体が左に傾いたのだ。
操作変更の時間が来てしまった!
そして、左に傾いた機体に合わせる様に「777」の手刀がコックピットへと向かってくる。向こうも操作変更があったはずだが、たまたま僕を攻撃するような操作の配置になったんだろう。ゆっくりとこちらへ向かって手刀が近づいてくるのが分かる。
ガッ!
手刀は僕の機体に命中した。幸いにも僕への直撃は避けられたんだけど、手刀は僕のすぐ脇を通過しシートを吹き飛ばしさらに奥へといったようだ?
手刀が突き刺さった衝撃で吹き飛ばされた僕には、もう良くわからなかった。
風景が流れる。なにか部品が僕と一緒に舞い上がっている。こんな高さから落ちたらきっと死んでしまう。あぁ、空を飛べば良いから死にはしないか。魔法を詠唱する。いや、詠唱できない。吹き飛ばされたショックで声がうまく出ない、さらには魔力も回らない。できるのは考える事だけ。普通こういうタイミングだと力に目覚めたりするのになぁ。・・・だめだ、考えもうまくまとまらない。これもふきとばされたせいか・・・ ぼくはここでおわるのか・・・?
“我を呼べっ!!!主よ!”
ずきんと頭に突き刺さるように声が響く。だれ?
“早くせぬか、我を、我を呼べ!主よ!”
なんでそんなに慌ててるのかな? もうすこし落ち着きなよ。
「ホワイトファング」
僕はそう呟いて、白い光に包まれた。
辺りを白い光が照らし出し、光が収まったかと思ったら僕はコックピットにいた。あれっ?さっき、ぽーんと放り出されたよね、僕。
「まだ正気を取り戻しとらんかえ、主よ」
久しぶりに聞くその声。
「なんで僕、ホワイトファングに乗ってるわけ?」
ピンチになるまで呼ぶなって言ってたし、どっかに隠れてるって言ってたよね?
「主は本当に融通が効かなくて困る。ピンチになっても呼んでくれりゃせんのだからの」
おかげで危うく主を失うとこじゃったわい、と少しすねた口調で僕を責めるホワイトファング。
「え、だって、そのっ」
「とりあえず、話はあとじゃ。3桁が向かってくるぞぃ」
「あ、そうだ。あいつ厄介なんだよ、どうしよう?」
「そんな気弱な事でどうする、主よ」
急に現れたホワイトファングを敵と認定した「777」は操作に慣れてきたのか、先程よりトリッキーな動きで攻撃してくる。スピードに乗った攻撃は一瞬たりとも止まらない。
だけど、ホワイトファングは手にバリアを発生させながら、相手の攻撃を軽々といなしていく。って僕が操作してるんだけどバリアなんて出せるって知らなかったぞ?!
「これが都合良さそうなんで、出しといたぞ主」
「そんなのあるなら教えてくれよ、ホワイトファング」
「いやじゃ。良い女には秘密があるもんじゃ」
「フレームに性別もクソもないでしょ?!」
「そんなこと言うと、ご奉仕してやらんぞ?」
ご奉仕ってなにさ。でっかい機体を活かしておっきな家でも建ててくれるの?
「奉仕はいいから、あれ倒すの手伝ってよ!」
とりあえず家は要らない。そして、「777」の攻撃はいまだに止まらない。
「ふん、無粋な奴じゃ。主、ケージを出すぞ」
「任せた! って駄目だ、それって相手をぶっこわす奴だと出しちゃ駄目だよ?」
ホワイトファングが居てくれるおかげで、落ち着いてきた。戦闘中なのにこんな掛け合いができる程に。今まで全く勝てる気がしなかったけど、今は逆にどうやっても負ける気がしない。
「たぶん、大丈夫じゃ。安心せい、手加減してやるからの」
「オーケー! じゃあ行こう!」
「うむ」
そう言うとケージの使い方が頭に流れ込んでくる。その名のとおり、閉じ込めるための檻のようだった。本当はそこから色々派生した攻撃を加えるようだけど、今回はとりあえず閉じ込めるだけで良い。
ポッと「777」に貼り付く白い光。それと同時に「777」の機体の上下左右に白い壁が現れる。危険を察知し、動き回るがそんな「777」をあざ笑うかのように白い壁は一定の距離を保ったまま追随している。そしてじわじわと間合いを詰めて行き、白い箱が完成した。「777」は脱出しようとしているが、その攻撃のことごとくが壁によって弾かれている。
「本来はここから、ケージを圧縮してやるか、派手にまっぷたつにするんじゃがの。してみぬか?」
「物騒な事言わないでよ?! とりあえず動けなくするだけで問題ないんだってば」
「つれない主じゃのぉ・・・」
心底つまらなさそうに言うホワイトファング。破壊衝動は相変わらずのようだ。あれだけ苦戦した「777」をあっさり取り押さえてしまったホワイトファング。シリアルナンバー的にはこちらが5桁で向こうが3桁と強さに非常に差があるはずなのだが、まったく意に介さなかった。あまりの呆気無さにいまいち思考が追いつかなかった光司だが、とりあえず「777」の封じ込めに成功したおかげで、余裕ができた。あとは他の門に対して援護射撃ができないかと考えた。
「ホワイトファング。そこに転がってるフレームの背中についてる飛行ユニットって分かる?」
「ふむ、それがどうした」
「いまこのグレイトエースの中にこの飛行ユニットを装備しているフレームが居るんだけど、分かるかな?」
「しばしまたれよ。町の中全てとはいかんが、多少は分かるぞ」
その言葉に光司は眼を光らせた。
「ということは、飛行ユニットを付けてるフレームを特定できるって事だね。ちょっと待ってね・・・これでよしと。衛星とリンクできるようにしたから、これでかなりの範囲を探査できるようになったと思うんだけど、どう?」
「衛星・・・ほぉほぉ。空の上から覗けるのだな。便利なもんじゃの、これなら簡単に識別できるの」
ホワイトファングは衛星の性能に満足してるようで、嬉しそうにいろいろ試しているようだった。
「で、その飛行ユニットを付けていないフレームに攻撃をしたいんだ。全部に」
「ほほほ。それは剛毅な事じゃな、わらわにうってつけじゃ!」
ホワイトファングの喜びようは、全部とか、一面とか、無差別とかそういった言葉が大好物そうだった。
「ここから、全部狙える?」
「朝飯前じゃ。いけるぞ」
「じゃあ反転弾をお願いします!」
「任された!」
バババババババッバババッバババババババッバ!
ミサイルポッドから、次々に町の中に向けて反転弾が発射されていく。よしっ! これで他の人達もかなり楽になるはずだ!
ホワイトファング帰ってきた。
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