リミット10分
グレイトエース王宮、ファウンデルス卿が居ると思われる執務室に一番近いバルコニーに次々と横付けするフレーム。その手にはコンテナがあり、続々と兵士が王宮へと侵入を果たしていた。その中にはセリナとミミの姿もあった。
四機、五機と続々とフレームが横付けされ、その度に兵士が侵入していく。そして、全てのコンテナから兵士を送り出すと、付近を旋回し警戒行動に移った。ただ一機、勇司の操るフレームはバルコニーに取り付いたまま、放置されていた。
「デニー小隊はこの先の通路で待機。レニー小隊は反対側を頼む。この通路を死守してくれ。いざとなればバルコニーまで戻ってフレームの援護を受けてくれ。だが、10分は最低でも敵を足止めしてくれ。わかったな?」
「「了解です、陛下」」
デニーとレニーは双子の姉妹で共感覚を持ち、こういったコンビネーションが必要な際の任務には、必ずと言って良いほど任される二人なのだ。
「よし行くぞ! 付いて来い!」
「「はいっ」」
気合を入れて勇司は兵を引き連れて、執務室を目指して駆け出した。
南門を警戒している僕たちは、時折向かってくる魔術師たちを麻痺レベルの電撃と睡眠ガスで迎撃し、迂闊に近寄れないように抑え込んでいた。さすがはグレイトエースで、生身でフレームに向かってくる魔術師の数が半端ない。ヒューイックの町で経験していなければ、きっとてこずっていたであろう。いつ向こうの援軍のフレームが来るか分からない今はフレームを降りて戦うわけには行かないからだ。
「エディさん、どうですか。これだと無闇に傷つけないでしょ?」
「そだな。一応これの効果は見たんだが実際に使うと、非常に便利だな」
あとは反転フィールドを設置しておき、そこへ誘い込むように誘導すれば勝手にあらぬ方向へ向くのでそこへ攻撃をすれば不意打ちを狙えるので、麻痺や眠りに対して抵抗される事が少なくなる。便利な道具は使わないと勿体無いよね。せっかく作ったんだし。
僕達は南門を守備しているんだけど、ここから確認する限り他の門に比べここはフレームの数が少ないからか、かなり戦闘が頻繁に行われている。ある意味それは狙い通りなので僕の作戦案に間違いは無いと確信できる出来事だった。そして、埒があかないとなると次は強引にこじあけにくるはず。
「!」
悪寒が走り、反射的に前転し今の位置から全力で回避する。
ゴガッ!
「スリーセブン! きやがったか!」
エディさんも、すでに臨戦態勢をとっており今しがた突撃してきた機体を牽制するように、低い体勢で威嚇している。突撃して来た機体は全身が光沢を放つ青く輝く素材で作られており、ブルーパールとでも言うような青くきらきらと綺麗な輝きを見せ、そこに居た。
馬鹿みたいに目立つその機体は、武器は持っておらず拳の部分にナックルガードがついているだけだ。つと静かな動きでこちらへと突撃してくる「777」。その速さは模擬戦の時の父ちゃんの動きを超えていた。だが、こちらも今回は機動性を重視した軽量二脚機体の上、ブースターを多数追加しているのでなんなく反応し、突撃を回避する事ができた。
「やってやる!」
至近距離でもおかまいなしに、反転弾を撃ち込む。
初めて見る武器に危機感を感じたのか、大きく空を駆け上がり反転弾の全てをかわしていく「777」おかしな話だが、僕はそれを当然だと思っていた。この程度で傷がつくはずがないと。
「エディさん、いきますよ!」
「オーケー! 派手にぶちかませ!」
ミサイルポッドに音波弾をセット。指向性を持たせられるそれを「777」へ放つ!
先程と同じように回避しようとする「777」だが、音波弾は有線付きなので軌道変更をこちらでできる! 弾頭の前方に向かって強烈な音波を放つそれを「777」に解き放つ!
ゴッ!
下方から上方へと向け解き放たれた音波は「777」の機体をわずかながら浮かせるほどの威力を見せた。そこへエディさんがマジックアローを連射しながら、突撃をする。
一瞬の躊躇をみせたものの、エディさんが組し易しと見たのかそちらへ突撃する事で、回避と共に距離を取り体勢を立て直そうとする。
だが、そこは僕が見逃さない。
VMAXを発動させ急上昇し、頭を抑えて空中コンボを発動させる。とにかく冷静になる隙を一瞬たりとも与える訳には行かない。連撃を続けていくがすればするほど、簡単にかわすようになり、しまいにはカウンターを入れられてしまう。そこへ入れ替わるようにエディさんが斬りかかる。少しかすったようにも見えたけど、まだまだ余裕で回避できる攻撃だったようだ。さすがに向こうのパイロットは四足型との戦闘も経験があるのか、爪や尻尾に肩に取り付けられたマジックアローもなんなく回避してしまう。
駄目だ、エディさんは空中機動の経験が浅いせいか地上ほどの動きの切れがない。ここは音波弾の出番か。
バシュッ!
「777」に向かって音波弾が飛んでいく。それに気付いた「777」はミサイルに瞬時に近づき真横からミサイルをぶっ叩いた!
ゴォオオオオォオオン!
何を考えてそんな所を叩いたのか知らないが、そんな事をすれば全方位に音波が響くだけで至近距離にいた「777」が一番ダメージを被る。こちらにとってはオウンゴールで儲けた気分だ。エディさんもそう思ったんだろう、すかさず「777」に回転しながら突撃する。剣を咥えながらマジックアローを連射し、さらにはシッポまで突き出して突撃するという避けそこなうとえらい目に遭う攻撃だ。
だが「777」は、マジックアローを最低限の動きで全て回避し、後ろ回し蹴りの要領で鼻面を蹴りつけた。だけど、蹴りつけられたかに見えたエディさんは後ろ足をひねって、横回転から縦回転に切り替えシッポで斬りかかる技を見せてくれた!さすがにその攻撃は想定外だったようで、シッポは見事に胴体に叩きつけられ吹っ飛んでいく「777」それがこの攻防で初めてのクリーンヒットだった。
「この調子でどんどん行きましょうエディさん!」
「コージちゃんも強い敵が好きだねぇ? 生き生きとしてきたよ?」
「エディさん程じゃないですよ! 行きます!」
「おう!」
そして、「777」と僕達の攻防が再開された。